Rebuild〜女ふたりで世界を変えよ〜 4
エリックが優しくキャロラインを抱いたままベッドルームへ移動する。
「よかった。君がお父さんの後を引き継いだ時はどうなるかと思ってた」
「ウルヴズを手放すことなんてしないわ。私の大好きなチームだもの…あなたと同じくらいね」
「ハハハ、それなら、当然だね」
エリックが笑いながらキャロラインの額にキスを落とす。
彼の手はゆっくりとキャロラインの身体に巻かれたバスタオルを外していく。
「私と同じくらい、ウルヴズを愛している人と一緒に、これから頑張っていくわよ」
「そうか」
高らかに宣言するキャロラインの唇をエリックが塞ぎ、その手は全身をくまなく愛撫していく。
唇を離すとキャロラインの甘い声が部屋に響いた。
交渉日当日―
「なかなか決まってますね」
「いやぁ、滅多に着たことないですよ、もう」
エマは仕事でも着たことのないようなスーツ姿でシーウルヴズの球団事務所に現れた。
それだけ大事な役目が待っているのである。
「彼は私たちがオーナーとGMだって知ってるんですかね」
「さあね」
カルロス・メンドーサはキャロラインの父が設定した交渉には姿を現さなかった。
しかし、今回キャロラインの右腕であるGM補佐のエミリー・ワトソンの要請には応えたのである。
ガチャリ―
応接室のドアがゆっくりと開く。
浅黒い肌の大柄な男が中に入ってきた。カルロス・メンドーサ。
「んっ!?」
エマとキャロラインの姿を見て、一瞬驚いた顔をするメンドーサ。
しかしその顔はすぐに穏やかな表情に変わる。
「ずいぶん若いフロントになったんだな」
「ケイシーの娘のキャロラインです。こちらは新しいGMのエマ・ラザフォードさん」
キャロラインに紹介されたエマはペコリと頭を下げる。
「よかったかもしれない…前よりいい話ができそうだ」
メンドーサは穏やかにそう言った。
目の前にいるのはチームの大エース。
エマの心臓はバクバクと大きく鼓動していた。まさかエースの彼と相対する立場になろうとは。
「シーズンお疲れさまでした」
「ああ、正直早すぎるけどな」
「先に結論を言ってしまう形になりますが、ウルヴズにはあなたが最も必要な存在です。あなた無しではウルヴズは勝てない」
「それじゃ駄目だとは思ってるんだがな」
エマが口を開く。
「今シーズンのチームの雰囲気は…どうだったんでしょう」
「正直心地のいいものじゃなかったな」
チーム再興を急いだキャロラインの父ケイシーは昨年のオフに実績豊富なベテラン選手を1年契約、2年目以降は球団オプションという形でかき集めるように獲得した。
しかしそのほとんどはまるで機能せず、開幕早々に故障離脱したり起用法をめぐって首脳陣と対立したりでチーム低迷の原因を作り上げてしまったのだった。
「自分最優先の年寄りなんていらないんだ」
メンドーサは言う。
「昨年獲得した彼らに関しては、誰一人とも再契約は致しません」
「ああ、俺もそれがいいと思ってる」