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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 66

まあ、他所の事より自分の事だ。
合図がかかり、ジェイエクスプレスは早い順番でゲート入り。
全ての馬が比較的順調に入ると、ゲートが開く。
いよいよクラシック第一冠目、皐月賞の始まりだ。

先手を取ったのは予想通りマックスラナキラ。
タキノゴールドがそれに続く。
3番手は発汗が気になったジキスムントだが、かかってる様子は無く予定通りの位置取りだろう。
それに続く4番手がジェイエクスプレス。
ワイズフォーミュラとナルトブレイザーは中団あたり、ヴィングトールはいつも通り後方集団でレースは始まった。

全てのジョッキーがヴィングトールと諸澄の動きに神経を使っているのは間違いない。
騎乗停止明けで無茶はしないだろうが、何しろ天才諸澄巧である。
どんな戦術を取ってくるかは予想もつかない。

碧とジェイエクスプレスを含む先頭集団としては、このままヴィングトールが来る前に先行抜け出しを考えているだろう。
1コーナー入った所で平均ペース。
先行馬としては理想の展開だった。

明確な逃げ馬がマックスラナキラしかいなく、他が競り駆ける様子も無いのは戦前からも予想できた。
当然、諸澄もそれを分かって戦術を組み立てているだろう。
もう1人気になるのはジキスムントと野川だ。
どうも動く気配がありそうなのだ。

碧はその様子を伺いながら考える。
今動けばベースは早くなる。
それは先行馬不利になりかねない。
なら何故このタイミングで逃げ馬に競る必要があるのだろうか・・・
彼も色々因縁あれど名手の1人だ。
レースを勝つ戦術を組み立てて無い筈はない。

彼の背中を見ながら考える碧・・・
2コーナーにさしかかる辺りでジキスムントが動く。
先頭に並ぶ勢いで前に出していった。

ここで碧は1つの仮説に行き当たる。
野川がマークしてるのは、ヴィングトールではないのではないかと言う疑念だ。
今の所考えられるヴィングトール攻略法は先行早め抜け出しだが、これは早すぎる。
ならば野川はヴィングトールそのものをマークしてないのではないかと思ってしまう。

マークしているのがヴィングトールでないのなら、考えられるのはただ一つ。
完全にこちらを意識して動き出したのだろう。
…となるとこちらの戦法も読まれたのか?
碧はジキスムントの後ろにそっとつけて少しだけ仕掛けてみた。
ヴィングトールのことを考えると早めに脚を使うことはしたくない。

すると、ジキスムントの鞍上・・・
野川が動きかけて止まる。
やはり予想通り。
彼が意識しているのはヴィングトールではなくジェイエクスプレスだ。
それが私怨なのか戦術なのかは分からない。
分かっているのは、野川がジェイエクスプレスをマークし、潰しにきていると言う事だ。

レースを捨ててまで捨てている可能性はジキスムントの格からすればありえない。
なら、ジェイエクスプレスの脚を使わせてしまおうと言う戦術の可能性が高い。
ジキスムントが行けば、ヴィングトールの事を考えたとしても動かざるを得ない。
動かなければヴィングトールとの末脚勝負と言うやりたくない事をせざるを得ないからだ。

しかしまあ、野川賢人と言う男は呆れるぐらいに曲者だ。
恐らくコントロールしにくい諸澄とヴィングトールを相手するより、近くにいて若く経験も薄い碧を相手すれば、あらかたの有力馬はコントロールできる訳だ。
やり方が称賛していいぐらい悪辣で、碧も笑うしかない。

後方のヴィングトールはまだまだ余裕というか、あちらもまたジェイエクスプレスやジキスムントを意識してるのか。
諸澄は当然手の内を明かさないから困る。

ならばギリギリまで待つしかない。
たとえ仕掛けのタイミングが遅れたりズレたりしても、持ちたるものはジェイエクスプレスはジキスムントより上だと碧は思っている。
最後は力でねじ伏せればいいのだ。

勝負所、3コーナー。
マックスラナキラの逃げはまるで精密機械。
まったくの平均ペースで流れていた。

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