PiPi's World 投稿小説

アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

の最初へ
 48
 50
の最後へ

アイドルジョッキーの歩む道は 50

由梨の笑顔とは対照的に、碧の表情は冴えない。
だが、精一杯は乗れた。
クールダウン中も闘志がみなぎったままのクラウンジェネシスは、次のレースからはきっと生まれ変わったような走りになる予感はある。
鬣を撫でながら落ち着かせ、碧は由梨のテイエヌドローンに寄り添わせる。
こちらは疲労困憊。
全てを出しきったような感じで、あの荒れ狂ったのが嘘のように大人しくなっていた。

「追い過ぎて腕が痛い」
「碧、G1あるのにやりすぎでしょ!・・・まぁ、私も疲れたわ」

少し離れた所で舞と美月も何か話していたが、悔しそうな表情。
それはそれで彼女達の糧になるだろう。

そしてレース結果だ。
この順位で全てが決まる・・・
舞の4着と美月の3着は既に確定。
これで舞が72P、美月が70Pで確定。
5位以下を大きく引き離して、女のシリーズを際立たせる結果だろう。

残り2つは・・・
長い写真判定の結果、ハナ差でクラウンジェネシスが1位と言うのが掲示板に出た。

碧が84P、由梨が71Pで確定。
これでヤングジョッキーシリーズは優勝が碧、準優勝が舞、1P差で由梨が3位、4位の美月も1P差と女の熱い戦いで幕を閉じたのだ。

「北川くんっ、上手く引き出してくれたねっ!・・・本当にっ、中央で乗って欲しいぐらいだっ!!」
「有り難うごさいます・・・なんとか勝利できてホッとしました」

藤村調教師は大絶賛。
素質を認めていた馬を開花させたのだから、これぐらい賛辞を送ってもお釣りがくる。

「相原くん、よくやってくれた・・・まさか前でここまで粘れるとは予想外だったよ」
「いえ、先生・・・彼がここまで頑張ったのに勝たせて上げれなくて申し訳ありません」
「何言ってんだ!、上出来だよ、上出来!」

テイエヌドローンの調教師もご機嫌なようだった。
結果を見て悔しがった由梨のあれは本心だろう。

他を見ると、美月も誉められてホッとしていたし、舞は兄の巧がちょっと困り顔で慰めていた。

舞と巧、兄妹の様子をちらりと眺めながら碧は「あの人と一戦交えるつもりだったんだけどな」と心の中で思う。

「さ、集中集中」
この後はメインレースが待ち受けているのだ。

ホープフルステークス。
もともとは有馬記念当日の2歳オープン特別だった。
それが重賞に格上げされ、今年からはG1になって1年の最後を締めくくるレースになった。

碧の相棒はもちろん、ジェイエクスプレス。
東スポ杯2着の後も順調に調整され、万全の体調で挑む。

しかも今回はヴィングトールの不参加によってジェイエクスプレスが一番人気である。
とは言え、ポープフルステークスがG1になった事で、朝日杯が次代の中距離馬の登竜門となり、このレースが長距離馬の登竜門となった感じである。
つまり、ジェイエクスプレスが一番人気とは言え、中央の馬もクラシック候補生揃いなのである。

「気楽に応援させて貰うね!」
「地方と女の意地って奴を見せてくるわ!」

乗り馬が無く観戦モードの由梨に、碧は力強く答える。
あんまりこう言う言い方はしないのだが、あえて気合いを入れる為に口に出す。

「碧さん、悪いけどお兄ちゃん応援しまっす!」
「私も・・・舞ちゃんと応援です、すいません・・・」
「当然、当然よ・・・でも今回は私が勝つけど」

舞の兄、巧の馬はナルトブレイザーと言う関西馬だが、わざわざ巧に騎乗が回ってきた素質馬だ。
夏の札幌2歳ステークスで重賞勝ちし、休養十分で挑む2番人気の馬だった。

馬体重もプラス2s。
スッキリと見せていて好走間違いなし、のオーラを出している。

ナルトブレイザーで札幌2歳ステークスを勝ったのは栗東の中堅騎手・椎名正樹。
彼は京都2歳ステークスを勝ったタキノゴールドを選び、こちらが3番人気。

以下、デイリー杯2歳ステークスの勝ち馬ランドバリオス、東スポ杯4着のグランドバスターと続いている。
いずれも栗東所属の素質馬たちだ。

「さすがにG1ともなると雰囲気違うなぁ」
「いつもテレビで見てるだけだもんね」
ジェイエクスプレス、今回はパドックで2人引き。
担当は美波と里穂だ。

SNSでこの小説を紹介

スポーツの他のリレー小説

こちらから小説を探す