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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 119

スターライトブルーの調子は悪い。
ただ脚元の不安は無く、走れないわけではないが、どうも動きが重い。
それだけに仁藤も出さないとは言えないものの、出すのも少し不安と言った所だった。

パドックでもスターライトブルーの元気は無い。
歩き方も重い。
やはり香港での激闘が尾を引いているみたいだ。

それに対して絶好調に見えるのがギャロップダイナ。
性格的にかなりエキセントリックな馬だが、今日のパドックは比較的落ち着いて馬体の艶もいい。
騎乗する柴坂も調子がいいので、やはり人気を集めていた。

スターライトブルーに澪が跨ると、少し馬がやる気を出す。
ただ歩様に重さを残っていた。
そもそも走るのが好きな馬だから、調子が悪くても走りたい意志はあるようだ。

(やっぱり少し重いよね・・・)

こんな状態だから競り合いはしたくない。
とは言え、レースの状況次第でどうなるか分からない。

馬場入りしてもいつもの飛んでいくくらいのスピード感がない。
足元に明らかに不安があるわけではないが調子は間違いなく悪い。
澪は自信を持てなかった。


そしてファンファーレが鳴り、いよいよスタートの時を迎える。
ゲートにはいつも通りスムーズに入る。
スタートには気を使う。
今日は先行争いするライバルが多い。

スタートは良い。
ゲートを出てのゼロダッシュの速さは相変わらず抜群。
一気に先頭に立つ所は何時も通り。
だが、そこに巨漢スプリンター、トーアファルコンが競りかけてくる。

ただ競りかけてくると言ってもハナを奪うつもりは無い。
馬体を合わせて追走というやつだ。
巨漢だけに威圧感があるし、調子の悪いスターライトブルーだけに追走されてストレスを溜めているのが澪にも感じ取れた。

澪が宥めようとすると、トーアファルコンが少し距離を詰める。
それで更にスターライトブルーのストレスが溜まっていく。
これは各陣営もスターライトブルー攻略法と言うものを理解してきたと言う事なのだろう。
気持ち良く逃すと勝てないからこそ、追走してストレスを与えていく。
それで暴走させて体力を消耗させていくと言う事だ。

この馬に関して澪の方は戦術とかがある訳では無い。
気持ち良く逃げさせる・・・
それだけなのだ。
国内でも屈指のスピードを持ちながらも、ある意味で凄く難しい馬なのだ。

澪の中では一抹の不安があった。
今日はそのスターライトブルーにとっての気持ちのいい逃げができない、そんな気がしていた。
トーアファルコンが並びかけ、また下がってピタリとマーク。
その後ろからはホリノカチドキとロングハヤブサ。

いずれもスピードのある馬。
トーアファルコンとホリノカチドキは同じ厩舎だ。

つまり、2頭がかりで潰しに来ていると言う事だ。

ただ、澪としては地方のあの洗礼に比べれば、中央の騎手のこの程度の『潰し』はスポーツマンシップの範疇だった。
逆に言えば、荒っぽい手口を使わなくても潰せるぐらいの腕前があると言う事でもあるが、やっぱりこっちの方が乗っていて面白い。

因みに、関東オークスの後のお風呂が染みるぐらい青痣が出来ていた。
それを見た寛子によると、特にお尻の鞭の後はハッキリと青痣になって『SM調教されたの』と言うぐらいの有様だった。
嫁入り前の娘になんて事をと憤慨した寛子だったが、澪としては地方騎手達に潰すべき強敵として一人前に扱って貰った証拠とは思っていた。
まあ、腹は立ったのだが。

コーナーに入ってスムーズに回るスターライトブルー。
例え身体が重くとも、元来走るのが好きな上にコーナリングも上手い。
気性的なロスはありつつも、こう言う所はロスなくこなす所が長所でもある。
そのコーナーでスピードに乗り、大欅の辺りで1馬身半程後続を引き離す。

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