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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 67

しかしここでジキスムントと野川が動いた。
先頭に並びかけると、一気に追い越していく。
つまり、勝負に出たのだ。

野川が動いた事で一気に流れが変わる。
タキノゴールドがそれに追走する構えを見せ、中団の有力馬も動き出す。
碧も動かざるを得ないが、これは想定内である。
4番手を維持しながら4コーナーに入るが、もう中団はジェイエクスプレスの真後ろまで迫ってきていた。

ヴィングトールの動きは碧から見えない。
見えない事が逆に警戒心を大きくするが、考えすぎても仕方ない。
4コーナーで碧も決断して手を動かす。
それだけでジェイエクスプレスも理解し、加速し始めたのだ。

先頭に躍り出るジキスムントにタキノゴールドが並びかけていく。
ジェイエクスプレスはその外に被せ発進態勢。
最内のマックスラナキラもまだ手ごたえが残っている雰囲気だ。

馬群が凝縮されて4コーナーを回る。
いち早く動いて先頭に出るジキスムントだが、ジェイエクスプレスはあっさり並んで交わす。
マックスラナキラはもう一度先頭を狙わんばかりの脚色、ワイズフォーミュラは馬群の間隙を縫って進出してくる。

そして…
1頭だけ離れた大外からヴィングトールが追いこんできた。

先頭に躍り出たジェイエクスプレスは予定通り。
だが流石はG1馬、ジキスムントが巻き返してくる。
これに中団から伸びてきたワイズフォーミュラが絡み、3頭並んでのデッドヒートとなった。

ジェイエクスプレスがややリード。
手応えは抜群だが、ジキスムントも粘り続ける。
ワイズフォーミュラもいい脚なのだが、この2頭の粘りで交わすには至らない。

中山名物の急坂もものともせず3頭の叩き合いが続く。
残り100m・・・
ファンのどよめきが上がるが、それは彼らの後ろに対してだった。

1頭だけ次元の違う末脚で大外を駆け上がっていく黒い馬体。
まさに黒い稲妻と読んでいい走りで先頭集団を残り50mで差しきる。
圧倒的末脚・・・
これには碧も背筋が凍り付く思いだった。

一冠目皐月賞は、雷神ヴィングトールが制覇。
碧にとっては2回目の完敗であったのだ。

戦前から距離も考えたら不利なのは分かっていた。
だが、ここまで苦も無くやられると笑うしかない。
相手が強かった・・・
そうとしか言い様が無いだろう。

「おつかれさま、いいレースだったわよ」

紗英もそう言うしかないのだろう。

「ダービーではもっといい勝負ができると思います」

ショックだが、絶望的でもない。
今日の敗戦で、距離が伸びれば逆転できるような印象を持てた。
碧の脳裏にあるのは、彼女が生まれる前の89年のアメリカ三冠戦。
二冠を制した黒い帝王を最終戦で黄金の貴公子が競り勝った一戦。
そう、距離はジェイエクスプレスと碧の味方になる筈だ。

こうして一冠目は敗戦となったが、収穫も小さく無かったのであった。



「まぁ、オレとしてはさ・・・野川のヤローを負かしただけで気分いい訳だ」

そう言いながらバックから碧を突くのは龍也。
彼はご機嫌であった。

「もう、気にしてないって」
「オレがアイツを気に食わないだけだ」

尚樹に突かれる紗英がそう言うが、龍也の鼻息は荒い。

「手を出した女に責任持たないなんてクソヤローだ」

彼も碧以外にも手を出しているが、思う所はあるのだろう。

「姉ちゃんや里穂に手を出したのは別にいいが、美波を孕ませて逃げた男だぜ」
「えっ!?、美波さんに赤ちゃん!」
「あ、昔の話だし・・・もう気にしてないからさ」

龍也に寄り添う茜がびっくりした声を上げるが、尚樹に寄り添う美波はそう言い笑う。
それは吹っ切れてる笑顔だ。

「まっ、あたしに言わせれば、龍也くんや尚樹くんは愛すべきクソヤローだよ」
「褒められてるのかそれ」
「うん、きっと褒められてるよ」

男二人はパートナーを突きながら軽口。
勿論パートナー達はそれに加わる余裕はなかった。

「いいっ、龍也さんっ、それいいっ!」
「尚樹っ、激しいっ、激しいわっ!」

二人が喘ぐ。
紗英も悦びの声、碧も男慣れしてきて悦びの声を出す。

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