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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 102

「あの馬はまだ成長途上だ」

確かにデビューが遅く、去年からようやく本格化した所だ。
その祐志の言葉通り、寛子や澪からも『まだ成長している』の声もあった。
何より、ドバイは砂漠の国。
苦手な雨の心配は無い。

「気楽に走ってこい」
「はい!」

仁藤に送り出される澪。
シロノライデンの成長を感じているのは仁藤も同じだ。
最高潮だった天皇賞秋以降、かなり落としていた調子も回復。
今ならいい勝負はできる筈と見ていた。

それにスターライトブルーの勝利が大きい。
この馬場に苦労していない所を見ると、シロノライデンも走る可能性は高い。

そのシロノライデンと戦うトリプティク。
騎乗するのは何とシャロンだった。

「アイツはラルフが育成担当してな・・・そこからアイルランドの厩舎に入ったのさ」

ヘンリーがそう言うのに驚く樹里だったが、ならば祐志の繋がりでシャロンに騎乗依頼が来たのも分かる。
確か、事前の調教もブラウンウッド厩舎のスタッフがしていた気がする。

「今、移籍先を探していて、このレースがその品評会でもあるのさ」

海外の方が日本よりも馬の移籍に寛容ではある。

もちろんシンボリルドルフのような騒動がないわけではないし、大和田のような問題あるオーナーはチラホラいるのだが、馬のベストをより考えているからこそ、という見方も強い。
他のプロスポーツにおいても海外のほうが移籍が盛んだからかな、とは祐志の言葉である。

「まあスターライトブルーなんかも今の走りを見た海外のやり手がオファーを出しに来るかもしれんよな、ユーシ」
「それもあるけどセシリーがまずウチに欲しいって言いそうだな」
「今のところは全く考えてないわね」

そんな風に樹里が笑う。

そして、ドバイシーマクラシックが始まった。


スタートしてシロノライデンは定位置の最後方。
その隣にはトリプティクがいる。

先頭集団はメインスタンド前を走り、第一コーナーへ。
アメリカ勢が先頭集団を形成し、ヨーロッパ勢が中団に位置すると言ったレース展開となった。
スターライトブルーで作ったドバイターフのペース程早くは無いが、距離の割には少し早い体感の澪。
だがアメリカ勢の怖い所は、このペースでも止まらないと言う事だろう。
だから余り体感に囚われると仕掛けを間違い兼ねない。

隣を見ると、シャロンとトリプティクはきっちり折り合っている。
目が合うとシャロンが笑う。
その顔から人馬が抜群にフィットしているのが読み取れた。

緩やかな2コーナーを抜けてバックストレッチへ。
ここから短い直線を走って三角コーナーに向かう。
やや早めのペースで各馬殆ど折り合いもつけている。
流石は名馬と名手揃いと言った所だ。

淀みなく流れる馬群が三角コーナーに入っていった。

まだまだ馬群はほぼ一塊。
その中で一番最初に動いたのはスリップアンカーだが、そこまで大きな動きではない。
シロノライデン、それにトリプティクは最後尾でまだ動かない。

完全に直線勝負だ。
中団のストロベリーロード、バイアモンの鞍上の手が動く。
シロノライデンは大外。ここでもいつも通りを貫く。

3コーナーに入って更に忙しく動いているが、シロノライデンはまだ動かない。
内側には同じく動かないトリプティク。
少し馬群が長くなりつつ、4コーナーから直線に入っていく。

東京コースより長い直線。
スリップアンカーとゲートダンサーが競り合いながら先頭に立つ。
その2頭に中団からストロベリーロードやバイアモンが襲い掛かる。

そして大外を回ったシロノライデン。
澪が鞭を振るうと、重戦車が唸りを上げる。
豪脚で10頭程を一瞬でごぼう抜きして残り200m・・・
そのまま突き抜け、バイアモンを交わす。

そして先頭に追い縋っていたストロベリーロードを一気に交わす。
残りは100m程。

スリップアンカーが競り合いから抜け出し、失速したゲートダンサーをシロノライデンが抜き去る。
だが、その時・・・
内側からもゲートダンサーを抜き去った馬がいた。
トリプティクだ。

シロノライデンと同じく、驚異的な末脚でごぼう抜きしてきたトリプティク。
その2頭が内と外からスリップアンカーに襲い掛かる。

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