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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 35

忍が25歳、その弟の澤木学は23歳。
別次元の諸澄を除けば若手のトップクラスを争う1人だ。

澤木家は元々地方競馬で育った一族であるが、調教師だった父が学の素質を感じ中央の騎手になるよう勧めたのだという。

「諸澄騎手の名前ってあります?」
「残念ながら今のところはないんだよね〜」

碧の問いに答えたのは美智子とは別の声。

「瑞穂さんいつからいたんですかっ!」
「んー、碧ちゃんが木原先生の奥様からお茶もらったとこかな?」
スポーツ紙の地方競馬担当記者、小早川瑞穂。
トレセンと同じように男社会の色が強い競馬マスコミでは珍しい女性記者で、碧にとってもいいお姉さん的存在のひとり。

地方紙である豆州スポーツの記者で大卒3年目。
大学時代は馬術部で鳴らしたらしく、競馬担当を自ら希望して入ったらしい。
くしくも社会人としてのスタートが碧のデビューと同じ年で、それ以来仲良くしている間柄だ。

「全日本2歳優駿はおめでとう、いいレースだったわね」
「ありがとうございます・・・それより諸澄騎手目当てにビクトリー競馬が取材にきてたんですよ!」
「流石は諸澄騎手ね・・・競馬界のアイドルよねぇ」

そう瑞穂は言いながらニヤリと笑う。

「私にとっては碧ちゃん以上のアイドルはいないけどね!」
「小早川さん奇遇ね!、私にとってもそうなの!」

瑞穂だけでなく美智子も参戦してくる。
これには碧も困り顔だ。

「アイドルだなんて・・・」
「地方競馬でもマイナーな地区とは言え、リーディング争いしてる若手騎手をアイドルと言わず何と言うって事よ」
「自信持っていいと思うわ・・・碧ちゃんの技術は若手の域を越えてるからね」

「アイドルだなんておこがましいですよ…まだ騎手としても未熟だと思うのに…」
「そういう謙虚なところもますます好きになっちゃうのよね」
「女性ジョッキー実力ナンバーワン!ですからね」
「もう…忍さんとかに失礼ですよ…」

木原厩舎を離れ、瑞穂と一緒に黒崎厩舎へ。

「プチラズベリーはなでしこウィンターカップで引退だったね」
「はい、まずは無事に、それでひとつでも上の着順を目指してます」

歩きながら話す碧と瑞穂。
そして瑞穂が声を少し潜めるようにこう言う。

「あと、これは正式発表前だけど・・・ホープフルステークス、ヴィングトール回避って話よ」
「えっ?!、ほんとですかっ!!」

驚くのも無理も無い。
2歳限定とは言えG1。
そのタイトルを前に回避する理由なんて怪我意外はほぼないだろうが、いくらライバル陣営とは言え怪我と言うのは気持ち良いものではない。

「脚部に不安が出て調教を休めているらしくて・・・まぁ陣営の目標はクラシックだから、寒い時期に無理させない方向のようね」

大きな情報だが、碧にとって複雑な心境だ。
酷い怪我でないのは良い事だが、やっぱり勝負したかったと言うのがある。
ジェイエクスプレスの成長も前のレースより充実してるから、余計にその思いがあった。

「G1のタイトルを碧ちゃんが取って、ジェイエクスプレスにはクラシック挑戦して貰いたいわね」
「はい、頑張りたいと思いますが・・・回避が本当ならヴィングトールは残念です」

「まあ、骨折や屈腱炎じゃないから、いずれまたジェイエクスプレスと対決する時が来ると思うよ。そう肩を落とすこともないさ」
「ですね…」
「脚元の様子を考慮しつつ、来年の弥生賞かスプリングステークスで復帰する見通しじゃないかな」

ライバルとの対決が来春までお預けというのは残念でならないが、それまでにジェイエクスプレスのさらなるパワーアップも図らねばと気を取り直す碧。

「碧ちゃんが年末中山に行く理由はそれだけじゃないでしょ」
「ああ…ヤングジョッキーズシリーズのファイナル…」

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