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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 31

釣られたのだろうがまだ早い。
ここはまだ3コーナーなのだ。
恐らく先頭を行く由梨も笑いが出るに違いない。

碧も忍も由梨にしても女であるが、地方競馬の騎手だ。
中央の騎手達に比べて知名度も低いし稼ぎも少ない。
だが、それは中央の騎手と比べて劣っていると言う訳ではない。
むしろ男女問わず地方競馬の騎手が持つスキルを彼女達も備えている。

それは、勝利に対する執念・・・

稼ぎの少ない地方競馬の騎手の熾烈な争いは地方競馬の風物詩であり、華やかで稼げる中央には無いものだった。

つまり、由梨は勝利に対する執念で単騎逃げをしてる訳で、生半可な戦術に負ける程ヤワじゃないのだ。

エイワフラッシュは外々を回りながらスプリングバレーに並んでいく。
もともとこういう脚質で勝ってきたからだろう、鞍上も引き下がらない。

碧はまだ仕掛けない。
その後ろで、忍鞍上のアクロスザラインも虎視眈々と機をうかがっている。

3コーナーを過ぎると今度はエアタイクーンが動く。
こちらは京都ダート1800で勝った時と同じような動き方だ。

しかし由梨はまだ余裕だ。
スプリングバレーはまだ、もう一段階ギアを持っている。

スプリングバレーの父はノースキャニオンと言うマイナーな馬だ。
だがその血統を遡ると大種牡馬ノーザンテーストに遡り、かつては競馬界を席巻した血統だ。
だが、後継種牡馬に恵まれず、中央で走る産駒は壊滅。
このノースキャニオンが唯一の後継種牡馬として地方競馬で細々と走っていた。
つまり、二流の血統と言っていいのだが、安価でかつ三度変わると言われる成長力で地方競馬では馬主から人気だったりする訳だ。
そして、そんな血統でも意外と勝負できてしまうのが地方競馬と言う所だった。

そして、スプリングバレーは恐らく一回目の成長期。
仕上がり早く地方のパサパサダートを得意とするのは、この血統の特徴だった。
他より先んじた成長と、抜群のダート適正でスプリングバレーのエンジンは衰える事の無いまま4コーナーを回っていく。
しかも、由梨はホームグラウンドだけにコーナーリングは実にスムーズだった。

一方で外々を回るエイワフラッシュはさらに外に大きく膨れるようなコーナリング。
園田の前走でもこれで脚を使い過ぎたようなきらいがあった。

いよいよ最後の直線。
最内粘り込みを図るスプリングバレー。
大外のエイワフラッシュもムチが飛ぶ。
その間から差を詰めるジェイカーマイン、アクロスザライン、ラストバラッド。
横並びの追い比べにスタンドが湧く。

強引にまくってきたエイワフラッシュがまず外からスプリングバレーに襲いかかる。
だが、スプリングバレーの脚色は衰えない。
アクロスザラインとラストバラッドも競りかけるが、スプリングバレーは半馬身程のリードを保ち続ける。

そして残り200m。
碧の手が動く。
グンとスピードに乗るジェイカーマイン。
スプリングバレーとアクロスザラインの隙間に馬体をねじ込むと果敢に競っていく。
まずエイワフラッシュの脚色が悪くなりズルズルと下がり始め、ラストバラッドも一杯となる。
まだ先頭はスプリングバレーであったが、ジェイカーマインがジリジリと差を縮めて行った。

スプリングバレー、アクロスザライン、そしてジェイカーマインが並んだのが残り100m。
その3頭の壮絶な叩き合いの中、大外から凄まじい脚の2頭が上がってきた。

諸澄騎乗のアルビオンとそれをマークしていた忍騎乗のナガトダイオウだった。
2頭凄まじい脚で追い上げ、その差が縮まっていく。
それを碧は見ていた。
いや、来るのを感じて待っていたのだ。
碧の鞭がこの時とばかりに振り下ろされる。
ジェイカーマインがグッと体勢を沈ませ、更なる加速に入った。

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