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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 32

その瞬間、並ぶ間もなくスプリングバレーを交わし去る。
ジェイカーマインはまるで搭載エンジンが違うかの如く後続を突き放す。
アルビオンもナガトダイオウも必死に追うがもう届かなかった。

最後は碧が手綱を緩めるようにし半馬身ナガトダイオウに勝利。
アルビオンはそれから頭差の3着、スプリングバレーが4着。

『ジェイカーマインが2歳ダートの頂点に立ちました!!』

ゴール板を駆け抜け、喜びと安堵を噛み締めながらスピードを緩める。
思い通りのレースをして勝った。
しかも先行馬に辛いハイペースで二の脚まで使えた事は大きな収穫だった。
本当に頑張って走るジェイカーマインを労うように首筋をポンポンと叩いてやっていると、スプリングバレーと由梨が並走してくる。

ゴーグルを下げて笑う由梨。
ゴーグルを外した所だけ白く、後は土まみれの顔だが輝くような笑顔だった。
その笑顔で手を伸ばしてくる。
碧も理解して手を伸ばしてハイタッチ。
激しく戦えど、同期同士。
碧が勝てば由梨は喜んでくれるし、逆もまたしかり。

「やったね!」
「ありがとう!、やったよ!」

由梨も勝つために精一杯やっただろう。
スプリングバレーも負けたとは言え、この先が楽しみな一頭だ。
そして返し馬をすると、ちらりとアルビオンと諸澄が見える。
負けて強し。
それがアルビオンと戦った碧の印象だ。
この馬も、ジェイカーマインと今後も熾烈な戦いをしていく事になるに違いない。

そして、天才諸澄は笑みを浮かべていた。
負けた事すら気にする様子も無い笑み。
このレースすら只の通過点として見ているのか、彼の顔から敗戦のショックは見られなかった。

「・・・全く、勝っても負けてもイヤな奴だ」

表彰式も終わり戻ってきた碧に忍が一言。
その先には諸澄がビクトリー競馬の取材をにこやかに受けていた。
因みに勝った碧が受けたインタビューはローカルテレビ局と競馬新聞の記者。
勝者より目立つ敗者って晒し者かと思いきや、諸澄が喋ると彼が勝者のように映ってしまう。

「勝てなかったのは残念だけどこれからが楽しみですとか、どんだけ優等生してるのよっ、ああ、嫌だ嫌だっ!」
「本当に忍さんって諸澄騎手が嫌いなんてすね」

毒づく忍に苦笑気味の由梨。
由梨の方はと言うと諸澄のファンらしい。

「弟さんも優しくしてもらってるんでしょ?」
「それがまたムカつくのよ!」

よっぽど嫌いなんだろうなぁと碧と由梨が顔を見合わせて苦笑する。
だが、諸澄の方は忍に好意的なのが面白い。

以前、交流重賞で接戦を演じた時は諸澄が忍に握手を求めたことがあった。
当然、忍は拒否したのだが、諸澄は困りながらも笑顔を崩さなかったのを、碧も由梨も覚えていた。


「碧ちゃん、いいレースだったわ!」
「ありがとうございます!」
そして樹里と顔を合わすと当然のように熱いハグ。

「交流G1を勝つのは初めて…最高の気分ね」
「まだまだ強くなりますから」

負かしたアルビオンは来春、UAEダービーからケンタッキーダービー挑戦を計画しているのと噂だが、樹里は気にすることはなく

「来年は地元の三冠を目指しましょう」

地元の豆州湊競馬場では南関東エリアに属していないので独自の三冠レースが設定されている。
その三冠レースはアメリカ方式で、4月の豆州湊賞、5月の大漁杯、そして6月の温泉ダービーと3ヶ月で勝負される。
この形式になってからの三冠馬はおらず、タフな三冠レースであった。

そしてこの形式の利点は、夏から秋のシーズンに3歳馬が遠征しやすい事であり、各厩舎積極的な遠征によって競馬場自体のレベルアップに繋がっていた。
この三冠レースで勝ち上がった馬がジャパンダートダービーを初めとする各地の大レースに遠征する姿も当たり前のようになってきていた。

樹里の言葉もジェイカーマインにはまず地元三冠に挑戦して、そして地方競馬の大レースと言う考えから来ているのだろう。
堅実であるし、紗英の考えとも合致しているだろう。

その樹里の傍には珍しく男性が二人いた。
1人は樹里とよく似た若い男性。
もう1人も同い年ぐらいの若く爽やかな感じの男性だった。

「いや、北川騎手は素晴らしいね・・・地方競馬のレベルも知らなかったから驚いたよ」
「意外と面白いだろ?、駿太君・・・姉さんが中央に行かない理由がこれさ」

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