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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 7

「お疲れ様」
出迎える紗英は感極まった様子だった。
さすがの紗英も今回は苦戦、敗北を予感していたらしい。

「よくやったよ碧、次は中央だ」
「ですね!」
美波は至っていつもどおり。碧の肩をポンポンと叩いて労う。

「あの…」
そこにもう1人、紗英と同年代くらいの女性が現れる。
「本当に皆さん、ありがとうございます」
彼女は浅岡樹里。
ジェイエクスプレスのオーナーである。

ぽっちゃりした品の良い女性で着物が良く似合う。
彼女はこの地方の大地主であり、近くの温泉旅館や飲食チェーン店のオーナーでもあった。
そして紗英の幼なじみである。

「いえ、こんな馬を任せて貰えて光栄ですわ、オーナー」

互いに調教師とオーナーの顔で挨拶し合う樹里と紗英。
仲が良い幼なじみでも、公式の場所では互いに弁えてる。
それに幼なじみとは言え、樹里が紗英に預けている馬は素質馬が多い。
樹里は数こそ少ないものの、安くない金額を出して素質馬を買っている。
地方で走らせるには高額な部類に入る。

その中でもジェイエクスプレスは別格だ。
正直、この馬を買うと樹里が言った時、採算性から紗英も中央所属を薦めたぐらいだ。
それでも黒崎厩舎に預けると言った時には嬉しい反面困惑した。

「黒崎先生が鍛え、北川騎手が勝利に導く・・・私はそれが見れて満足なんですよ」

確かに競走馬のオーナーは金持ちの道楽だ。
地方競馬としては道楽に金を出しすぎだが、浅岡家の財力なら問題無い。

ただそれなら中央に預けるべきだと言うのが競馬界に身を置く紗英の偽らざる心境なのだが、この幼なじみはそんな事を考えてないのは長い付き合いで分かっている。

「また後で北川騎手と一緒に来て下さい、黒崎先生」
「分かりました、オーナー」

お互いが笑顔でやり取りをしながら、表彰式と記念撮影に向かったのだ。


浅岡家は競馬場からすぐ近く、温泉街の外れにある。
和式の大邸宅で、牧場育ち故に家の広い碧すら圧倒される広さであった。
紗英と碧はその邸宅に入り、お手伝いさんに案内されて離れの樹里の私室に向かう。
私室とは言え、家一軒分の広さである。

「…なんか、すごいですね」
「私も、こんな友人がいるのがいまだに信じられないのよ」

2人がしばらく待っていると樹里とお茶とお菓子を持ったお手伝いさんが入ってくる。
「お待たせしました」
「いえいえ」
「今日のジェイエクスプレスのレースは素晴らしかったです。正直、私は今回は厳しいんじゃないかと思ってました」

勝って喜んでいるが、どこか抑制的である。
理由をどことなく理解している紗英が切り出す。

「私も苦戦は必至かと思ってたけど・・・馬が強かったわ」

プライベートの空間だから、幼なじみの間柄に戻って砕けた口調となる。

「だから、次は中央に挑戦させたいの」

オーナーの意向を確かめると言うのもあるが、どこか説得じみた口調だった。
樹里の方は暫く沈黙して、そして口を開く。

「どうしても?」
「どうしても、よ」

これ程の馬を持ちながら中央参戦に及び腰な樹里。
勝ち負けを意識してると言うより、彼女のは地元愛や仲間愛が強すぎる故の引きこもり発想なのだ。

「だから前々から言ってるでしょ、これは競走馬として、血統としての宿命だって・・・」

血統と血統を掛け合わせて競走馬を作り、レースに勝たせ、その血を後の世に繋げていく。
競馬サークルに居る者にとって当然の使命だ。
そして、ジェイエクスプレスと言う競走馬はもっと上のステージで活躍して、後世に血を残せる血統なのだ。

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