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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 118

中央の名手たちの腕前は彼らよりも上の部分はあるが、どちらかと言えばスマートに乗りこなす騎手が中央では多数。
一方の地方の名手たちは何が何でも、泥臭く追うというスタイルが多い印象を澪は持っている。

事を荒立てたくはない。
訴えてもこちらが不利になるのもわかっている。
だったらガーベラ様がエキサイトしないように怒りを鎮め、宥めながら道中を進めることにした。

しかし勝負所に差し掛かるほどガーベラ様包囲網が強力になっていく。

その勝負所の3コーナー。
かなり早いタイミングで内側の騎手が鞭を右手に持ち振り上げる。
そして、バチンと澪に衝撃。

「んいっ?!」

尻から腿にかけての所に激痛・・・
鞭がそこに当たったのだ。
だが内側の馬は反応しない。
それは当然、鞭が当たってないからだ。
何が起こったと混乱する澪に、同じ所に同じ衝撃。
呻きながら澪も悟った。
これはわざとだ。

コーナーの遠心力に合わせて少し外に振って避けようとする。
だが、内からぴったりと寄せてくる。
そして、内側に気を取られた澪・・・
その顔面に強い衝撃で仰反る。

今度は外の騎手だ。
鞭で澪の顔面を殴ったのだ。
鼻の奥にツーンと鉄の匂いがしてきた。

これぞ鉄火場の洗礼・・・
下手に避けようとすると、バランスを崩して最悪落馬もあり得る。
危険な行為だが、それを理解してやっている。
ここまでして相手を潰すのが地方流のやり方だ。
澪が中央育ちのお嬢さんだから、これで怯むだろうと思っているのだろう。

だが、澪はあちこち叩かれながらも姿勢を崩さない。

その澪の意識が通じているのか、ガーベラ自身もぐっと我慢しながら走っていた。
澪と同じで湧き上がる怒りを必死に我慢して、エネルギーに変えながら道中を進みー

4コーナーを曲がり、直線に向くと前をブロックしていた地方馬集団を一気に突き破るように脚を爆発させたのだ。

4コーナー終わりでで外の馬をガーベラが弾き飛ばす。
振り下ろしてきた鞭をヘルメットで受け止めてそのままガーベラを追う。

直線に入ってすぐ先頭を一気に交わす。
そしてグングンと加速させて引き離す。
ぶっちぎったままゴール。
強さだけを見せつけたレースだったのだ。

全日本2歳優駿を勝った時も若干感じたが、今回は更にアウェー感があった。
スタンドでもヒール的な雰囲気で迎えられていたが、この圧勝でアンチを実力で黙らせた感じだった。

最後のコーナーでのごちゃつきも審議すら無いのが地方らしい。
まあ、やられたからやり返しただけだが。

なので検量室でもまだ険悪な雰囲気のままだった。
ただ、地方のトップジョッキー、地元の佐々井からは『やるもんたな、お嬢ちゃん』と評価は受けたし、大井の若き帝王的屋から『いい根性してる』と褒められもした。
ただ殆どの騎手からは歓迎されなかったのだが、これは仕方ない。

ガーベラの次のレースは、ユニコーンステークスに向かう事になったのだ。


週末。
スターライトブルーは長期の海外遠征から帰還し、国内で今年初めてのレースとなる。
安田記念。
GTを制覇しスターホースの仲間入りを果たしたギャロップダイナとの対戦だ。
人気も2頭の一騎打ちムードが漂うが、それ以外にもトーアファルコン、ロングハヤブサ、タカラスチールと実力・勢いのある馬が多く、仁藤は一筋縄ではいかないだろうと警戒する。

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