PiPi's World 投稿小説

駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

の最初へ
 150
 152
の最後へ

駆ける馬 152

今回はガーベラに助けられた・・・
澪はそんな気持ちが強かった。
3コーナーから焦る澪に対し、ガーベラはずっと自分のペースで走り、そしてきっちり前を捉えて差し切った。
我が儘な馬だが、ポテンシャルも高く、何よりレースを知っている。
それを充分に出し切っての勝利だったのだ。

「やられたな」

的屋がクールダウンしながらそう言い放つ。
カウンテスアップはやるだけやって2着。
これでやられたのは仕方ないと自分でも言えた。

「まあ、次はやりかえすさ」

安堂もその隣で悔しさを滲ませなからもグレートローマンに語りかける。
次の戦いは中央で行われるチャンピオンズカップ。
中京競馬場で行われるこのレースは、ほぼホームに近い。
そこでやり返すと思い誓う。

一方、澪はクールダウンを済ませて戻る。

「ありがとね、ガーベラ様」

そう首筋を撫でると、ガーベラは首を大きく振って嘶く。
世話かけさせるなと言いたげな不機嫌な様子に澪も苦笑してしまう。

あの2人には次も同じ手が通用するとは思えない。
ただし今度の舞台は中央だからこちらが幾分有利になる、と信じたい。
今度はガーベラに失望されるような無様な騎乗はしないと心に誓う澪なのであった。


秋の天皇賞をもって現役を引退したスターライトブルーは北海道に戻ってきた。
仔馬時代から知る真奈や敦子にとっては、非常に感慨深いものがあった。

繋養先である社来ファームにエリックとヘンリーと共に向かったのだ。

社来ファームは国内屈指の種牡馬繋養牧場でもあり、ノーザンテーストやディクタス、リアルシャダイと言ったトップクラスの種牡馬を繋養している。
その中にスターライトブルーが入ったのだから凄い事と言えた。
特に前年にパーソロンが死んでいる事もあり、後継種牡馬の人気が上がるのは間違い無い。
特にパーソロンの最高傑作であるシンボリルドルフが門別に繋養される事から、血統構成的に近いスターライトブルーを社来ファームが獲得した訳だ。

「面影は残っているけど・・・逞しくなったよねぇ」
「天皇賞どころか、海外まで行って勝ってるものねぇ」

移動したばかりの馬房でリラックスしているスターライトブルーを見ながら真奈も敦子も懐かしそうに見ていた。
現役引退したばかりだから、まだ現役のような精悍さがあった。

「良い馬だな・・・種付けも考えたいな」
「血統的にも良さそうだな」

エリックもヘンリーもそんな感想を漏らす。

「涼風ファームの繁殖に種付けしたいのでしたら、ぜひ申し出ください。最優先で回しますから」
「それは、恐れ多いな」

エリックとヘンリーの会話に割って入ったのは吉野だ。

「そちらでOKが出るのであれば、私からぜひお願いしたいこともあって」
「というと?」
「シャダイソフィアが来年の春に種付けできるのであれば、スターライトブルーを付けてみてほしいと」

その言葉は二つの事を意味する・・・
少し厳しい顔をするエリックと、そんなエリックと吉野を見ながら顔を引き締めるヘンリー。

「約束はできませんが、涼風ファームで体制は整えましょう」
「ありがとうございます・・・それでは良しなに」

互いに頭を下げ合う吉野とエリック。
それを見る真奈と敦子は小声でヘンリーに聞く。

「それってもしかして・・・」
「ああ・・・シャダイソフィアを繁殖牝馬としてウチで繋養すると言う事だ」

真奈と敦子は顔を見合わす。
もうすっかり牧場の馬として定着したシャダイソフィアに2人も愛着がある。
それは嬉しい事だが、シャダイソフィアは日本で有数の良血馬なのだ。
プレッシャーも大きい。
そして、吉野の決断にも驚くのだった。

故に帰り道でエリックに真奈が尋ねる。

「ソフィアは繁殖させて大丈夫なの?」
「現状・・・分からないと言うのが正解だ」

エリックの答えは慎重だった。
生き延びる事に生命力を振り絞ったシャダイソフィア・・・
まだ全快とは言えない状況ではある。

SNSでこの小説を紹介

スポーツの他のリレー小説

こちらから小説を探す