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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 41

姉弟でワンツーと言う結果はいい話題になるだろう。

「ご苦労様、碧・・・いい引退レースになったわ」
「先生お疲れ様です・・・最後までプチラズベリーは頑張ってくれました」

紗英が碧を労いながら廊下の方に視線を送る。
そこにはプチラズベリーのオーナーに挨拶していた碧の母がいた。
そう、このレースでプチラズベリーはオーナーの手から北川牧場に移るのだ。
そして来春には繁殖牝馬としての生活が始まる訳だ。

「富川オーナー、お母さん、観戦わざわざありがとうございます」
「いやあ、最後は惜しかったねー・・・本当にご苦労様だよ!」

この富川と言うオーナーは県内に十店舗程展開するパン屋のオーナーで、ここのパンは行列ができると有名だ。
無類の競馬好きで、それが高じてオーナーとなった訳だ。
ここのパンは碧もファンであるし、たまにオーナーが自ら焼いて厩舎に持ってきてくれるのも有り難く頂いてる。

「あなたも馬も怪我なく回れただけでよかったわ」

そう言うのは碧の母。
碧の母だけあって綺麗で若々しい。
しかも小柄ではあるが巨乳だ。

「しかしこうして並ぶとそっくりですよねぇ」
母娘の会話に割って入る紗英。

「先生、以前お会いしたことなかったでしたっけ」
「う、うーん…あったっけ??」
「うふふ、お気になさらずに」

碧の母・北川恵。
碧を生む前はホッカイドウ競馬の騎手だったという。
本人は「大した成績はあげてない」というものの、それは謙遜であることは碧も茜も知っている。

たった4年の現役生活だったが、新人から最多勝争いに絡み主要レースを制覇。
男勝りの追う力を持ち、北の女帝と呼ばれる程であった。
しかし、碧の祖父母の事故死で騎手を急遽引退して牧場を継いで直後に碧を出産。
今や4人の娘の母として牧場を切り盛りしていた。

牧場の方は中央に出せる馬は無いものの、コンスタントに成績を出せて丈夫で安い馬を生産している。
それでもプチラズベリー級の地方の実力馬クラスはそれなりに生産していた。

「翠と桃達は元気?」
「勿論よ、翠は今妊娠中だけどね」
「またっ?!」

翠は碧の双子の妹である。
似た意味の字だが、碧はあおいと読み翠はみどりと読む。
現在2人の子持ちで更に3人目を妊娠中らしい。
翠は中学生にして妊娠してしまい、碧なんかは慌てふためいたが、恵は『まあいいんじゃないの』と落ち着いて受け入れて、中学卒業後は実家牧場で働きながら子育てしていた。
いずれ北川牧場の後継者となるだろう。

そして桃は北川家の4女となるが、翠の長女と同い年。
恵は若く見えるだけにあっちもお盛んなのだ。

これに恵の妹家族もいて、そこも女児ばかり。
碧の祖父も婿養子らしいから、どうやら女児が多い血統らしい。

「碧もプチラズベリーと一緒に繁殖牝馬として戻ってこればいいのに」
「お母さんっ!、何言ってるのよっ!!・・・まず相手がいないからっ!」
「あら、相手なんていなくてもどうにかなるわよ」

少し人のいない所に離れて正解だった。
普段からこんな調子なのが困る所だった。
馬産家としての理論や知識は一流で、決してレッドゴッドの岡山や御台の吉岡に負けないと思うのだが、悲しいかな資金力が全く無い。
そして、それだけ有能なのにこの性格なのが問題だ。

「まあでもよくやってるわ・・・上手くなったわね碧」

時たまこうやって母親の顔をするのがズルいが、そんな母は嫌いじゃない。

「ありがとう・・・じゃあ、私は今日は大井で泊まりだから行くね」
「ええ、頑張ってらっしゃい」

明日は大井で騎乗の碧は、今晩は調整ルームで泊まりだ。
これは公正を期す為に、中央も地方もレース前日は各競馬場の調整ルームでの宿泊が義務付けられている。

さらに調整ルーム内ではスマホ操作禁止。
これも公正を保つために厳格なルールで、もし規則違反が明らかになった場合は最大で1か月の騎乗停止処分が下る。
碧は特にSNSを活用してるわけではないのでさして影響があるわけではない。

「碧さん、お疲れっしたっ!今日は素晴らしいレースでしたねっ!」
「ああ、ありがと」
で、その調整ルームに来てみると、お出迎えが一人。

くすんだような金色の長い髪。
この少女こそ「天才の妹」諸澄舞である。

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