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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 28

「でも、この青鹿毛はお母さんの遺伝ね・・・お母さんはと・・・」

血統表を見た里穂が固まる。
そして何度もそれを見返す里穂を見て、美波も覗き込む。

「マジ?!」
「大マジよ・・・この子のお母さんミッドナイトシルフだって・・・」
「「ミッドナイトシルフぅ?!!」」

碧と茜が同時に叫ぶ。
競馬関係者やファンならその馬は誰でも知っている。

ミッドナイトシルフ・・・
牝馬三冠を制した黒鉄の女王。
御台ファームの生んだ最強牝馬だ。

「いくらなんでも趣味に合わないんじゃないの!・・・しかもこの血統おいくらまんえんなのよっ!!」
「まんえんじゃなくて、億だと思うわ」

半分呆れて笑うしかない里穂や美波。
碧や茜も呆然だ。

初年度からミッドナイトシルフの種付け相手はヴィクトリーソルジャーを予定されていた。
そもそもミッドナイトシルフの相手として輸入されたと言われるぐらい、血統構成的にベストマッチングと言われた。
だが、牝馬にして大型かつ青鹿毛のこの馬に興味を示さず失敗した訳だ。

その後、ミッドナイトシルフは他の馬と種付けされたが、その産駒で成績を残せたのは皆無・・・
この事態も御台グループ総帥に頭を抱えさせる事になった。
そして、ミッドナイトシルフは活躍馬を出さぬまま過去の存在になってしまった。

しかし運命のいたずらか、奇跡のように一度だけ種付けに成功したのだ。
ヴィクトリーソルジャーが傷心の女王を憐れんだからかどうかは分からないが、兎に角無事に受胎し子馬が誕生した訳だ。

だが、そんな貴重な血を御台グループが手放すだろうか・・・

億の値段が付けられ、億を稼ぐ血なのだ。

「駿太に馬くれって言ったらさ・・・コイツ譲ってくれたんだぜ!・・・持つべきは友人だな!」

持つべきは友人だ。
だがこれは、分相応だ。

「これなら勝てるかい、碧ちゃん」
「勝てるとか言うレベルじゃない・・・どこでも負けません彼女は!」
「勝てるのかっ!、ならいいじゃんっ!・・・て、かのじょーっ??!!」

全員が龍也を呆れたような目で見る。

「ほら、オチ◯チン付いてないでしょ?」
「オマ○コだってちゃんとあるのに」

呆れ顔で美波と里穂が臆面も無く言う。
そう、それは母譲りの巨体を持つ牝馬だったのだ。

「えーーーーっ!・・・メスなんて聞いてないぜーっ!」
「聞かなくても分かるでしょうに・・・紗英先生の弟なんだから・・・」

実の所、父と姉が調教師だが、龍也は素人でしかない。
厩舎なんて近づく事が無かったし、馬と関わる気も無く育ってきたからだ。

「駿太のヤツ・・・説明してくれなかったぞ・・・」
「当たり前過ぎて言わなかったんでは?」

全員が呆れ果てるが、まあ素人から始めた馬主ならそうかもしれない。
そして、牡であれ牝であれ、この馬は地方競馬の企画以上の良血だった。

「まあいいさ、碧ちゃんはこれでガンガン勝ってくれよ」
「はい、体格的にデビューは年明けになりますが負けません!」

調教で身体を絞りつつ癖や長所欠点を見てやらねばならない。
デビューはそれからだろう。

「流石だぜ、碧ちゃん・・・このまま俺のモノになっちゃえ」
「ちゃんと結婚してくれるならいいですよ」

冗談めかした龍也の言葉に、全く冗談無く言う碧。
全くぶれない紗英への愛とでも言うべきか。
こう言う返答されると、逆に遠慮してしまうと言うか、喉元に剣を突き立てられたような心境だった。

こんな風にその年の黒崎厩舎の暮れは波乱含みであったのだ。


そして、年末の碧にとっての大レースも残り3つ。
まず1つ目の全日本2歳優駿の日がやってきた。
碧はジェイカーマインで参戦する。

今週の仕上げの調教は碧自ら行い、出来はいい感じだった。
併せ馬は次週にホープフルステークス出走予定のジェイエクスプレスで、こちらは真奈美が騎乗した。
こちらもいい出来で敗戦のショックは無い。

「いい感じで仕上がってますね」
「相手は強いけど、100%の力を出せるよう頑張らなきゃ」
「ですね」

厩舎に引き上げてくる碧と真奈美。
しかし、いつもと違って周囲が慌ただしいというか、騒々しいというか。

「なんか変ですね」
「うん……あっ」

真奈美が向こう側からやってくる集団に気づく。
テレビカメラや音響機材を持った男性数人と、その中心に若い女性が一人。

「風見アナじゃないかな、あれ」
「えっ!?『ビクトリー競馬』の!?」

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