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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 150

澪がそんな風に頼む中、レースが始まる。
ゲートが開いて先手を取ったのがハナキオー。
これは外枠だったのもあるが、浦和だからこそ先手を取りたいと言う意志なのだろう。

そこに続くのはアイランドハンターとトウケイフリート。
ガーベラはカウンテスアップとグレートローマンに挟まれてその後ろの展開。
想定はしていたが、想定通りの厳しい展開で最初の3コーナーに向かう。

相次ぐ落馬事故によりスパイラルコーナー化された3コーナー。
1600mのレースがこのコーナーポケットからのスタートだった時期もあるが、余りの危険性に1600mでのレース開催を止めるようになったぐらいである。
スパイラルコーナー化してもその名残りは残っており、地方競馬でも屈指の難コーナーとなっていた。

ただ幸いにも外側に地方巧者のカウンテスアップが居るお陰で、ガーベラはスムーズに周る事が出来ていた。
別にその為に隣に位置した訳では無いが、他の騎手のやり方を『盗む』のは澪の得意とする所なのだ。

カウンテスアップの鞍上、大井の「帝王」こと的屋文成。
ここ数年で大井のリーディングを獲得し地方有数のトップジョッキーとなった。
その持ち味は果敢な先行力と腕っぷしの強さである。
澪を敵対視する地方騎手が多い中で彼は飄々とした性格で周囲に流されず澪を「いいモノを持ってる子だ」と高評価していた。

そんな彼をマークすることが勝利への一番の近道だと澪は考えていた。

的屋だけでなくカウンテスアップも凄い馬だ。
中央では地方を格下と見る向きが強いし、実際に質や量も大きな差がある。
だが、ダートの舞台に関してはそうとは言い切れない。
地方はダートに特化し、人馬共にダートを突き詰めているのだ。
中央では芝より格落ちとされているダート戦に素質馬は余りおらず、騎手や調教師もダートには精通していない。
澪は幾度かの地方遠征で、その部分に触れて思う所も多かったのだ。

勿論、中央では考えられないぐらい荒っぽいのだが、勝利の執念に関しては中央の騎手でここまで露わな人間は殆どいない。
澪自身も意外と荒っぽい地方の競馬の方が闘志が湧いてくる感があり、最近では地方騎手から『鼻っ柱の強い姉ちゃん』と認識されていたりする。

そんな澪とガーベラがコーナーを周り一周目のスタンド前へ。
綺麗にコーナーをロス無く周り、内側のグレートローマンの安堂と目が合う。
こちらは東海の若き帝王・・・
笠松を主戦場に暴れ回る猛者だ。
その安堂がお手並拝見とばかりにニヤリと笑っていた。

グレートローマンは公営新潟でデビューし、その後名古屋に移籍。名古屋大賞典や東海菊花賞といった東海公営の重賞を中央馬相手に制した強豪で、ガーベラと同じブレイヴェストローマン産駒。

「馬もヤネも気の強い女王様やねぇ」
「へへっ、乗りこなせるのは私だけですからねっ!」

こちらもまた飄々とした性格の安堂。
こうやって絡んでくる彼が面白いとすら思ってしまう。

そんなやり取りをしながら1コーナーへ。
コーナーでグレートローマンの馬体が近付いてくる。
反射的に外に膨らむ澪だったが、外のカウンテスアップはガーベラに寄られても外にはブレない。
ギリギリまで寄って止まるが、グレートローマンの位置もギリギリ。
かなり危ない位置だ。

だが、安堂も的屋も何食わぬ顔。
中央ならここまで危険な幅寄せは滅多と無いが、地方ならこれが当たり前・・・
安堂は的屋が恐らく動かないだろうと見て澪にプレッシャーかけてきた訳だ。
飄々としながらもえげつない手も使える・・・
それが安堂と的屋が帝王と呼ばれる所以だった。

澪としてはこれは相当なプレッシャーだった。
こんな狭い隙間で一歩間違えば接触して落馬・・・
ガーベラは気は強くとも、両隣は屈強な牡馬。
下手にぶつかると弾き飛ばされる可能性が高い。
両隣共に名手であるから、澪がふらついても避けるテクニックはあるだろうが、だからと言って信用してしまえるかと言えばそうではない。
そんな若さの残る澪の心理すら読んで仕掛けてきたのだろう。

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