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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 64

G1、その中でも選ばれたものしか出走できない牡馬クラシックの一戦。
パドックの空気も張り詰めたものを感じる。
しかしここで臆するような碧ではない。

ジェイエクスプレスは内めの偶数枠。
ヴィングトールは外の奇数枠。
枠では若干有利かもしれないがそれでどうなる相手ではない。

向こう側では諸澄が糸居と談笑している。
あくまであちらもいつも通りといったところか。
碧は気を引き締めた。

3番人気はスプリングステークスでヴィングトールの2着だった外国産馬ジキスムント。
3番人気は共同通信杯勝ちのナルトブレイザー、4番人気は弥生賞2着のタキノゴールドは幾度か対戦済みだ。
人気上位陣は安定した成績を買われての事だろうが、世間の印象はヴィングトール一強なのだろう。

やはりそのヴィングトールはパドックでも堂々としている。
大牧場が満を持して送り出し、名伯楽が育て上げ、最強の騎手が乗る。
全てが揃った勝つことを義務付けられた存在だ。
そして、皐月賞は最も速い馬が勝つと言われるレースである。
ヴィングトールの飛ぶような脚に死角は無いだろう。

それでも・・・
碧は勝負できると確信していた。
直線の脚での勝負は劣るが、スタミナ勝負に持ち込めば必ず勝機はあると思っていた。
先行して最後の直線までに突き放す。
シンプルだが、それが碧に取れる戦術で最良と思えるものだった。

パドックでは静止命令がかかり碧はジェイエクスプレスの元に向かう。
この日の為に渾身の仕上げをしてきた馬体は光り輝いて見えた。

「緊張してるか、碧」
「いえ、全然」
美波がちょっと硬い表情の碧を見てニコッと笑う。

「私は碧にここで勝って貰ってね・・・たっぷり尚樹くんに可愛がって貰いたいのよ」

小声でそう言う美波。
微笑む彼女の顔は女になっている。
元々良い仕事ぶりの美波だったが、尚樹に抱かれるようになってから更に磨きがかかってると言うか、モチベーションの上がり方が半端無い。
ある意味頼もしいとも言えるし、碧もよく理解できていた。

「私も・・・龍也さんにいっぱいして貰おうかな・・・」
 「ふふ・・・いい表情になってきてるわよ」

気持ちはそんな会話でほぐれた。
碧がそんな会話でリラックスしたからか、ジェイエクスプレスの歩様も落ち着いたいいリズムを刻んでいた。

「相手は強いけど、自信持って行ってこい!」
「はい!」
送り出す方も、出される方も、いい笑顔だった。

地下馬道を通ってジェイエクスプレスと碧は本馬場に向かう。
入れ込み過ぎないくらいのいい闘争心。
今日はいける!……碧は確信した。

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