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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 105

まずは桜花賞。
トライアルも圧勝と言ってもいい勝ち方だったリュウノラモーヌは断然の1番人気に推される。
オッズは1.6倍。

澪もここまでの支持を集める馬には騎乗したことはない。
ただ馬のほうはいつも通りで、悠然とパドックを歩いている。

「普通に走ってくれば勝てると思うよ!」
「ですね」

愛美と澪はそんな会話を交わす。

楽観はしているが油断はしていない。
ラモーヌの次の人気馬ダイナフェアリーやレイホーソロンも決して弱い馬では無い。
競馬に絶対は無いのだ。

そんな風に気を引き締めてレースに入る。
スタートは概ね普通。
中団の7、8番手の外側に位置する。

先頭を引っ張るのはマチカネエルべ。
そこにチュウオーサリーが続く。
更にその後ろにはダイナフェアリーが続く。

位置取りとしては良い。
外側でロスはあっても、むしろ動ける外側の方が都合が良かった。

後はじっくりとレースの推移を伺う。
ペースは早い訳ではない。
前残りも考えられるレース展開だから自分で動く事も考えながら追走していく。

そして3コーナー。
澪が少し手を動かすと、ラモーヌが反応する。
外側からグイッと加速して一気に3番手にまで位置を上げる。
それに合わせるように後方集団も追走して上がってくる。

3番手まで上がったまま4コーナーを回り直線へ。
直線に向いて馬場の真ん中を走るラモーヌに澪は鞭を一閃した。

そこからまた加速。
前を行くマチカネエルベとチュウオーサリーの外から被せるように並びかけ、4コーナーから直線に向かうところで一気に先頭を奪い抜け出す。

後ろから追いかけていったはずのレイホーソロンだが、差が詰まるどころか離れていく。
その後ろからポットテスコレディ、大外からは追い込んでくるマヤノジョウオ。

だが、それら全てを振り切ってゴール。
どこまで行っても追いつきそうにない・・・
危なげない完勝であった。

嬉しいと言うよりホッとしたと言う感じの澪。
ドバイ遠征で色々と何かを掴んだ感があって、帰ってきてからの自分の騎乗がスムーズになった気がする。
勿論、今回の勝利はラモーヌの力が大きいが、今まで以上に力を活かせる事はできたのは感覚としてあった。

「上手いなぁ・・・相沢を選んで正解だったな」

奥原も唸る。
関西ではリーディング2位。
全体でも5位に食い込んで来ているのは、相当実力を上げた証拠だった。
持ち味の柔らかさに所作のスムーズさが加わり、馬の負担になる事が無い。
それだけでなく、馬の気性を理解しながら上手く能力を発揮させているように見えた。

「彼女もすっかりトップジョッキーですね」
「そうだね・・・先行投資の甲斐があったかな」

愛美とそう笑い合いながら、奥原は澪の帰りを待つのだった。

澪にとってはデビュー2年目で初のクラシックレース勝利。
騎手デビューした時からの目標の一つだったことが、こんなに早く達成できたことの驚きと喜び。そして厩舎とオーナーへの感謝。
それを噛みしめながら、リュウノラモーヌをゆっくりクールダウンさせ、引き上げる。

満開の仁川の桜の下を通り、直線、メインスタンドの前をウイニングラン。
大歓声が澪とリュウノラモーヌを祝福した。

「いいねぇ。絵になるね」

奥原も喜びをかみしめながらその瞬間を眺めていた。

「やりました、先生!」
「よくやった。おめでとう、それにありがとう」

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