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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 107

ウィンドフォールは2番手。
4コーナーで先頭に並びかける。
これは澪が仕掛けたと言うより、流れに乗った結果だ。
直線に入り、荒れ気味の内側から先頭に立つ。

先行馬には辛い中山の坂。
ウィンドフォールの脚色は悪くない。
先頭に立ち坂を駆け上がるが、後続はそう引き離せていない。
必死に追うウィンドフォール。
ダイシンフブキとウインドストースが脱落。
ダイナガリバーやニッポーテイオーも伸びない。

先頭を走り続けるウィンドフォール。
そこに猛然と襲いかかってきたのは、ダイナコスモスだった。
必死で粘るウィンドフォール。
ジリジリと迫るダイナコスモス。
更にそこに最後方から怒涛の追い上げ・・・
フレッシュボイスが来た。

残り100mの攻防。
粘るウィンドフォール。
差のないダイナコスモス。
追い上げるフレッシュボイス。
そこにアサヒエンペラーとエイシンフェアリーも追い縋る大混戦となる。

大混戦のままゴール。
澪が唇を噛む。
最後にダイナコスモスに交わされ2着。
だが、粘りに粘っての2着だけに大健闘とは言えた。

頑張ってくれたウィンドフォールを称え、鬣を優しく撫でながらゆっくりと引き上げていく澪。

「あと一歩だったなぁ」
「ですねぇ」

クールダウン時に馬を併せてきたフレッシュボイス鞍上・田端とそんな会話を交わす。

「あれ?」

澪が直線のほうを見ると、ゴール板を過ぎて1コーナーに向かうあたりで歩みを止めた馬が1頭いるのに気づく。
1番人気に支持されながら7着に敗れたダイシンフブキだ。
コース上に止まったまま鞍上の菅山がダイシンフブキから降りた。

それが何か分からぬ澪ではない。
その故障が大きなもので無い事を祈りつつ、澪は戻っていったのだ。

この敗戦を受けての奥原の反応は早かった。
自走をNHKマイルに決めたのだ。
勿論、皐月賞で距離の融通はあるのは理解はしている。
だが、ダービーは少し長いとの判断だ。
この辺りの割り切りの良さとフットワークの軽さは批判される事もあるが、樹里もこの判断に異存は無かった。
同じく皐月賞に負けたカツラギハイデンやニッポーテイオーもNHKマイルに向かう。
この辺りも距離短縮で本来の走りができるだろう。
ウィンドフォールにとって大敵だ。


クラシック第一戦が終わり、北海道も桜の季節が始まろうとしていた。
馬達も雪の消えた暖かい牧草地をのんびりと過ごしている。

引退馬シロノホマレの横に痩せた小柄な馬が寄り添って草を食む。
シャダイソフィアだった。
ようやく放牧できる程度にまで回復したのだ。
シロノホマレと共に放牧すると、何となく理解したように世話好きのシロノホマレがピッタリと寄り添っている。

「順調な回復ね」

それを微笑んで見る樹里。
その向こうでは、出産を終えた母馬達が子馬と共に過ごしている。

「何とか生きているな・・・ただそれだけだが、それでいい・・・」

エリックの言葉。
ようやく大きな仕事がひと段落ついたと言った感じだ。

ここまで回復したシャダイソフィアをどうするかと言う問題は吉野と話し合ったが、できれば慣れた環境で過ごさせてやりたいと言う両者の意思で、当面は涼風ファームで面倒を見る事になった。
言わばシロノホマレと同じ功労馬扱いに近い。
その為に馬房もシロノホマレの隣に移され、24時間体制での看護も終わっていた。
『出産シーズンに間に合って良かった』と真奈が言っていたが、涼風ファームの人員のパンクも無く大変な時期を乗り越えれたのだ。
後は当歳馬の離乳が済み、次の種付けに臨む事になる。

因みに、人間の方の種付けも進んでいるらしいが、百合と敦子はそれぞれジョンとヘンリーが早々に休胎を決めていたが、幸子、真奈、裕美は子作りする気満々のようだ。

特に幸子はこの歳でまだまだ自分も女として認めてもらえたうえ、子も授かることができて喜びも倍増。まさにこの世の春が来たというくらいの幸せオーラを纏っているのが、誰からも見て取れた。

慎太郎を亡くしてからの落ち込みようを知る同じ地区の牧場長は真奈に
「お母さん元気になったなぁ、しかも若返ってないか?」
と言われて、少し困惑してしまった、真奈は樹里に話した。


エリックが種牡馬のカタログを見ながら種付けの検討を進めていると、開かれたページをじーっと見つめる樹里の娘・梓の視線に気づく。

「アズサはどの馬がいいのかわかるのかい」
「このお馬さんかわいい」
「ふむ」

梓が指さしたのは今年から日本で種牡馬入りしたメンデスという馬だ。

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