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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 151

ただし澪も並の若手ではない。
いったん引いて前に出た2頭の様子を伺う。
同年代の地方の若手だったらどうなっていたのかと考えるところだが、この駆け引きがあってこその勝負なのだ。

引いたら負けかもしれないが引かないと大事故になりかねない。それを乗り越えて行かないとトップの道はないと思い知らされる。

澪が引いてバックストレッチに入る。
それを待っていたかのようにグレートローマンとカウンテスアップが加速する。

「やられたっ!」

澪が顔をしかめ、減速してしまったガーベラは置いていかれる。
前のトウケイフリートとアイランドハンターに並びかける2頭。
打ち合わせた訳では無いが、名手同士。
お互い何がやりたいか瞬時に理解して動いたのだ。
つまりこれは・・・
中央育ちの澪が引くと読んで仕掛けたのだった。

「お行儀の良いお嬢さんはいいね!」
「全くっ、その通りだ!」

安堂と的屋が笑いながらそう言い合う。
2頭を交わして逃げるハナキオーに迫っていく。

実は2000mと言う距離を考えた時、カウンテスアップにとっての最大の敵はグレートローマンだった。
本来2頭にとって最大の敵な筈のリキサンパワーはやや力を落としており、登り調子だったライフタテヤマは芝に挑戦して不在。
古豪ロッキータイガーは引退し、若き南関東三冠馬ハナキオーはまだ彼らの敵では無い。
前回こそ地元トウケイフリートの巧さにやられはしたが、このレースこそ大井と東海の帝王同士の一騎打ちなのである。

帝王2頭が先頭に迫って並びかけて2周目の3コーナー。
ガーベラはそこからやや離されての5番手追走。
地方の名手の駆け引きに完全にやられて焦る澪。

「ごめんなさいガーベラ様っ!」

なんて心の中で叫びながら前を追いかける。
こうなるといつもならカッカしたりヒートアップしだすガーベラだが、今日はそんな気配がない。

5番手のままコーナーを回っていくガーベラ。
焦る澪と違い、何時も以上に落ち着き払うガーベラだが、うしろからリキサンパワーやウイニングスマイルが迫ってきていた。

そんな先頭争いは、ハナキオーがカウンテスアップとグレートローマンに追いつかれた所で仕掛けて先頭。
直線に入る。

短い直線、決してハナキオーも弱い馬では無い。
だがレース巧者のカウンテスアップとグレートローマンはそれすら読んでいたかのように掴まえて抜き去る。
大井の帝王と東海の帝王の一騎打ちか・・・
誰しもがそう思う中、内側から追い上げてくる馬がいた。
フルダブルガーベラだ。
2頭の帝王の争いを待ったとばかりに、中央の女帝が内側の狭い所を抜けて追い上げてきた。
残り100mで2頭の後ろに迫ってきたのだ。

カウンテスアップとグレートローマンは後ろも振り向かず必死に追い合っている。
互いの争いが激しすぎて後ろを振り返る余裕なんて無いのは折り込み済みだ。
更に言えば、もうブロックする余裕も無い。
澪はガーベラを躊躇せず2頭の内側に捩じ込ませていった。

地方の雄のデッドヒートに迫る影。
それがスタンドから見えない位置から前に突き出た。

「嘘やろ!?」

安堂も気が付いた時には遅かった。
スタンドの歓声が悲鳴に変わる。
ガーベラはゴール前で帝王2頭に競り勝ったのだ。

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