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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 123

そんな話で最後は仁藤も笑ったのだった。


夏競馬の始まりは、フルダブルガーベラのジャパンダートダービーからだ。
地方競馬の盟主と言える大井競馬場で新設された競争で、3歳馬の国内ダート最強決定戦と言えるレースになっている。

中央からはフルダブルガーベラ、ベルベットグローブ、ウイニングスマイルが参戦。
地方からは船橋のアイランドハンター、岩手のトウケイフリート、北海道のグリーンタイセイなど各地の強豪馬やダービー馬。
そして極めつけは大井の南関東三冠馬ハナキオーが四冠目を狙いにここに参戦していた。

今回はまだ治安のいい大井なのと、中央からの参戦も多い事もあって、関東オークスの時のような酷いアウェー感は無い。
それと地方競馬ファンにもガーベラが認知されているのもあって、大井の帝王対中央の女帝と言うフレーズで盛り上がりは見せていた。

そのガーベラは、いつも通りパドックでは大人しくない。
時折威嚇めいた仕草もしたりして落ち着かない感じに見える所もいつも通りだ。

パドックの周回でカリカリしているのはいつものことだから澪も驚かないが、ガーベラは馬体自体は使う度にパワーアップしていて

「凄いね。それホントに牝馬?」
「ええ、逞しい仔でしょう」

ベルベットグローブの鞍上、郷家にそんな風に聞かれてニッコリ笑って答える澪。
前走の勝利もあってある程度の自信も持っていた。

前走の関東オークスに勝って、女帝の力を見せつけれた。
今回、その時より相手のレベルも上がったが不安は無い。


そしてレースがスタートする。
大外枠からのスタートだった為、焦らず急がず中団の位置を取る。
先頭争いはやはり地方勢。
小さな競馬場で戦ってきている彼らは総じてスタート巧者揃いだ。
それに対して、中央勢は概ね中団での競馬となった。

ベルベットグローブがガーベラの内側横。
ウイニングスマイルがガーベラの後ろ。
前にはトウケイフリートとアイランドハンター。
南関東三冠馬のハナキオーは更に前の位置にいる。
一周目のスタンド前を通って1コーナーまでの配置はこんな形で推移。
先行争いが激しく、やや早いペースでバックストレッチへ向かっていく。

いつもよりやや後ろに位置してるガーベラだが、瞬発力勝負が苦手な訳では無い。
むしろ水準以上の瞬発力は持っているのだが、幸か不幸か周囲は有力馬ばかり・・・
ガーベラの動きがレースを左右してしまう雰囲気があった。

早めに動いても裏目に出る。
逆に動かなくても裏目に出る。
今の空気はそんな感じがした。
このままジッとしていてもいいと思うのだが、ガーベラのカリカリした気性を考えるとストレスをためてしまいかねない。
なんとももどかしい状況だった。

そんな中でレースは動いていく。
真っ先に動いたのがハナキオーだった。
スタンドがドッと歓声で沸き立つ。

抜群の先行力で三冠レースを制覇してきたハナキオー。
3コーナーで先頭を捉えて好位につけていく。
対するガーベラはまだ後ろだ。

3コーナーで先頭を捉えたハナキオーに、4コーナーではアイランドハンターとトウケイフリートが押し上げて食らいついていく。
一気に加速して広がっていく馬群。
その中でガーベラも動く。

澪が鞭を取り出しただけで、ピリッと反応するガーベラ。
それは『早く指示しなさい!』と言ってるようで澪も自然と笑みが浮かんでしまう。

「さあっ、もういいわよっ!」

コーナー出口で鞭を一閃。
地方でも直線が長めの大井とは言え、前まで少し距離がある。
だが、ガーベラは澪の指示に身体を沈み込ませて凄まじい勢いで脚を回転させた。

共に加速するベルベットグローブとウイニングスマイルを瞬く間に置いていく。
その勢いでアイランドハンターを交わす。

3馬身程前方には先頭に立ったハナキオーと、それに食らいつくトウケイフリート。
そしてグングン加速していくガーベラが迫る。

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