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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 71

「新五郎先生はね・・・アレの本性を見抜けなかったし、死ぬまで騙されてたわ・・・まぁ、新五郎先生だけじゃなく殆ど全員だけどね」

美智子はそんな事を碧に語る。
先代黒崎新五郎と野川賢人は理想的な師弟関係だった。
ただ、黒崎新五郎が野川の才能を愛する余り、本性を見誤ってしまったのだ。
故に野川に否定的な木原洋介は厩舎を出ざるを得なくなって独立。
当時は彼の方が悪者扱いだった。
そして女達も野川に翻弄された。

そして黒崎新五郎急死の折りに野川は中央へ。
更に野川にそそのかされた厩務員達が大量離脱して紗英を苦しめた訳だ。

「フローラステークスではアレの持ち馬ディスコカンパニーが本命候補・・・碧ちゃんには何としても勝って欲しいの」
「それを聞いた以上、負ける訳には行きませんからね!」

余計に力が入る碧。
ディスコカンパニーは前走フラワーカップで3着、もともと良血馬で注目を集めていた馬で人気必至だろう。
一方ランドマインタルトは500万下特別を勝っただけでそこまでの人気は出ないはず。
それも碧にはプラスになる。


「………どうしよ、これからどう付き合っていったらいいんでしょう」
「とりあえずあの人の本性だけは知っておいてね」
「はあ…」

久しぶりの府中遠征。
そこで会った美月に野川の過去話を振った碧。

流石の野川も舞や美月には手を出してないようだが、隙を見せたら狼になりかねない男だ。

「私は凄くいい人って思ってたけど、舞ちゃんは生理的に受け付けないって言ってました」
「あー、舞って勘が鋭そうだもんね」

何となくだが、舞の勘の鋭さは分かる気がした。
兄の巧もそうだが、本能的に察知してしまうような雰囲気があの兄妹にはある。

「その舞ちゃんなんですけど、来週エクセレンスギアで天皇賞に乗るんですよ!」
「おっ、お兄ちゃんが乗るんじゃないんだ!」

糸居調教師も思いきった人選である。
まあ兄の方は騎乗依頼殺到だから、要はあぶれたから舞と言う話かもしれないが。

「あの話聞いたら、野川さんに依頼とかじゃなくて良かったですね」
「本当にそうだけどね・・・悔しいけどあの人、凄く上手いわね」

そんな美月もマイティコサージュでフローラステークスに参戦する。

「美月ちゃんもお手柔らかにお願いね」
「私の仔は3着に入れたらラッキーくらいなので」
マイティコサージュは未勝利を勝ちあがったばかりでの重賞挑戦である。

その日の第3レース、ダート1600mの3歳未勝利戦。
野川が1番人気、美月が2番人気、碧が3番人気の馬に騎乗していた。

そこで見たのは、野川賢人が上手いと言う事だった。

天才諸澄巧は言うなれば天才である。
鋭い勘と卓抜した閃き、そして全てを俯瞰できる視野と、まさに天才としか表現しようがない。

野川は逆に秀才タイプだ。
しっかりした理論と技術がハイレベルであり、レースを組み立てていくように騎乗する。

碧から見れば諸澄巧は手の内の分からない恐怖感はあるが、野川にはそれが感じない。
ただ、そのレースの組み立て方が相手の嫌がる事を分かってやってるような不快感がどこかにあった。

このレースも野川がきっちりと他の有力馬に隙を見せず勝利。
嫌らしさや不快感はあるが、野川と言う男を理解できるレースだった。


レースが終わると周囲ににこやかに話す野川。
あの愛想の良さを見ると酷い人間に見えないらしいし、若手の中には信奉者もいてるらしい。
全くもって厄介な相手だ。
ただ、碧や黒崎厩舎の面々に接触しようとしないのは、やはり思う所あるらしい。

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