PiPi's World 投稿小説

アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

の最初へ
 46
 48
の最後へ

アイドルジョッキーの歩む道は 48

普通のテン乗りなら何度も経験はあるが、このシリーズの場合兎に角馬の情報が少ない。
乗って感じるしかない。
そして乗った感じは悪くない。
しかしどこか気合いとか言うものを感じない。
素直とか大人しいとかじゃなく浮世離れした感じ。
多くの馬が感じている走る喜びとかは、この馬には全くなさそうな感じに見えた。
それが優等生らしさに見えたのかもしれないが、ズブさの元でもあるかもしれない。
由梨ならこんな馬に闘争心を持たせるのは上手いかもしれないが、碧は若干苦手かもしれない。
逆に乗った瞬間から騒がしい由梨のテイエヌドローンを見て上手くいかないものだと苦笑しかけてしまったのだ。

美月のスティールブロウも落ち着きがなさそうで、彼女が割と必死に宥めている。
舞のセットアングルは癖がなさそうで、彼女はちょっと気楽そうにしていた。

まぁ、4頭共に実力はありそうだから後はレースに入ってからだろう。
そして、合図が出て碧達は地下馬道へと入って本馬場へと向かったのだ
朝一からさらに観客が増えている。
中山特有のおかしなヤジもよく響く。

地下馬道からダートコースを横切り観客の目の前を駆け抜けていく。
クラウンジェネシスは相変わらず無反応に近い、ただ淡々と走っているだけみたいな感じ。
これだとテイエヌドローンやスティールブロウとは言わないけど多少やんちゃな方が面白いなんて考えてしまう碧。

至って落ち着いたままスタート直前。
クラウンジェネシスは最内1番枠、真っ先にゲートに収まる。

最後のゲート入りはテイエヌドローン。
そして一斉にスタートが切られた。

ロケットスタートを決めたのは、なんと最後方のレースしかできなかったテイエヌドローンだった。
しかも超絶と言っていいぐらいのスタートな上、グイグイ加速していく。
スタンド前に来た辺りで2番手に2馬身の差をつけていた。

舞のセットアングルが3番手と絶好の位置。
美月のスティールブロウは行き足がつかず後方からの競馬。
そして碧だが・・・
スタートしてもスティールブロウより行き足がつかず、クラウンジェネシスは最後方スタートとなってしまったのだ。

これは想定外だった。
恐らく舞以外はみんな想定外に戸惑ってる事だろう。
想定外に少し焦りながらも、碧は意識を集中してレースの組み立てを考え直す。

クラウンジェネシスは加速するまでが遅いだけでスピードは持ち合わせている。
それとステイヤータイプでスタミナには自信がある。
ならば仕掛けを早めてスタミナ勝負に持ち込むのが順当だろうか・・・

予定外なのか、果敢に逃げたテイエヌドローンだが強気に行き過ぎたがゆえかかなり引っかかっている。
さすがの由梨も手綱を押さえている。
果たしてこれで持つのかどうか。

折り合いがついてペースが落ち着くと後方各馬は苦しい。
碧もそう考え始めた矢先に、レースはさらにカオスを極めることとなる。

クラウンジェネシスの一歩手前にいたカントリーレジーナが向こう正面で一気に動いた。
鞍上は金沢所属の原田悟。
それと同時にスティールブロウの隣にいたネイチャーパワーが動いた。
こちらは美浦所属の吉野啓介。
この2頭が先頭を行くテイエヌドローンまで並んでいく。

迫ってくる2頭に、テイエヌドローンが嫌がるように加速して突き放す。
これは暴走・・・
暴走とも言えるが、だからと言ってテイエヌドローンが潰れるとは限らない。
馬ごみを極端に嫌う性格だが、実力は一級品なのだ。
むしろこのまま押しきる可能性だって否定できない訳だ。

だからこそ仕掛け所は大事だ。
逃げるテイエヌドローンはハイペースを作りながら、2位以下を3馬身程置き去り。
迫った2頭もハイペース勝負は避けたいようで、2番手3番手に控えたようだ。
私なら競りかけたら意地でも食らいつくんだけどなぁと碧は地方と中央の若手二人を見ながら思う。
この二人、共通して詰めが甘い。
センスはいいもの持ってるのに、詰めの甘さで成績を出せていないように感じていた。

碧はその二人から意識を離し、当面の敵を観察する。
舞は好意をキープして動かないが、これは作戦として順当。
美月も折り合いをつけれたようで、やはりこの二人は侮れないだろう。

SNSでこの小説を紹介

スポーツの他のリレー小説

こちらから小説を探す