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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 110

逃げる2頭、そのマッチレースを期待して観客席が盛り上がる。
両者馬体を併せて追い比べ。
まったく並んでどちらが抜け出すのかわからない。

「まだバテないの?」
「そっちこそよ!!」

鞍上2人も体力の続く限り追いまくる。
このままゴールまでこのマッチレースが続く、と誰もが思っていた。

しかし、ゴール200m手前でスターライトブルー、レッドストーン2頭の脚色が急に鈍る。
そして大外を伸びてきたルション。

一頭だけ違う次元の脚で駆け、差を一気に詰めてくる。
残り100mで3馬身程に詰めてくる。

このままルションか・・・
誰もがその脚を見て確信したスタンド。
だが、ルションの脚が鈍くなる。

いや、鈍くなったのではない。
スターライトブルーが再加速したのだ。
口を割り、首を大きく振り乱して走る姿は、まさに狂乱。
ルションの狂気を超える狂乱の走りで必死に粘る。

そのままレッドストーン、ルションと並んだ所でゴール。
ルションの騎手が大きく首を横に振り、シャロンは精魂尽き果てた様子で項垂れる。
そして、澪も流れる汗も拭わず、ゴーグルを取って大きく息を吐く。

スターライトブルーも口から泡を吹き、黒い馬体に白い汗が浮かび上がる。
激闘だった・・・
馬も澪も力の全てを出し切ったのだった。


勝利はしたが消耗も大きかった。
だが、手加減をして勝てるレースでは無かった。

「いや、頑張ってくれましたな、馬も人も」
「そうですね、ありがとうございます」

仁藤も見てるだけで疲れた様子だった。
そして樹里も見ているだけで疲れるレースだった。

スターライトブルーは次、安田記念に向かう予定ですが帰国して馬の状態を見ながら考えます、と仁藤に言われて樹里も納得した。
今日のレースの疲れはかなり残りそうでもしかしたら次にも響く可能性があるからだ。

検量室に戻ってきて重い溜息をついてへたり込む澪。
同じくやってきたシャロンもがっくり項垂れながら腰を下ろす。

「シャロン、今日のあなたはエキサイトしすぎだったわよ」
「………………ごめんなさい」

そうは言いつつ、戦術としては間違ってないとは思っていた。

「ミオには絶対・・・負けたく無かったから・・・」

ボソッとそう言うシャロンに何だか笑ってしまう澪。

「私もよ」
「そっか・・・一緒だったんだね」

ドバイで初めて会った時から仲良くなれると思っていた。
ここで更にその思いを強めた澪であったのだ。


そして、春の大一番。
天皇賞がやってくる。
前日からのかなりの降雨で京都競馬場は重馬場。
対照的にシロノライデンの調子がすこぶる良かった。

「恨む訳にいかないけど・・・天気がねぇ」
「天気は仕方ないですよ・・・レースの時に雨が上がってるだけマシですって」

馬場の状態はすこぶる悪いが、雨が降ってない事でシロノライデン自体はご機嫌。
それに今回は装蹄師とヘンリーが話し合って、少し蹄鉄を変更している。
それで劇的に変わると言う訳で無いが、馬のストレスは減るだろうと言う事だ。
どちらにせよ、やるべき事はやったと言うのが陣営の総意だった。

人気は大阪杯のワンツー、スダホークとサクラユタカオーに中山記念を勝ったクシロキングにシロノライデンが加わる4強ムード。
ただ、シンボリルドルフが去りミホシンザンも不在というのもあって混沌とした古馬戦線である。

ライデン、スダホーク以外の上位人気馬には長距離レースの実績が乏しくそれが混戦に拍車をかけていた。

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