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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 131

南関東三冠馬の意地で今回は勝ちに来ているように感じる走りだ。
中央のダート路線でも地方馬は活躍してるのもあって、ダートでは負けてられないと言う意地に澪も笑みがこぼれる。
勿論それはやってやろうじゃないかと言う笑みであった。

ハナキオーに合わせるようにガーベラも追走。
半馬身程ハナキオーが先行し、ガーベラは馬体を合わせるようにしながら1コーナーに向かっていく。
後続とは1馬身差ぐらいと、そこまで早いペースでは無かった。

炎天下でパサパサのダートはパワーを要求される。
ハナキオーもガーベラも全くそれを苦にするタイプではなく、快調に飛ばして2コーナーからバックストレッチに入る。
後続とは少し差が開いて2馬身。
体感的にはそこまで早いペースとは澪には感じない。

ガーベラは若干掛かり気味と言うか、食い気味に走っている。
何時もより少し走る気に逸っている感はある。
勿論、それが悪くない感じだとは澪は思っていた。

闘争心があっていいことには変わらない。
これ以上エキサイトしてしまったらスタミナを失いかねないが澪はこのギリギリの感覚を楽しんで乗っている感じもあった。

逃げるハナキオーとの差をじわじわと詰めていく。
2番手でじっとその時を待つガーベラと澪だが、交わすタイミングを見計らっていた間に後方からノトパーソが一気にまくってきた。

ダート転向してから実力を伸ばしてきた牝馬であり、ユニコーンステークスでも好走していた。
今回は更に上積みが見られ人気馬の一角に食い込んでいた。

だが、多少掛かり気味。
3コーナー入口でガーベラに追いつき、そのまま追い越していく。
思わぬ追い越しにガーベラも反応するが、それ以上にハナキオーの方の反応が大きかった。
先頭を取らせまいとハナキオーも動く。
先頭争いはハナキオーとノトパーソとなりガーベラは3番手。
そしてそれを合図に後方集団も詰めてきて4コーナー。
各馬大きく広がって直線に入る。

直線に入ってハナキオーとノトパーソの先頭争いは激しさを増す。
そこにアイランドハンターが食い込もうとしてくる。
ウイニングスマイルとトウケイフリートもいい脚で上がってくるが、それ以上に良い脚の馬がいた。
フルダブルガーベラだ。

グイグイと加速し先頭を捉える。
必死に追うハナキオー。
そして力尽きるノトパーソ。
それを瞬く間に交わし切る。

芝外回りコースのような長い直線ではないものの、ガーベラの瞬発力を持ってすれば十分である。

ハナキオーを一瞬で交わし去り、追ってくるアイランドハンターの追撃を退け、快勝を決めるガーベラだった。
ゴール板を通過して誇らしげな顔に見えたガーベラ。
澪は後で口取り式の写真を貰うことができたのだが、それがドヤ顔のようにも見えたという。
翌日の新聞には「女王様」という見出しが踊っていた。

そんな夏競馬・・・
リトルウィングは小倉2歳ステークスで不利を受け3着。
ウィンドサッシュは新潟2歳ステークスで出遅れて追い込んだものの4着。
どちらも勝利こそ逃したが、そこまで悲観する内容でもなかった。

そして初勝利から条件戦を5着、4着と来ていたプチソレイユは1勝クラスを勝利。
こちらも気長に見守って欲しいと仁藤は樹里に言っていた通り、少しずつだが前進していた。

樹里はそんな夏の終わりに涼風ファームに来ていた。
少しお腹の膨らんだ真奈が樹里と子供達を出迎え、事務所の方では同じく少しお腹の膨らんだ幸子が子供達の面倒を見ていた。

「赤ちゃんの方は順調ですか?」
「はい、お陰様で」

自分の子供だけでなく、みんなの子供の面倒まで見る幸子の幸せそうな顔に、樹里も思わず笑みがこぼれる。
最初にこの牧場を訪れた時は悲壮感漂う疲れ切った顔だったのと比べれば全く別人なぐらい幸せに溢れていた。

「樹里さんに今日はお願いがあります」
「何ですか、ママさん」

いつの間にか樹里も幸子をママさん呼びになってきていた。
この方が親近感があるのでついついそう呼んでしまっていた。

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