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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 15

G 1どころか、重賞出走ですら大きなイベントだ。
涼風ファームから出たオープン馬は、健三が馬主を始めてから数頭しかおらず、重賞挑戦する馬もそう多く無かった。
それだけに牧場始まって以来の素質馬であるシロノライデンとスターライトブルーには、全員が期待をかけていたのだ。

「種付けも無事に終わって、後は受胎を待つばかりです」

4頭共、順調に発情して、そして種付けもスムーズに行った。
いつものようにスタリオンのスタッフからは『涼風ファームの牝馬は大人しくて助かる』なんて言葉を貰ったが、彼女達も牝馬達の大人しさに助けられている感があった。

「今度、オーナーも種付け見学なさいますか?」
「ええ、お邪魔でなければ」

そんな会話の中で真奈はやはり樹里に同じ匂いを感じていた。
この人も自分達同様に男とセックスに飢えているし、きっと馬のぺ◯スを見たら自分達みたいに股を濡らしてしまうだろう。

「娘も馬が大好きだし本物を間近で見せてみようかな、なんて」
「あ、お子さんいるって言ってましたね、おいくつなんですか?」
「2人いまして、ここで働いてる梶浦さんの娘さんと同い年だって知りまして」
「へぇー、可愛い盛りですね。ぜひ一緒にいらしてください!」
「ありがとうございます」

年が近いと話も盛り上がる。
話は変わって、今週のGT・安田記念の話題になる。

短距離王ハッピープログレスにヴィクトリアマイルでしのぎを削ったシャダイソフィアとダスゲニーが挑むという構図。
女傑ダイナカールの出否は未定となっているが、真奈はもう1頭出てくれば面白いという馬の名前を樹里に挙げる。

「いずれこの馬は短距離路線を支配する存在になると思っています」

―ニホンピロウイナー。

去年と今年の春先に短距離王ハッピープログレスを2度も破って世代交代を印象付けたものの、レース後に骨折が判明して休養中であった。
休養中で春シーズンは休んだものの、復帰すれば短距離はこの馬が中心になるだろう。
近代競馬に必要なスピードをずば抜けて持ち合わせていて、その馬体も惚れ惚れする程のものだった。
陣営が短い距離なら昨年の三冠馬ミスターシービー以上と胸を張るのも頷ける。

「オーナーはああ言う馬が好きなのですか?」
「スピードとか距離とか関係無く、凄く綺麗な馬体に惚れ惚れしますわ」

真奈はそんな樹里の言葉を聞いて、ますます自分と同じ匂いをしているのだと言う思いを強めた。
多分彼女も自分達と同じく競走馬に魅せられている。
それはレースとか血統とかそう言うのではなく、1匹のメスとして逞しいオスに魅入られているのだと思った。

「ニホンピロウイナーの父、スティールハートは今回シーテイストに種付けしましたから期待してください」

シーテイストは牧場創設から大事にされてきた牝系であり、自身も健三の元でオープン馬にまでなった牧場の代表産駒だ。

日本競馬界の盟主とも呼ばれる大牧場の総帥が惚れ込み、日本に輸入された種牡馬ノーザンテースト。
慎太郎が是非ウチの馬にもと種付け権を高額をはたいてまで購入して、生まれたのがシーテイストだった。
オープンクラスまで勝ち上がり、エプソムカップやオールカマーでは強豪牡馬に対してあと一歩の好勝負をした実力の持ち主。

「お母さんに似て頑張り屋な仔に出てくれたらいいですね」
「ええ」

涼風ファームの基礎繁殖牝馬であるこのシーテーストとアキネバーはどちらもシロノライデンの姉で遡ればロイヤル・メアに辿り着く牝系に属する。
牧場を開いた慎太郎の祖父は元々が牛の畜産業者で、道楽で始めた馬産で海外から買ってきたのが2頭の祖になる牝馬だった。
ただ、馬の素人の祖父が買っただけに高い金で素質の低い馬を買わされた感があったものの、牛産と馬産で相当な稼ぎを牧場にもたらしたのだ。

こうして中堅牧場にまでなった涼風ファーム。
慎太郎の父の代に馬産一本の涼風ファームとなり、戦中の軍馬供出で牧場は潤った。
たが、戦後の不況下で牧場経営が破綻。
慎太郎の父の死も重なって、牧場の整理の為に多くの繁殖牝馬を売る事になった。
それが丁度、トキノミノルがダービーを勝ちながらも死んだ年だった。

そこから数年後に高校卒業したばかりの幸子と慎太郎は結婚し、すぐに真奈が生まれる。
牧場経営の方は牝馬を減らした事で生きていけるだけぐらいの稼ぎで何とかやっていけていた。

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