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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 65

地下馬道を飛び出し、ジェイエクスプレスが駆ける。
赤みがかった栗毛の馬体がターフに燃えるように映えた。
軽やかな動きに碧の自信も増すばかりだった。
対するヴィングトールの動きも軽く流しただけなのに、圧倒的なまでの存在感を放っていた。
ここにはジェイエクスプレス、ジキスムントと言うG1馬がいるのだが、無冠のこの黒い雷神が王者である事は一目瞭然と言うぐらい圧倒的な雰囲気であったのだ。

その王者を倒そうと狙っているのは碧とジェイエクスプレスだけではない。
朝日杯の覇者ジキスムントもそうだ。
前走スプリングステークスこそ負けはしたが、今日の出来は前走と比べ物にならないぐらい良い。
距離延長も全く問題がなく、碧にとってもヴィングトール同様に警戒せねばならない相手だ。

ジキスムントの父はダート主体のアメリカでは珍しい芝専門のスターホース。
現役時代はマイル中心に使われてきたが、産駒は幅広い条件で良績を残している。

鞍上の野川賢人はここ2年連続で関東地区のリーディング首位。
西の諸澄、東の野川と呼ばれる名手。
さらに野川は元豆州湊の騎手であり、その時の師匠は紗英の父だったのだ。

野川賢人は33歳。
今が最も脂の乗った時期だろう。
彼が中央デビューして三年。
三年にして頂点に立ったのは才能も半端ではないからだろう。
間違いなく野川賢人は、現役最強ジョッキーの一人であった。

だが、碧や黒崎厩舎にとっては因縁の相手だった。
紗英の父から息子同然に扱われ、いずれ黒崎厩舎を継ぐ者として紗英の婚約者だった時期もあった。
しかし、紗英の父が急死すると、黒崎厩舎を捨て去り中央に移籍してしまったのだ。
紗英は何も言わないが、実は当時からのスタッフの一人である里穂から碧も色々聞いていた。
爽やかな好青年に見えるが、かなりの女たらしで情も無いらしいと・・・

初めは美波と付き合ってたが、紗英が落とせると見ると乗り換え、それだけでなく里穂にも手を出したあげく、美波とも関係を続けてたと言う。
今この三人は尚樹の女になってるのだが、それと何が違うのだろうと碧も不思議に思ったが、尚樹とは情の有無の違いらしい。
いや、かつてそんな事があったから尚樹を三人で受け入れたような気がしていた。

同じように目的を達成する道具や欲望を満たす為の身体目的であっても、尚樹は彼女達を捨ててどこにもいかないと言う理由も大きいだろう。

因みに野川は一年前に元アイドルと結婚しているから、大したスケコマシである。


まあ、そんな厩舎としての因縁ある野川だが、実際会ってみて碧も余りいい印象は無かった。
同じ爽やかなイケメンでも諸澄の方が人間性の良さは見えるし、沢木学なんかは本当に心の中まで好青年だ。
かの強引かつ碧に敵対的な前岡ですら、野川より好青年に見えてしまうぐらい、本能的に野川の爽やかな笑顔が無理だった。

紗英や美波や里穂が一時期彼といい関係だったのは、よほどアレの具合が良かったのか今度聞いてみたい気はした。

しかし、野川の腕前は間違い無く一流だ。
そしてジキスムントは間違い無く強い。
因縁があろうがなかろうが警戒せざるを得ない。

輪乗りしつつジェイエクスプレスを宥めながら碧はやってくる他馬の様子を伺う。
ヴィングトールはまるで古馬かと思うくらい落ち着き払っているし、タキノゴールドやナルトブレイザーは徐々に気合が乗ってきている。
毎日杯を勝ったワイズフォーミュラもいい雰囲気だし、逃げ宣言している若葉ステークス2着のマックスラナキラもいい意味でテンションが上がってきている。

ジキスムントは1頭だけ離れた位置で佇んでいた。
黒鹿毛の馬体は物凄い発汗…ライバルではあるが若干心配になる。

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