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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 33

この男性の1人は樹里の婚約者、吉岡駿太である。
もう1人は樹里の弟で紗英の婚約者の浅岡尚樹だった。

紹介されて丁寧に挨拶しあったが、碧としては微妙な表情を何とか隠す反応。
二人が結婚する事は聞いたが、まだ気持ちがついていってない。

「吉岡さん・・・黒崎龍也オーナーにヴィクトリーソルジャーの子を譲ったと聞きましたが・・・あれは中央で走らせる器では?」
「いいんだよ、龍也がまともでいてくれるなら安いものさ」

いくら幼馴染とは言え、あの馬は億の値がつく良血だ。
分相応を遥かに越えている。

「その血を無事に御台に返してくれさえすれば問題ないよ」
「・・・責任重大ですね」

調教で乗っているが、搭載エンジンが違う。
身体を絞っている最中だが、ジェイエクスプレスに匹敵する身体能力だから牝馬としては怪物クラスだった。
だがちょっと精神的に幼い。
ジェイアルトゥーベ程で無いが、気性難と言えるレベルだ。

父のヴィクトリーソルジャーはレースを使うごとに荒さがなくなってきたそうだが、母のミッドナイトシルフというのがまた、現役時代「じゃじゃ馬」「おてんば娘」と言われた気性難の牝馬。
まあ、それがいい方に出て名牝と呼ばれる活躍をしたのではあるが。

「デビューに向けて進んでるの?」
「慎重にやってるわ。こんな良血は初めてだから」
駿太が聞くと、紗英は冷静にそう答えた。

中間の調教中にもちょっとしたアクシデントがあった。
放馬して空馬でウロウロしていた他厩舎の馬にケンカを売ってしまったのだ。

その馬は5歳馬で、調教中に他馬と接触してしまい助手が落下して放馬。
そしてブラックドラゴンの眼前に現れた為に猛然と怒ったようだ。
それはまるで女王と粗相した民衆と言った感じ・・・
雄大な体格で2歳馬が5歳馬を圧倒してしまった訳だ。
勿論、鞍上で調教中だった碧も必死で止めたものの、あの凄まじいばかりの闘争心は一歩間違えばコントロールができない事も知るはめになったのだ。

「母親も気高い馬だけど・・・今までの子は全く似なくてね」
「なら、尚更手放す馬じゃないですか?」
「いいんだよ、ミッドナイトシルフは環境を変えてアメリカで繁殖していく事にしたから、あの子は繁殖に帰って来さえすればいいかなって所」

それが全てでは無いと碧も分かる。
多分、駿太には龍也と黒崎厩舎を支援する目的が別にあったのだろう。
それは浅岡家と吉岡家の結び付きを強固にする為とか言う理由だと言う方がしっくりくる。

「年明けの新馬戦でデビューさせて、そこから数戦するだけでR1まで上がってこれるでしょうね」

紗英がそう言う通り、この素質だと重賞勝つのが当たり前レベルだろう。
下位でくすぶる馬では無い。

「来年6月には結婚となるから、その頃にまたいい話を聞きたいね」
「そんな事言ったら中央に挑戦しちゃいますよ」

駿太と樹里の結婚と婿養子入りは来年6月の予定らしい。
中央ではオークスの時期だ。
そこまではハードルも高いが、夢を見れるだけの素質がある。

「春には黒崎先生と尚樹の結婚もあるし・・・義兄として出来る限りの支援を厩舎にしていきますよ」
「感謝してますわ、ありがとうございます・・・」

恋愛結婚では無くとも、弟の幼馴染で知らぬ間柄ではない。
家の為、厩舎の為に納得できる結婚で、こうやって早々に支援をしてくれるのは正直有難い。
碧は若干納得し難い顔をしていたが、理解はできるので紗英と共に頭は下げた。


その夜、宿舎に帰ってきた碧。
紗英は樹里や尚樹、駿太との夕食会があるということでまた一人寂しく戻ってくることになってしまった。
その姿はまるで大レースを勝ったヒロインではないみたいに。

「もうっ!ああいうとき、どんな顔してればいいって言うのっ!!」
「ん、あ、あんっ!碧ってば激しすぎ……っ!」

今日のレースの労いに部屋にやってきた亜沙美を、勢いのまま押し倒してことに及んでしまう碧なのであった。

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