PiPi's World 投稿小説

駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

の最初へ
 119
 121
の最後へ

駆ける馬 121

5歳になって胴長の雄大な馬体は随分と風格が出てきた。

「古き良きサラブレッドの姿やねぇ」
「ほんまええ馬体や・・・時代が時代やから惜しいけどなぁ」
「せやね・・・それやからしっかり稼いでアピールせな、嫁も来んしな」

そんな風に話をするのは、戸川調教師と池井調教師。
その2人に仁藤が答える。
シロノライデンは父系も母系も古き良きステイヤー血統。
つまり、時代遅れになりつつある血統だ。
戸川も池井も均整の取れたステイヤー体型の馬を好むが、それが時代遅れと分かりつつ抗いたいタイプだ。
それだけに他厩舎であってもシロノライデンを好意的に見ている所がある。

「そう言えば池井先生ん所のメジロさんの馬、ええステイヤーになりそやな」
「せやねん、デュレンは期待しとんねん」

戸川に言われてちょっと自慢げに返す池井。
そのメジロデュレンはまだ3歳の条件馬だが、相当期待しているみたいだった。
生まれは洞爺湖畔にある芽城牧場ではないものの、オーナーも相当期待していると仁藤も耳にしていた。

そんな池井厩舎からは同じメジロ軍団のメジロトーマスが宝塚記念に出走。
天皇賞ではシロノライデンと接戦を演じたステイヤーでメジロデュレンと同じフィディオン産駒。

「ライデンとは何回かやったけどなかなか勝てんからなぁ」
「トーマスもいい仕上がりやけどね」

関西馬が中々勝てないと言われてる昨今、関東のエース級と渡り合っているシロノライデンは同じ関西所属として応援したい面もあるが、同時に倒すべき敵でもある。
仁藤も戸川も池井も、そうやって関東何するものぞとシノギを削り合って切磋琢磨してる仲である。

「まあ、共に関東勢を蹴散らさんとな」
「せやな、いつまでも関東の天下とか言うてられんようにしたらなな」

調教師達がそうやって誓い合う中、停止命令がかかり騎手がそれぞれの馬に跨っていった。


澪がシロノライデンに跨った感触は、いつも通りドッシリとした雰囲気だった。
ラモーヌの様な心地良さやスターライトブルーのような快楽は無いが、この馬の背中は落ち着く。
気性的に神経が図太いから余計にそう感じるのかもしれない。

「本当にやる気無さそうに見えるんだけどねぇ」
「ブーちゃんとは正反対の子だからね」

走るのが兎に角好きなスターライトブルーと違い、ライデンはそこまで走る事が好きでは無い雰囲気がある。
ただ人間が喜ぶから走ってやろう的な感じだ。

馬場に入って促していけば勢いよく駆け出してくれる、まあ賢い仔だ。
レースでも最後にはきっちり伸びてきてくれる。
いつもと変わらないライデンなのだ。

ゲートも普通に入り、スタートもいつも通り。
出てすぐに後方に下げるのも一緒だ。
好スタートからポンと勢いよく行くのはヤマノスキー。
それにスズタカヒーローが続き、メジロトーマス、クシロキングらが好位集団を形成。
スズカコバンが今日は後方寄りで、ライデンの一歩手前にスダホークがいる。

ペースは少し早めで良い感じ。
シロノライデンもリラックスして走っている。

性格はスターライトブルーと真反対のシロノライデンだが、戦術の融通の無さはどこか似ている。
スタートが得意で無く、加速も早く無いのでどうしても後ろからの競馬になるし、大跳びな分馬群に囲まれたくは無い。
故に大半が追い込み大外強襲となる訳だが、それ故に取りこぼしも多い。
上手くインに斬り込んで勝った事もあるが、あれは一歩間違えれば馬群の中で取り囲まれて沈んでしまうリスクもあった。

勿論、澪にもっと経験があればコース取りも上手く出来ていたかもしれない。
ある意味で澪にコース取りの重要さを教えてくれた馬でもある。

レースはシロノライデンが最後方のまま佳境の3コーナーに入っていく。
クシロキングやメジロトーマスが前方にプレッシャーをかけながら上がっていく中、抜群の手応えでそれに迫る馬がいた。
パーシャンボーイだ。

馬群中団から手応え良く先頭集団にパーシャンボーイも加わって4コーナー。
シロノライデンはまだ最後方だった。

SNSでこの小説を紹介

スポーツの他のリレー小説

こちらから小説を探す