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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 109

そして、その週は香港。
チャンピオンズマイルが行われる。
今やアジアナンバーワンマイラーと呼ばれてもおかしくないスターライトブルーが参戦予定。
ドバイや香港の勝利は、日本ではマイナーな地域での勝利として評価は高くない。
だからこそここで勝って安田記念で凱旋したいと言うのが仁藤の考えであった。
それは樹里も同じ思いだ。

香港の人達はもうスターライトブルーの事は良く知っているようで、今回は堂々の一番人気。
二番人気はレッドストーン。
ブラウンウッド厩舎の共にドバイ遠征した馬だ。

ただし今回はレッドストーンにとってホームグランドの上に、マイルでは連対すら外した事が無い程の安定感を誇る。
現在香港の最強マイラーであった。

「今回はそう簡単に負けないわよ」
「私も負ける気なんて無いですよ」

シャロンと澪がそんな事を言いながら笑い合う。
日本のリーディングで上位に食い込んで絶好調の澪だが、シャロンも現在香港でのリーディングでトップ。
こちらも絶好調なのだ。

ドバイでの活躍もあって澪とシャロン、2人の女性ジョッキーは世界中から注目を浴びる存在になった。
この2人のみならず他地区…アメリカ・ヨーロッパ・オセアニアでも女性ジョッキーの活躍が顕著で女性ジョッキーの特別招待レースを作ろうという話も出ているくらいだ。

そんな中でレースを迎える。
スターライトブルーはいつものように好スタートを決めてハナを奪う。
レッドストーンはそれをマークするように背後につけた。

シャロンからすればスターライトブルーは異質な馬だ。
香港もヨーロッパ風のレース展開が多く、前半はスローペースで後半にペースアップしていく。
だからスターライトブルーのような最初からぶっ飛ばしていくスタイルは、ここ香港では異質なのだ。

だが、シャロンは一度乗って理解し、敵として対戦して色々と観察していた。
勢いに乗せたスターライトブルーは止めれない。
なら、無理にでも競らないと勝てない。
だが、それは自分の馬にも負担を強いる事になる。

その全てを理解しつつ、シャロンは腕を動かしレッドストーンを全身させる。
スターライトブルーに並びかけて行ったのだ。

澪からすれば舌打ちしたくなる。
やはりと言うか、分かってるシャロンは見逃してくれなかった。
いくら大人しくなったスターライトブルーとは言え、並びかけられるとやはりヒートアップする。
澪の指示を待たずにグンと加速して引き離そうとする。

それこそシャロンが待っていた事。
レッドストーンを加速させ追走する。
これぐらいで潰れる馬で無いと信頼しての事だが、明らかにハイペースになっていく。

2頭だけが別世界のレースをしているような景色が広がる。
スターライトブルーとレッドストーンが並んで飛ばしてその後方は5馬身、あるいはそれ以上開いた。
もちろんハイペース。
現地の実況は「明らかに飛ばし過ぎ」「狂っている」と興奮気味にまくし立てている。

この状況をシメシメという感じで見ている馬が1頭いた。
イギリスの強豪マイラー・ルションだ。

ルションは狂気の種牡馬リヴァーマンの産駒。
あのトリプティクしかりだが、産駒に狂気と瞬発力を伝え、ルションもそれを受け継いでいる。
このレースで引退となるが、言わばこれが種付け前のデモンストレーションと言う感じなのだ。

そんなルションにとって、2頭のハイペースは格好の的。
脚を溜めて直線に備える。

その先頭2頭は3コーナーに入っても先頭の喧嘩争い。
ペースを一切落とさないまま4コーナーに突入する。

「どこまでついてくるのっ!」
「最後に抜くまでよっ!」

叫ぶ澪にシャロンも叫び返す。
どちらも譲る気は無い。
久々にスターライトブルーも荒れ狂い、目を血走らせながら引き離そうとする。
だが、レッドストーンもここが自分の庭だとばかり食らいついてくる。

そのまま2頭が競り合いながら直線へ。
後続までは十馬身近くあった。

平坦だが長い直線。
後続も一気にギアを入れて追ってくるが、まだ遠い。

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