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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 26

「事の発端は龍也が吉岡駿太と再会しちまったことから始まったんだ」
「あー、それで…」

吉岡駿太。
御台グループの一族、サウザンファーム代表の吉岡勝正の息子で、一口クラブ馬主・サンシャインホースクラブの代表取締役。
紗英の弟である龍也と駿太は小、中学校の同級生でもある。

サウザンファームと言う会社は正確に言うと牧場ではない。
元々は牧場だったが、御台ファームに吸収合併されて名前だけが残っていた。
今は観光部門となっており、馬や牧場施設の観光化やそれを生かしたリゾート開発を全国単位で進めている御台グループの資金源とも言われる会社だ。

御台グループの本拠地は北海道だが、競走馬管理部門は東京にあり関東周辺はグループの戦略拠点でもある。
碧達の競馬場のある豆州湊市は海も温泉もあり観光地も近く、なにより東京近郊の伊豆半島にあるので、御台グループの最初のリゾート開発の候補地になったのだ。
それが30年前であり、以来サウザンファーム本社は豆州湊市に置かれていた。
ある意味、浅岡グループのライバルでもある。

「わたくしとしても龍也さんのやる気を後押しする理由はありましてよ」

浅岡の奥様・・・
浅岡希美子はそう紗英に笑いかける。
浅岡グループ前当主、浅岡拓磨の後妻であり、現当主樹里の継母。
彼女が生んだ息子である尚樹は龍也や駿太と幼馴染の間柄だ。

尚樹は長男であるが後妻の子であり、当主は女であっても前妻の娘の樹里に決まっていた。
それは一族の意向や前当主拓磨の意向もあるが、前妻を立てる希美子の気持ちの強さが一番の要因だった。
それに、当主としての器は樹里の方が遥かに上だし、浅岡家は婿養子に抵抗は無い。

「龍也の事は感謝しています、奥様」
「感謝なんていいのよ・・・そんな事より早くうちの尚樹を貴女の婿養子として迎えて貰いたいわ」

長男であるが当主になれない尚樹だけに、婿養子に出してしまえる訳だ。
紗英にとっては気持ちの問題以外は実にいい縁談である。
しかも、龍也を世話して貰い馬まで預けてくれる浅岡家の頼みとあらば断れる訳がない。

今までのらりくらり交わしていたが、希美子の口からはっきり言われると言う事はもう待てないと言う話だろう。
変な所で約束に拘る樹里が『結婚と出産は紗英と一緒かいい』と言って結婚してないのが妙にプレッシャーになっていた。

「はい、光栄です・・・良しなにお願いします」
「まあ、良かったわ・・・これで黒崎家と縁続きになれるなんて素敵な事ですわ」

いや、浅岡家にとって黒崎家なんて取るに足らないのだが、きっと樹里があれこれするからなのだろう。
普段助けられているから、御家騒動の元を引き受けるぐらいお安いご用だろう。

「これで樹里も結婚に前向きになってくれるわ吉岡さんの御曹司が婿養子でも是非にと言ってくれてるのですわ」

待てと紗英の思考が止まる。
吉岡さんの御曹司って・・・
そんな御曹司は駿太しか知らない。

龍也、駿太、尚樹・・・
紗英にとってはかなり年下の弟と弟のようなもの。
そのうちの尚樹が自分と結婚で、樹里と駿太が結婚・・・
そして帰って来た龍也。
余りにできすぎた展開だ。
これを描いた人物は何がしたい・・・
いや、この3人は何がしたいのだ・・・

「所で奥様・・・尚樹さんは結婚後何をさせるおつもりでしょうか?」
「あの子には樹里さんの馬主業の管理を任せようと思うの・・・ほら、樹里さんは当主業がありますでしょ?」

つまり実質の馬主業は尚樹にさせる。
そうあの幼馴染3人が全員立場が違えど馬主業に関わるのだ。
色んな意味で巻き込まれて逃げられない。
紗英は覚悟しつつも少し頭が痛かった。

そして、厩舎では・・・
北川牧場から入厩してきた2歳馬3頭は北川牧場生産である。
京橋ちゃんと厩舎まで歩いて来た龍也と案内役のような碧と茜が立ち会う。

「どうよこれ!、バンバン勝たせてくれよ碧ちゃん!」

上機嫌の龍也に顔を見合わせる碧と茜。
龍也は北川牧場から2歳馬3頭と1歳馬8頭購入している。
1歳馬の入厩は来年になってからだが、年末の2歳馬の入厩時期は地方競馬としては早くはない。

「残念ですけど・・・R4で頑張れれば凄いぐらいかなぁと・・・」

言いにくそうに茜が言う。
この時期まで売れ残った2歳馬の能力は・・・
お察しレベルである。

そして茜の言うR4と言うのは・・・
この豆州湊競馬場のグレードと言っていい。

中央でよく見るGの表記は国際基準なので、地方競馬は使えない。
一応交流レースに限り、中央と海外馬参戦可能レースにだけGの表記が許されている。
その他の交流重賞の表記はJpnである。

豆州湊競馬場では、なでしこウインターカップのみ牝馬限定交流重賞としてJpn1のグレードが与えられている。
それ以外のレースは競馬場独自グレードとなってる訳だ。

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