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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 40

馬の能力では劣るが、コースを知り尽くした人間にはこれがある。
碧も、谷口も、松戸も中央馬には負けないくらい、戦略をフル動員させレースを作り上げるのだ。

いよいよ勝負どころ。
3コーナーで谷口と松戸がじわじわと外から差を詰める。
それを見て、番手で追っていた人気の中央馬2頭の鞍上は手綱を動かし始める。
プチラズベリーと碧はまだ余力十分だ。

3コーナー過ぎで最内から大外まで、一気に5頭が横並びになる。
内からプチラズベリー、トワイライトスノー、パープルリーフ、ラストシンフォニー、そしてヨシノシラユキ。
忍のウォーターエンゼルはそのすぐ後ろでまだ動かない。

4コーナーに入り、人気二頭が本格的に動く。
プチラズベリーとの差がぐんぐん縮まり、すぐ後ろにつく。
そして二頭ともプチラズベリーのインを狙う。

そう、インを狙ったのだ。
先行するプチラズベリーの内側が2馬身分空いている・・・
いや、空けてあるのだ。

その意図に気付いたか否か・・・
二頭の有力馬は、4コーナーから直線に向いた時にはほぼ3頭横並びになっていたのだ。

直線を3頭が横並びで駆ける。
碧の手が激しく動き、プチラズベリーが必死の逃避行を続ける。
プチラズベリーがまだ先頭。
ジリジリとパープルリーフが差を詰め首差。
トワイライトスノーは半馬身ぐらいの位置。
碧とプチラズベリーが予想以上に粘っていた。

そして外からラストシンフォニーとヨシノシラユキが差を詰めてきて1馬身差。
残りは100mまで来ていた。

ここにきてミュラーの鞭が激しく唸る。
トワイライトスノーがグンと加速し僅かに先頭に立つ。
それに負けじとパープルリーフ鞍上の学の鞭も振り下ろされた。

2頭のスパートでプチラズベリーは半馬身離されたが、碧が必死で追うとジリジリ巻き返す。
そこにラストシンフォニーとヨシノシラユキが並びかけ、更に大外からウォーターエンゼルまで飛んできた。

先頭は大混戦になりながらゴールはあとわずか・・・
更にプチラズベリーは巻き返し、ほぼ6頭が並んだ所でゴール。
全く予想がつかない混線にスタンドが湧いた。

碧としてはベストのレースができた。
最後の直線も狙い通りトワイライトスノーとパープルリーフがインを走ってくれたお陰で2頭共加速しきれなかった。
開催最終日の最終レースともなれば内側はならしても荒れている。
そこで脚をつかってくれたお陰で、引退間際のプチラズベリーでも対抗できた訳だ。

そして、長い写真撮影が終わった瞬間にスタンドがまた沸く。

1着はパープルリーフ、2着はウォーターエンゼル、3着にプチラズベリー。
しかも6着までハナ差か首差。
そして澤木姉弟のワンツー。
それだけでなく、碧も入り高配当レースとなったのだ。

「いやー、やられたなぁ」
「こっちもあと一歩だったんだがなぁ」
4着ラストシンフォニーの松戸と5着ヨシノシラユキの谷口は苦笑いで引き上げる。
しかし反面やり切った表情でもある。

「ナイスファイト!」
「えっ、いやいやいや…あぁ、どうもです、へへ…」
6着トワイライトスノーのミュラーから健闘を称えられ、戸惑い気味の碧。

「ネエチャン、いい逃げしとったヤン!、マンマとヤラれてシモたわ!」
「ふへっ?!」

ミュラーの口から流暢な日本語・・・
もとい関西弁が出て来て面食らう。
どこからどう見ても白人男性の彼が日本語を口にするなんて想像できない。
確か関西を主戦場にして十年と言う話だが、びっくりするぐらい上手すぎる。

そんな呆けてる碧に谷口と松戸も側にやってくる。

「これで騎手三冠確定だな、おめでとう」
「ありがとうございます・・・でもまだまだ谷口さんには及びません」
「ははっ、オイラはこれでもレジェンドなんだぜ!・・・簡単に及んで貰ったらおまんまの食い上げさ!」

いつも通り飄々とした谷口。
しかし一歩間違えれば順位は逆転しかねないぐらい、谷口も名手の乗り方を見せていた。

「今日の馬場を上手く使ったな!・・・馬もよく頑張ったし、胸を張れる内容だぞ」
「はいっ、慎吾さんも流石です!」

松戸とも健闘を称え会い検量室に向かう。
検量室では仲良くインタビューに答える澤木姉弟。

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