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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 148

電光掲示板は1着から3着のところまで写真判定を表す「写」の文字が出る。
大型ビジョンにはゴール前の3頭の競り合いを写すシャッターカメラが映し出される。

「やられたな」
「やられたねぇ」
シロノライデンの田沢、サクラユタカオーの児玉、ともに苦笑いを浮かべる。
その先にはスターライトブルーと澪の姿があった。

最後に大きな栄冠を手に入れたスターライトブルー。
そして、この後には引退式が行われた。

通算成績15戦13勝。
主な勝ち鞍、天皇賞秋、マイルチャンピオンシップ、ドバイターフ、香港マイル、チャンピオンズマイル。
マイルでは絶対的な成績もさることながら、海外のG1を3勝したのは快挙と言っていい。
何より、その強烈な個性と逃げ脚で競馬ファンにインパクトを残したのは間違いないだろう。

表彰式後に引退式と言う事もあって、再び天皇賞と同じゼッケンを背負い本馬場に出るスターライトブルー。
当の本人はこれで競争生活が終わると理解していないらしく『まだ走っていいの?』的なテンションで本馬場を駆ける。
そんなスターライトブルーに思わず笑ってしまう澪だが、この馬には感慨しかない。
この馬に出会わなければ、今の自分は無かった気がする。

ゆっくりバックストレッチを回り3コーナー手前でスターライトブルーが一旦止まる。
その首筋を撫でて澪が言う。

「さあ、最後の走りよ、相棒!」

澪の思いに応えるようにスターライトブルーは嘶き、再び駆け出す。
これが最後の全力疾走。
4コーナーを曲がり最後の直線。
この時を待っていた観客席のファンが沸き立つ。
澪はそんなファンに向かって高々と右手を揚げた。

「…………」
「最高の景色だな」

感動のあまり言葉を失う樹里と真奈の代わりに、エリックが答える。

スターライトブルーの最後の勇姿とあって、真奈とエリックも府中に来ていた。
そして次の戦い・・・
それは馬産家としての戦いのフィールドにスターライトブルーも加わるのを見届ける為でもあった。

「私は期待してるのですよ・・・進堀井さんとは長年のライバルのようなものですから」

そう言うのは共に引退式を見守る吉野だった。
実はシンジケートの組まれたスターライトブルーは吉野の社来ファームに行く事が決まっていた。
これは同じく引退する進堀井牧場のシンボリルドルフにある種対抗する為でもあるのと、シャダイソフィアの件のお返しと言う意味もあった。

「よろしくお願いします」
「勿論、きっと良い競走馬を作っていきましょう」

サラブレッドにとって大事な血を繋ぐ責務を得たスターライトブルー。
その血を受け継ぐ馬がターフを走る事を期待しながら、樹里と吉野は笑いあったのだ。


去る馬が居れば残る馬もいる。
シロノライデンは元気で自走はジャパンカップを予定。
リュウノラモーヌと合わせて、ここも所有馬同士の対戦となる。

そして週が明けると、今度は砂の女帝フルダブルガーベラのJBCクラシックがあった。

メンバーは前哨戦とも言えた南部杯組が中心。
地方からはカウンテスアップ、グレートローマン、ハナキオー、トウケイフリート、アイランドハンターと各地の強豪揃い。
中央からは、リキサンパワーとウイニングスマイル、そしてフルダブルガーベラ等・・・
今回も激戦は必至だった。

ガーベラの人気は以前より上がっている。
やはり地方での認知度が上がったからだろう。
それと、最初は中央の客寄せパンダ的な目で見られていた澪も、何度も地方で対戦して認められたのか、地方騎手達も少し優しくなった気はする。
だが、彼らの中央何するものぞの気迫は常にあって、ジョッキールームは独特の緊張感に包まれていた。

ガーベラは前走より5キロ絞れて腹回りがスキッとしている。
それに伴い、事前の調教の動きも抜群だった。
前走の最後の失速は成長分以上の体重増も原因の一つだったのかもしれない。

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