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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 112

海外GTも制覇し、国内では数人いれば良いところの年間100勝も可能なペースで勝ち星を重ねる。
期待の若手にとどまらず、日本競馬を代表するトップジョッキーと呼ばれる存在に澪はなりつつあった。

樹里の喜びもひとしおである。
父が遺した1頭、最初の所有馬でのGT勝利。天皇盾を手にした時には込み上げてくるものがあった。

様々な思いが交錯した天皇賞は無事に終わったのだ。

そして、嬉しい事が立て続けに起こる。
樹里の従姉妹であり、最も信頼する紗英が妊娠・・・
結婚4年目にして初めての妊娠だった。
紗英の夫は紗英の叔父の会社で働いていると言う縁で結婚。
樹里の家庭のような波瀾万丈も無い普通の夫婦関係に羨む事もあった。
結婚以来中々授からなかった子供も、ようやく妊娠したが、当の紗英よりも夫や叔父の方が盛り上がっている感はある。

「本当に仕方ない人達ですよね・・・」
「でもいい事よ」

樹里の妊娠の時は父は喜んではいたが、そこまで感情露わにはしなかった。
祐志も喜んで見せたが普通の反応・・・
こちらは女を孕ませたのは初めてではないから感動が薄かったのだと後に聞いた。
兎も角、男の子でも女の子でも無事に産まれてくれればいいと樹里は願うのだった。



翌週、NHKマイルカップ。
ウィンドフォールは距離短縮でこの一番を迎えていた。
皐月賞は僅差の敗戦で、日本ダービーより距離の合うこちらを奥原は選択した。
昨年スターライトブルーで挑むつもりが叶わなかったので1年越しの舞台である。

皐月賞でともに戦ったメンバーが数多く参戦する。
ウィンドフォールは同じく快速馬ニッポーテイオーと人気を分け合う存在になっていた。

それ以外にもカツラギハイデン、アサヒエンペラー、エイシンフェアリー、シンチェスト、マウントニゾン、ラグビーボールと言った皐月賞敗戦組や素質馬が集まっていた。

「相沢っ!今回は負けないからな!」
「ふふ、私もよ」

澪にそんな風に言ったのは、アサヒエンペラーの騎手、中立だった。
澪にとっては同期であり、こうやってG1で同期と競い合える事に喜びがあった。
彼も皐月賞では緊張していたが、少し場馴れした感がある。

「栗東は若手が元気だよなぁ」
「でも、争いが激しいのよ」

美浦ではベテラン重視で、栗東は若手にチャンスを与える・・・
そう言われているが、逆の見方をすれば美浦は任せた騎手を長く使う面があり、栗東は悪ければ即切られる所があると言える。
中立は、アサヒエンペラーの騎乗を批判されながらもずっと使って貰っている。
逆に今や飛ぶ鳥落とす勢いの澪ですら、失敗して降ろされて他の若い騎手にすげ替えられた事だってある。
真逆なのだが、それぞれが騎手をそうやって育てているのである。

中立の騎乗するアサヒエンペラーはレース前で僅差ながら1番人気に推される。
デビューからここまで大崩れしていない安定感を買われたのだろう。皐月賞でも差のないところまで詰めてきた。
調教師の加納も一貫して中立を乗せ続けている。
これはウィンドフォールの奥原と澪の信頼関係と同じようなものだ。

「若いモンは血気盛んなくらいがちょうどええな」
「あの子らが次はデッカいとこ取るんやねぇ」
「まあ、あのお姫様(=澪)はもう大物やけどなぁ」

澪と中立を見ながら岩倉、西村、河井といった栗東の先輩騎手が肩を並べて喋っていた。
彼らもシンチェスト、カツラギハイデン、ラグビーボールというライバルに騎乗する。

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