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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 145

そんな願いを持つ澪だが、トリプティクの次走はジャパンカップ。
ラモーヌの前に最強にして最大の敵が現れたような気持ちになった。


そして次の週は、スワンステークスにウィンドフォール、天皇賞にスターライトブルーとシロノライデンが出走する。

まずスワンステークス。
コーリンオーやタカラスチール、ロングハヤブサにトウショウペガサスと、短距離の主役達が集結。
その中でも快速マイラー、ニッポーテイオーとウィンドフォールの3歳馬の一騎討ちが話題になっていた。

前回は不利を受け惨敗したウィンドフォール。
怪我も無く調教も順調に積んでここに合わせてきた。
ただ、あの一件から更に神経質になっている部分があり、それが唯一の心配所となっていた。
ニッポーテイオーも調子が良いようだが、決して勝てない相手ではないと思っていた。

パドックでも所在無げと言うか落ち着いてはいない。
元から神経質なのもあるから許容範囲とは言え、実績で勝ってる筈なのにニッポーテイオーに人気で負けているのはその辺りなのだろう。

16頭立ての大外枠は決していい枠ではないが、自分の競馬をすればおのずと結果はついてくると考える澪であった。

昨年のスワンステークスはスターライトブルーで勝った樹里(と澪)だったが、勝利の余韻に浸ることなどできずレース後も大わらわだった。
それはひとえにシャダイソフィアの故障によるものだったが、1年たって当の彼女は完全とまではいかないまでも回復を果たし、今日ものんびり放牧地で過ごしている。
真奈やエリックはそんなソフィアの様子も見ながら今年は全馬無事の完走を願いテレビで観戦する。

レースの先陣を切るのは6歳牝馬のドミナスローズ。
ロングハヤブサが若干躓き出遅れ、ウィンドフォールは4,5番手のいいポジションに着ける。
ただここはコーリンオー、タカラスチール、それにニッポーテイオーと有力馬がひしめき合う位置でもある。

今の所、ウィンドフォールはスムーズに走っている。
調子は前回同様良いので、このまま何事もなく行ってくれればいい結果も出るだろう。

レースは勝負の京都の坂に入るが、短距離戦なだけあってゆっくりは進まない。
降りに入る4コーナー辺りで後ろの方も動かないと間に合わないし、前の方も突き放しておきたい。
当然澪もウィンドフォールを動かして先頭を捉えにいく。

コーナー出口で先頭に並びかけるウィンドフォール。
ニッポーテイオーもすぐ側に来ている。
若干内側に包まれたタカラスチールとロングハヤブサは抜け出せそうに無い。

そして直線。
入ると同時にウィンドフォールに鞭を入れる澪。
過敏な反応をする馬だけにそれに即応えて脚を回転させる。
精神的な弱さはあるが、反応の良さとトップスピードに乗る速さはこの馬の持ち味だ。

グイッと加速して先頭に立つウィンドフォール。
それにニッポーテイオーが続く。
やはりこちらも抜群の手応え。
抜け出したウィンドフォールに馬体をピッタリと合わせてきた。

その後ろのコーリンオー、タカラスチールは少し離された。
変わってアサクサエリートが脚を伸ばしてくるが、前のマッチレースには届きそうもない。

ウィンドフォールにニッポーテイオーがぴったりと馬体を併せる。
並ばれてもウィンドフォールは食い下がる。決してリードを明け渡すことを許さない。
2頭譲らない、並んだままゴール板を通過。

ニッポーテイオーの郷家が天を仰ぐ。
そして澪はポンポンとウィンドフォールの首筋を叩く。
快速馬同士の叩き合いはクビ差決着。
勝ったウィンドフォールも負けたニッポーテイオーも全力を出し切った感があった。
その激闘を表すように、スタンドからは割れんばかりの歓声が湧き上がっていた。

「何とか、前回の敗戦の分は取り返せたね・・・やれやれだよ」

どこかホッとした表情の奥原。
ラモーヌの三冠達成でまだ興奮冷めやらぬ所だが、このウィンドフォールも素質馬だ。
前回の敗戦が悔しいものだっただけに、オーナーにいい報告ができるぞと顔が綻んだ。

「全くですぜ、テキ・・・またあんな事があったら、愛美の奴が火を噴いて暴れる所でしたぜ」
「私は怪獣ですかっ!」

ウィンドフォール担当のベテラン厩務員がニヤニヤとそうボヤくと、愛美が直ぐに突っ込んでくる。
ただその表情も笑っていた。

「まあ、兎も角良い勝利だったね・・・さて、相原を迎えてやろう」

奥原がそう言うと、2人も微笑んで澪を迎えに行ったのだ。


そして、次の日の東京競馬場。
秋の天皇賞が行われる。

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