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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 106

喜び合う澪と奥原。
次は当然オークス。
だが、その前に来週の皐月賞だ。


そんなクラシックシーズン。
今年はクラシックに出走馬の出せなかった仁藤厩舎。
その仁藤が桜花賞終わりに樹里に会いに来ていた。

「おめでとうございます・・・実はお願いがありまして」
「どうしたのですか、仁藤先生」

所属馬の話では無いとは思ったが、樹里は仁藤の頼みが何かは分からなかった。

「実は気に入った1歳馬がいるんですが・・・まだ買い手がつかないのでどうかと思いまして」

意外かもしれないが、牧場を周る調教師が素質馬を見つけ、馬主に勧める事が往々にしてある。
勿論、馬主の好みや資金力もあるが、今の樹里は断る理由が無い。

「分かりました・・・仁藤先生の良いように」
「ありがとうございます」

そんな話を聞いて樹里はエリックに連絡した。
その馬を確認してもらう為にだ。


その牧場は日高にある小規模牧場だった。
エリックが真奈を伴って訪れ、その子馬を見る。
そのナイスデイの85は、脚の少し曲がった痩せっぽっちの子馬だった。

エリックが押し黙る。
歩く子馬をじっと見る。
牧場長すら困惑するぐらい黙って見ていた。

「何故、この馬が残っているのだ」

かなり怒りの籠った声。
真奈は理解しているが、牧場長はビックリした。

「ノーアテンションとインターメゾ・・・最良の配合にして最良のバランスを与えている・・・脚の曲がりなんて無関係だ、これは」

怒りと共に力説するエリックに、ちょっと感動したような牧場長。
自信を持って送り出した馬を評価されて嬉しくない訳が無い。

「これは買いでいいのかな?」
「当たり前だ!それ以外の選択肢は無い!」

そんなエリックに牧場長は大喜び。
当歳で売れなかった馬を即買い・・・
後日、ナイスデイの85が涼風ファームに来るのだった。


そんな中で始まった皐月賞。
ウィンドフォールはスプリングステークスの敗戦で人気を落としていた。
人気はダイシンフブキ、ダイナガリバー、アサヒエンペラー。
それ以外にもフレッシュボイスやダイナコスモスと言う素質馬もいる。
今年は混戦模様だった。

スプリングステークスが雪の影響で延期となり、皐月賞と中1週という過密な間隔となってしまったのも人気を落とす理由の一つである。
事実、スプリングステークスを勝ったサニーライトは過密ローテを嫌って皐月賞をパスして青葉賞から日本ダービーというローテに切り替えている。

奥原は「間隔がきつくても大丈夫」と自信を見せ、ウィンドフォールの皐月賞出走にゴーサインを出した。今年は抜けた馬がおらず、勝つチャンスは十分あると見込んでいた。

それに今回は手綱が澪の手に戻るのだ。

とは言え、神経質な馬だから気は使う。
パドックで跨った時も若干うるさい感じはあった。

地下馬道を通る時もチャカついた感じは変わらず。
だが、本馬場に出て返し馬での軽快な走りの手応えに澪も思わず唸る。
同じ厩舎で色々ラモーヌと比べられがちだが、この馬も素晴らしい素質をしているのを改めて感じるのだった。

スタートは全馬綺麗に揃う。
ハナを切ったのはメイショウタイテイ。
ダイシンフブキは前めの位置。
アサヒエンペラーやダイナガリバーは中団に位置する。
そしてウィンドフォールは逃げ馬を伺う先頭集団の内ラチ沿いを追走していた。

ペースは幾分早い。
だが、追走するのが無理と言う程でも無い。
澪としてはこの位置をキープしつつ、内側でロス無くレースをする事を考えていた。
距離延長の不安は無いとは言えないが、そこは母系に流れるスタミナの血を信じるしかない。

軽快に先頭を走るメイショウタイテイがレースを作りつつ、バックストレッチに入る。
中山のバックストレッチは直線ではなく、緩やかなカーブが続く感じで2コーナーと3コーナーが明確でない。

中山での開催が最終日なこともあって、芝は傷みが顕著で良馬場発表だがやや荒れ気味。
向こう正面まではやや下り坂だが、そこは慎重に。

3コーナー辺りからレースは動き出す。
先頭を行くメイショウタイテイにベルベットグローブが迫り、さらにレイクブラック、ウインドストースが差を詰める。
ダイシンフブキも早めに動きを開始した。
ウィンドフォールは内目でまだジッとしている。
その外にはアサヒエンペラー、それにニッポーテイオー。
ダイナガリバーもポジションを上げていく。

ただ1頭、全く動かなかったのが最後尾あたりにいるフレッシュボイスだ。

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