PiPi's World 投稿小説

アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

の最初へ
 71
 73
の最後へ

アイドルジョッキーの歩む道は 73

直線の立ち上がりと共に先頭に並ばせる碧。
ここからの直線は長い。

じわりじわり抜きながら残り300mで首差の先頭。
後方からは有力馬が追い上げてくる。

しかしここからが真骨頂だ。
碧はまだランドマインタルトを追っていない。
そしてこの場面でようやく最初の鞭。
2番手を1馬身突き放して残り200mまで来た。
逃げ馬は馬群に沈み、後ろの馬も2馬身程度まで迫ってきていた。
だが、ランドマインタルトの脚色は衰えない。

府中は開幕週の良馬場。
綺麗に生えそろった芝で、平均ペースの先行2番手なら前残りは当然。
切れ味のあるディスコカンパニーとて、ロスの多い外を回ったら直線の長いコースでも苦しい。


「またしても豆州湊旋風!オークスに向けて新たなヒロイン候補が誕生しました、その名はランドマインタルト!」


「いやー、強いなぁ、美月ちゃんの言った通りだ」
2着ノーブルグレイスの鞍上、山辺裕樹がお手上げといった表情で碧のところに並んで引き上げる。
そこに僅差の4着だったマイティコサージュと美月もやってきた。

その後ろには3着のディスコカンパニーと野川の姿があった。
彼は馬の鬣を撫でながらねきらう笑みを浮かべていた。
何でもない風景だが、碧は一瞬背中がぞわっとする悪寒を感じてしまったのだ。
その野川の薄い笑いは一見優しげに見えるが・・・
碧から見れば悪寒しか感じない。

ふと地元で余り仲の良くないと言うか、碧が目の敵にされている前岡が野川を評していた言葉を思い出す。
野川は大レースを勝つ為に、ステップレースでは相手の手の内を探るような事をする。
そして嫌らしいぐらい緻密な戦術で本命のレースを制するらしいと・・・
前岡の口振りから、豆州湊の全てのジョッキーから嫌われてる様子が見て取れたが、そんなもの今の野川にはどうでもいいのだろう。

それに彼にはオークスで更なる有力馬に乗るからこそ、このレースは捨てても惜しくない訳であった。
全くもっていやらしい。

碧は山辺や美月に返礼して検量所に向かう。
どうであれ、勝ちは勝ちだ。
それを分かち合う仲間が待っているのだ。


次の週。
春の天皇賞で諸澄舞が大金星をあげた。
エクセレンスギアでの制覇である。
これでダイヤモンドステークス、阪神大賞典と長距離3連勝。
そして舞もG1初制覇だった。
これには黒崎厩舎も湧き、碧もダービーに向けて弾みになる気がしたのである。


そして週が明けて5月。
地元豆州湊ではクラシック二冠目の伊豆つつじ賞と豆州湊賞がある。
どちらも2000mと一冠目より400m伸びている。
ダービーよりもこの距離で勝つ馬の方が大成すると言われているぐらい重要なレースだが、今回のブラックドラゴンとジェイカーマインにとってはそう難しい相手もいない。
一冠目を制したジェイカーマインは距離的な問題から、ここを回避して短距離路線へ。
これも予定通りである。

レースは、伊豆つつじ賞はブラックドラゴンの圧勝。
三冠目に王手となった。
ジェイカーマインも豆州湊賞を快勝してダービーへ。
2頭共にレース後も元気であった。

地元の三冠独占が見えてきたが、紗英は「今年のラインナップならできて当たり前」と瑞穂のインタビューに答えた記事が大きく出回る。

「言うなぁ、姉貴」
「こんなに強気な先生は初めて見たかもです」

短距離路線を進むジェイアルトゥーベには中央のサマースプリントシリーズを歩ませる計画が出てきた。
地元の短距離戦では目下敵なしで、函館スプリントステークスかCBC賞を狙う計算だ。

5月は府中でG1レースが続く。
ジェイマリーナがNHKマイルC、ランドマインタルトがオークス、そしてジェイエクスプレスが日本ダービー。

SNSでこの小説を紹介

スポーツの他のリレー小説

こちらから小説を探す