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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 129

そうやって2人で朝まで抱き合ったのだ。


奥原厩舎に入厩したディクタス産駒の牝馬はウィンドサッシュと名付けられた。
こちらも母がダイナサッシュと言う良血。
奥原厩舎でもリュウノラモーヌに劣らない逸材として期待が大きかった。

「瞬発力は間違い無くこっちが上ですね」
「ああ、芝もダートも関係無さそうだし、短い所ならラモーヌ以上かもな」

奥原も愛美も期待で顔が綻ぶばかりだ。
デビュー戦は新潟。
芝1000mと短い距離でのレースを選んだ。
今回のヤネは澪が来れなかったと言うのもあり、新人騎手の横平典彦に任せる事になった。
彼の父は奥原の親友、高島の同期であり、それが縁で仲良くなって奥原の妹と結婚する。
つまり典彦は奥原の甥に当たる。

「ノリ、馬に全て任せてレースしてくるといい」
「はっ、はいっ!」

まだ思うように成績を出せていない甥だが、才能はあると思っていた。
澪が奥原に『時折見せる訳の分からない閃きみたいなのがある』と評していたが、それが磨かれれば大成する気はしていた。

新潟芝1000m。
日本の競馬場で初めてコーナーのない直線コース。
ほぼフラットのコースで、外枠が極端に有利になる。
今回は運良くその外枠、8枠17番を引くことができた。

「まずはスタートを決めること、スピードは抜群にあるから外ラチにつけて押し切れるか…」

そんな話をして典彦をレースに送り出す。
典彦も何度も乗っている伯父の厩舎の馬だけに落ち着いて乗っていた。

ゲートが開きレースが始まる。
直線コースの難しさは位置取りとコース取り、そしてペース配分だ。
コース取りは、馬場状態の良い外側に寄る傾向があるが、だからと言って内枠から外に寄っていくのもロスがある。
位置取りとペース配分は、コーナーが無いから調整しにくいのがある。

ウィンドサッシュは大外でコース取りの心配は無い。
先頭から10番手程の位置で競馬を進めていく。
珍しく多頭数の新馬戦だが、馬群がバラけやすい直線レースだけにごちゃつきは少ない。
後は仕掛け位置だけ気を付ければ良い。
レースは中盤。
ややペースが上がりながら、先頭争いか激しくなっていく。

馬場の外側で4,5頭が横並び。
ウィンドサッシュはちょうどその後ろを追走している。
外ラチに寄せて、典彦が追い出しを開始すると、鋭い瞬発力を発揮し外のわずかなスペースから抜け出す。

内側―と言ってもコースの真ん中からやや外寄りだったが―から伸びてくる馬もいるが、スイッチが入ったウィンドサッシュはそれよりも速く、半馬身ほどリードを取って押し切った。

鮮やかな快勝。
馬の勝ちっぷりも良かったが、落ち着いた典彦の騎乗に奥原も目を細めた。

「これで相原の次ぐらいには推薦できそうだな」

典彦に関しては甥と言う関係もあるが、基本的には若手にチャンスを与えてやりたい奥原からすれば、この落ち着いた騎乗は安心するものがあった。
これならオーナーにお願いできると胸を撫で下ろすのだった。


そしてその次週の新潟開催ではレパードステークスがある。
3歳ダート重賞であり、ジャパンダートダービーからの参戦組が大半を占める。

ここでも主役はフルダブルガーベラ。
中央からはベルベットグローブとウイニングスマイル、ノトパーソなどが人気上位。
地方からはハナキオーを筆頭にアイランドハンターやトウケイフリートと前走の雪辱に燃える馬が参戦してきた。

ガーベラにとっては今年の折り返し点のレース。
ここを使って秋に向けてリフレッシュの短期放牧に出す予定になっている。
そして、ここから先は古馬との戦い・・・
ここはその試金石でもあるのだ。

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