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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 61

だが紗英は否定するように首を横に振る。
あの馬はあの馬、この馬はこの馬。
その力がそれに足るなら、やってみるのも1つの道だろう。

「まあ、クラシックの結果と状態見て考えるわ」
「流石姉貴、いいオンナになっただけはあるぜ!」
「バカ!、姉にセクハラする間があったら表彰式の準備でもなさい!」

バチンと弟の尻をはたきながらも、地元クラシックの勝利に嬉しさが込み上げてくる紗英だった。



そして次の週。
牡馬クラシック第一戦、豆州湊賞である。
このレースはクラシック第一戦だが、ここのレースを制した馬が古馬になっても活躍することから出世レースと言われている。
今回黒崎厩舎からは、ジェイカーマインを碧が、ジェイアルトゥーベを由梨が騎乗して戦う二頭出しだった。
どちらの出来も抜群と言ってよく、スタッフのどちらも勝たせてやりたいと言う意気込みが伝わってきそうだった。

ジェイカーマインには美波、ジェイアルトゥーベには里穂。
それぞれクラシック第1戦のため万全の仕上げを施してきた。

「ライバルが同厩舎ってのはキツいなぁ」
「理想は1着同着だね!」
「…勝つより難しいですね、それ」

人気も2頭で分け合う形。
ただアルトゥーベの方に距離不安があるせいかカーマインの方が僅かに1番人気となる。

激情で気ままに走るスプリンターがマイルまで持つのかと言う事を考えれば、この人気は順当と言える。

ただ贔屓ではなく里穂は里穂なりに勝機はあるとは思ってはいる。
ジェイアルトゥーベは父方のトウルビヨン系からスピード、母方のリボー系からスタミナを得ている血統構成。
只のスプリンターで終わる器ではない。
ただ、両方の系統共に気性がすこぶる悪いのが悪影響で出ているだけである。
まあ、それが大きな問題なのだが、普段からやんちゃで手がかかるが、寂しがりやで甘えん坊と言うジェイアルトゥーベが単純に可愛くて余計贔屓になっていると言う里穂の事情もある。
そして、いい意味で美波も里穂にとってライバルだからこそ勝って欲しいと言う個人的な気持ちもあった。

やがて、パドックで騎手が跨がっていく時間となる。

「うるさい馬だけど、よろしくね」
「はいっ、思った以上にいい背中ですよ!」

里穂に笑みを見せる由梨。
自信に満ちあふれた顔に里穂もホッとする。

(碧ちゃんが乗れないのは残念だけど、彼女が遠征してきててよかったかもしれないね)

徐々に闘志あふれあらぶってきたジェイアルトゥーベをなだめる由梨。
初騎乗ではあるがその姿はなかなか様になっている。

時同じくして碧がジェイカーマインのところにやってくる。

「さあ、今日もよろしくね」
「碧、やりづらくないか?」
「まったくないといえばウソになりますけど…やるからには負けませんよ」

碧の気迫も十分。
それに相手の手の内は分かっている。

そしてパドックから本馬場へ。
ほぼ一周するコースは、スタートしてすぐがスタンド前となる。
ジェイアルトゥーベにとってはそこが鬼門である。
そこで暴走させてしまったなら、碧は自分のペースでジェイカーマインを勝たせるだけだ。
総合力ではジェイカーマインが上だから心配はしていないが、単純なスピードだけならジェイアルトゥーベの速さは規格外なのだ。
まともに走らせれば、勝負は際どくなるだろう。

いよいよ合図がかかり、各馬ゲートに入っていく。
ジェイカーマインは素直に入り、ジェイアルトゥーベはいつも通り嫌がり、やっとの事で最後に収まった。
こんな状態でもスタートは失敗した事が無いから不思議な馬である。

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