PiPi's World 投稿小説

駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

の最初へ
 139
 141
の最後へ

駆ける馬 141

地元の雄が先頭に立ち、観客席が沸き立つ。

(これはやられた!!)

直線に入って澪も手綱を激しく扱き出す。
ガーベラも脚を伸ばしてはいるが、先に抜け出したトウケイフリートとの差がなかなか縮まらない。
後続も追ってはくるが3番手もガーベラとさらに2馬身ほどの差がついていた。

300mと短い直線だけに、このリードは辛い。
だが、澪は必死に追う。
しかし、差は少しずつしか縮まっていかないのだ。

そんな中、猛然と追い込んできた馬がいた。
地方最強と言っていいカウンテスアップだった。
凄まじい脚で追い込んでくるカウンテスアップ。
それにリキサンパワーとグレートローマンが続く。

逃げるトウケイフリート。
追うフルダブルガーベラ。
そしてカウンテスアップが迫る。

もつれるようにそのままゴール。
トウケイフリートに迫る事が出来なかった。
それだけでなく、カウンテスアップにも差し切られて3着。
考えてみればダートで初めての敗戦だったのだ。


レース終わりの馬房。
馬運車に乗るまでの僅かな時間で寛子が労うようにブラッシングをする。
だが、ガーベラは何度も何度も前脚でガツンと地面を蹴る仕草を続けた。

「負けたから、怒っているわ」

苦笑気味の寛子。
寛子からすれば、こう言う事もあるねって感じの敗戦だが、プライドが高く賢いガーベラは敗戦を理解して怒っているようだった。

「ごめんね、ガーベラ様」

澪が若干しょげ気味に謝ると、ガーベラはプイと横を向く仕草。
そしてドンドンと脚を踏み鳴らす。

「女王様も油断したからじゃない?怒っちゃダメよ」

寛子が諭すがブルルと鼻息を荒げるガーベラ。
感情豊かに怒るガーベラに謝りたいのだが、笑ってしまう澪がいた。

「次はJBCクラシックだって先生が言ってたわ」
「リベンジですね」

次も交流G1だが、牝馬限定のレディスクラシックではなく混合戦のクラシックを仁藤は選択した。
つまり、そこで勝負できると見ているのだ。

「次は勝とうねガーベラ様」

そう言いながら首筋を撫でた澪。
だが、ガーベラは・・・

ガブリ・・・

「んいっ?!噛むかぁぁぁっっっ!!」

ガッツリと肩を噛まれた澪だったのだ。



そして、その週末はもみじステークスに関東から遠征のウィンドサッシュが出走。
その後のレースでは、秋華賞でリュウノラモーヌが大偉業に挑む。
本来、横平騎乗のウィンドサッシュはわざわざ関西遠征させなくてもいいのだが、奥原はラモーヌの帯同馬としてと、人馬共に勉強の機会にと遠征させてきたのだ。

もみじステークスは京都芝1600m。
3〜4コーナーにかけては外回りコースを使う。
2歳のオープンクラスは頭数もなかなかそろわずここも少頭数で流れはスローになりそう。
瞬発力のある馬が有利になってくる。

横平にはウィンドサッシュ以外にも数鞍の騎乗馬があった。
同じ美浦からの遠征馬だけでなく、栗東の馬からも依頼が舞い込む。
若手騎手には平場のレースでは他より斤量が軽い状態で出走でき、それを見込んでの依頼である。

因みに女性騎手に関しては「見習騎手」の期間が過ぎても平場では2キロ斤量が軽くなる。
澪の場合は「それもう反則でしょ」との声が冗談交じりで上がっているとか。

澪が成績を上げるのは斤量も要因ではあるが、改正と言うまでの話にならないのは女性騎手を増やしたい意向があるのも理由の一つであった。

ウィンドサッシュはメンバーに恵まれたのもあってここを快勝。
横平はオープン戦勝利も初であった。


そして、秋華賞。
圧倒的一番人気のリュウノラモーヌ。
パドックでも落ち着き払い、一頭だけ雰囲気が違った。
その佇まいから、かの三冠馬シンボリルドルフを思い起こされる者も多く、ルドルフの異名『皇帝』になぞらえて『女帝』と呼ぶ者も多い。
そして、このレースでも皇帝と同じく無敗で制して伝説を作るのではと言われている。

こんな状況で流石に澪も緊張していた。
勝ち負けと言うより、伝説を託されたプレッシャーが大きかった。
彼女にしては珍しく昨日の夜は眠れていなかった。

昨晩は夜ご飯の味も分からなかったし、部屋に入れば1人で胃がキリキリと痛むのを感じていた。
女子1人だけと言う事で隔離されてしまっているが故に、孤独が余計にプレッシャーを増やしているような感覚だった。

SNSでこの小説を紹介

スポーツの他のリレー小説

こちらから小説を探す