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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 49

後続を引き離しにかかる由梨、追いかける2番手の2頭の方が手ごたえが怪しくなる。
それを見てまずは美月が動く。
バテ気味の先行2頭をかわし由梨の背後に迫る。

舞と碧は同じタイミングで一気にまくる。
馬群の外からポジションを上げ、4コーナー手前で碧はステッキを一発入れた。

かなり早い仕掛けになるが、この馬の能力を考えたら妥当だろう。
ただ鞭に応え加速はするが、まだ遅い。
碧はあえて馬ごみの中に突っ込ませてみる。
そうやって鞭と手綱で、まるで直線最後のように追い続けると、やっとのことで加速して中団に取り付いて最後の直線を迎えた。

ライバル達は前の方だった。
先頭を行くのは由梨のテイエヌドローン。
合わせるように美月のスティールブロウ。
スティールブロウも後方からの競馬でバックストレート辺りから先団に取り付いたが、脚色は衰えていない。
そして3番手からやや位置取りを下げて様子を見ていた舞のセットアングルが2頭のすぐ後ろ。
碧のクラウンジェネシスはそれより5馬身程後方まで来ていた。

碧は兎に角、鞭を振るい手綱を押すように追う。
4コーナーからずっとこの状態で、追うのが苦手な碧にとって苦行だったが、それでも追い続ける。
跳びの大きなクラウンジェネシスは加速は遅いが、加速し出すとぐんぐん速度が上がり続けていた。
そして中山名物の直線の急坂・・・

多くの馬の脚が止まっていく中、クラウンジェネシスの脚は更に加速していく。

そして残り100m。
碧は先頭を捉えた。
最内はまだ粘って先頭のテイエヌドローン。
その横には追いすがるスティールブロウ。
更にセットアングルがその外。
碧はスティールブロウとセットアングルの間に空いた隙間にクラウンジェネシスを捩じ込んだ。

4頭の・・・
いや、女4人の叩き合い。
クラウンジェネシスの脚色が一番良いが、テイエヌドローンは狂ったように先頭を守り続ける走りをしている。
スティールブロウは馬体を合わせてからまた持ち直し、セットアングルはまだ余力一杯だ。
4人の意地の張り合い・・・
勝負がどう転ぶか誰も分からぬ中、碧は鞍上から変化を感じていた。
ここにきて、クラウンジェネシスに闘志の火が灯ったのだ。
馬が走る気に・・・
いや、勝負して勝つ気になってきていたのだ。

こう言う馬の闘志を感じるとゾクゾクしてくる。
碧は自分の疲れを忘れ、更に追う。

闘志で更に加速したクラウンジェネシスは、まず美月のスティールブロウを抜く。
スティールブロウもまだ巻き返そうと闘志はあったが、流石に脚の限界だったようだ。

そして舞のセットアングルに並び、抜く。
これは絶対能力的な加速の差。
セットアングルに巻き返す脚は無い。

更に由梨のテイエヌドローン。
テイエヌドローンは首を左右に揺らし、既に限界であるようなのに脚色の衰えは無い。
狂ったように必死で走り、涙まで流していた。
極端なレースしかできない馬だが、誰よりも負けず嫌いなのだろう。
今までの届かないレースは彼なりに理解し、そして悔しいと思っていたのだろう。
故に逃げた今日は鬼気迫るばかりに必死。
そして鞍上の由梨も、その必死さに応えるように全力で追っていた。

碧とクラウンジェネシスが迫ってきたのを感じた由梨が鞭を腕ごと回して叩く。
風車鞭・・・
パフォーマンス的なものでもあるが、これで気合いの乗る馬もいたりする。
気難しいテイエヌドローンには逆効果と思いきや、限界の筈のテイエヌドローンはそれに応えた。
大外を一気に伸びて突っ込んでくるクラウンジェネシス、誰の目から見ても差し切るのは明らかに思えた。
しかし…

クラウンジェネシスがテイエヌドローンに並ぼうとした瞬間、テイエヌドローンはもう一度差し返そうと首を伸ばしたのだ。
それがゴール前。
碧は勝ったと確信して内を見たら、ニヤつく由梨の姿があった。

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