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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 143

その集中力の通りに抜群のスタートを切ったラモーヌ。
今日は最初から行くぞと言わんばかりに先行態勢を取る。
澪はちょっとだけ驚きながらもラモーヌを制することはせずに彼女の好きなようにさせた。
ラモーヌくらいになればどの位置からでも勝てると思っているからだ。

マチカネエルベが逃げ、スーパーショットが2番手追走。
ラモーヌはロイヤルシルキーらと並んでその直後の集団につけた。

手応えは抜群にいい。
そのままコーナーを曲がっていく。

正直、作戦がどうこうと言うのは無い。
気持ち良く走ってくれれば良いと言うだけだ。
前のスーパーショットが結構行きたがっていて鞍上が必死に抑えているのだが、その辺りでペースが上がればまた対応を考えようかと言う程度だった。

マチカネエルベが良いペースで引っ張りつつバックストレッチへ。
2000mの中距離戦だが、その割には少し早いペース。
スタンド前のスタートは馬が興奮しやすく、そこでテンションが上がってバタバタとレースが始まる事が多く、それが荒れる原因になってきた。
故に先頭集団の馬はテンションの高い馬が多く、外から見るとラモーヌも掛かっているかのように見えるかもしれない。
だが、鞍上の澪はラモーヌが冷静にこのペースでいるのだと感じていた。
フットワークも首の上げ下げもリラックスしてゆったりしている・・・
周囲の高いテンションも我関せずと言った感じだったのだ。

折り合いがついた中で、前向きさもある。
そんな状態で仕掛けるタイミングを待っているのだ。
もしかしたら今抜け出しても勝てる、それくらいラモーヌはいいコンディションで走っている。

マチカネエルベはまだ余裕のありそうな感じ。
2番手の内を進んでいたミナミマドンナが一杯になって後退してくるが、澪はそれも上手い具合に避けることができた。

そして勝負の3コーナー。
試練の京都の坂がやってきた。
マチカネエルベの脚に衰えはなく、快速を飛ばしてコーナーを回っていく。
それを伺うラモーヌだが、すぐ前のスーパーショットが先に動いた。
ジリジリとマチカネエルベに近づいて4コーナーに差し掛かる。

澪はその動きを成る程と見る。
人気の低いスーパーショット。
鞍上の不気味な程の落ち着きは、ラモーヌに勝つ為の策を巡らせてきたような気がしていた。
要はラモーヌより先に動いて逃げ切ると言うつもりなのだろう。

南部杯では、それでガーベラは負けた。
あれは澪の油断もあったが、トウケイフリートの仕掛けが絶妙だったと思っている。
その記憶が澪に蘇ってきたが、あの時とはシチュエーションが違うのだ。

基本通り京都の坂をゆっくり登ってゆっくり下る。
このイメージを頭に浮かべながらコーナーを回る。
先頭の2頭とは2馬身程。
コーナーの出口に差し掛かると、ラモーヌから早く全力を出させろと言う気合が溢れ出てきていた。

ガーベラで負けた時の、同じ轍は踏まない。
ましてやラモーヌには、競馬界初の快挙が待っている。
動かなくて悔いを残すよりは、動いて負けたほうがいいに決まっている。
―いや、ラモーヌなら、負けることは、絶対にない―

背後からはひたひたと、ポットテスコレディ、ロイヤルシルキー、サクラハッスル、ダイナフェアリーと後続の有力馬が迫ってくる足音が聞こえた。
澪は軽く手綱を動かした。
それだけで、ラモーヌは反応し、前のマチカネエルベとスーパーショットに並び、並ぶ間もなく交わしていった。

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