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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 51

今回は人気になると言う事なので二人共にメイクもばっちり。
かなり気合いを入れての中山入りだ。
ジェイエクスプレスは賢い馬で、このレースが普通ではないのを感じてるようだが、ややそわそわしても大人しく曳かれていた。

そして停止命令が出て、碧が乗ると・・・
そわそわも落ち着き、グッと気合いが入る。
歩様までキビキビとするスイッチの入りかたが、ジェイエクスプレスのいい所であろう。
本当にレースに関しては世話要らずなのである。

碧も若干の緊張感はある。
何せ客の入りと熱気が桁違いなのだ。
2歳馬とは言えG1と言う事もあって、他所の陣営も万全の仕上げで、どれもが全て良く見えてしまうのだ。

でも、この緊張感は嫌いでない。
そう感じる所が碧が大物所以である。

レースが近付き、パドックから地下馬道に入った頃には碧の顔も程よい緊張感で気合いの乗った顔にとなっていた。

「感じてる時の可愛い顔も好きだけど・・・碧はやっぱ馬上の顔が一番よね」
「あの顔なら抱かれてもいいわ!」

美波と里穂はそう言い合いながら本馬場へと駆けていく碧を見送ったのだった。

いざ本馬場へ。
経験したことのない大歓声が碧とジェイエクスプレスを迎える。
それでもこの人馬はいつもと変わらない平常心を保っていた。

(これならいける)
碧は返し馬のフットワークを見て、自信を持った。

スタンド前を通って待機所へ向かう。
どの馬も仕上がっていて、いい馬体だ。

「既に王者の風格って感じ・・・いやぁ手強そうだ」
「でも顔には負けないって書いてますよ、学さん」

待機場で碧に声をかけてきたのは、忍の弟の澤木学だ。
彼はランドバリオスに騎乗。
素質場を回して貰えるだけの実力を身につけてきていた。

「ごめん、碧ちゃんには興味無いんだ・・・ほら、あの人に勝たないと姉ちゃんに怒られるから」

学が視線を送った先は諸澄巧が鞍上で大レースにも関わらずリラックスしていた。
学の方は緊張感が顔に出ているが、こうやって冗談言えるだけの余裕はあるようだ。

「ほんと、学さんて忍さんが好きなんですね」

そう冗談ぽく碧が言えば、学は少し顔を赤くする。

「まあ、姉ちゃんは僕の憧れだから・・・諸澄さんが大嫌いな以外はいい姉だもの」
「何か徹底して嫌ってますよね、忍さんって」

学の方は後輩として諸澄に可愛がられているだけに複雑な心境なのだろう。
気になる話題だが、私語はここまで。
まあ、こんな話で互いに緊張はほぐれてきていた。

精神を集中させながらレースのときを迎える。
スターターが台の上に上がり、スタート台が上昇する。

スタンドから無数の手拍子。
そして生ファンファーレ。
テレビの前でしか味わっていなかった光景の中に、今は自分がいる。

「いい子だね」
相棒のタテガミを優しく撫でる。
この状況でも全く動じることはない。

元々素直で落ち着いた馬だったが、前走の敗戦を経てさらにどっしりとした感じがする。
2歳馬には見えない落ち着きで、早熟馬ではないのに一足先に大人になった印象だ。

ゲート入りもスムーズ。
そしてスタートも順調だった。

スタートして最初のメインストレートは中団につける。
先手争いは激しくなく、関西馬シャドーハイロウが平均ペースで引っ張る。
鞍上はこの道25年の関西のベテラン南原。
ダービーも制したG1常連ジョッキーだ。

シャドーハイロウは前のレースで条件戦を勝ってここに滑り込み。
人気は無いが前に行けば粘るレースをここまでしている。
ただ誰も動かないのは、人気馬が中団から後方に集中してる故の牽制だろう。

中団の碧の前には3番人気タキノゴールド。
横には2番人気ナルトブレイザー。
後方集団にはランドバリオスとグランドバスター。
特に隣で走るナルトブレイザーと諸澄巧は気になる存在だ。
気のせいかクラシックに向けて彼に品定めされているように感じた。

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