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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 25

紗英と共に碧も固まる。
例年売るのに苦労した碧の実家だが、今年はRKマネジメントと言う会社が全部買い取ってくれたと母から喜びの電話が来ていた。
まさかそれが・・・

「・・・話は聞くわ・・・一体何がしたいの?」
「姉ちゃん、相変わらずキツいなあ・・・馬主になって姉ちゃん助けたいだけだよー」

紗英のキツい表情は変わらない。
そして龍也の軽薄そうなにやつき顔も変わらなかった。

「あの・・・実家の牧場の馬を買って頂いて・・・しかも黒崎厩舎を選んで頂いて有り難うございます・・・」

そう頭を下げた碧を面白そうに見る龍也。
紗英は完全に眉を吊り上げていた。

「ああ、君が北川碧ちゃんね!・・・オレの買った馬が碧ちゃんの実家なんて偶然だよねー」

わざとなのがありありと分かる口調だ。
紗英は怒りを隠そうとせず立ち上がる。

「碧に何かしたら許さないからっ!!」
「せっ、先生っ!!」

紗英と龍也には因縁があれど、そして龍也の魂胆がなんであろうと、碧からすれば実家を助けられた思いはある。
不信感はたしかにあるが、助けて貰った相手に怒る不条理は碧にはできない。

姉の怒りにもニヤニヤ笑う龍也は碧を見て言う。

「碧ちゃんは物分かりが良くていいねぇ・・・オレのモノにでもなるかい?」

あからさまな言葉に全員が絶句し、紗英は掴みかからん勢いだった。
だが、一人平静だった碧は龍也に返す。

「結婚と言う形ならそれで構いません」
「なっ?!、何言ってるの!!」

全員がパニックになる中、碧はニッコリと笑った。

「だって、そうすれば先生の妹になれるもの!」

碧の言葉に全員・・・それだけでなく今度は龍也までが唖然としてしまった。
そして我に反った龍也が大笑いした。

「いや、いいっ、気に入った!・・・とりあえず今日は帰るから、馬の事は宜しくな姉ちゃん」

そう言って大笑いして龍也は出ていく。
その背中を見ながら、真奈美が紗英に聞く。

「いいんですか?」
「仕方ないわ・・・北川牧場の馬を受け入れないって言う選択肢無いから・・・」

怒りを通り越して紗英は脱力していた。
また問題児に大切な黒崎厩舎を荒らされた気分だったが、受け入れるしか無い。
そして、どうやっても碧を守ってやらねばならない。

数日後、問題児でもあるが大切な馬主様である龍也の馬が来た。馬運車から降りてきたドライバーを見て紗英は驚く。少し老けてはいるがそれなりに良い男前である。
「紗英ちゃん、久しぶりだね」
「秋さん!!!!」
「大体の事は聞いている、まああいつも東京に出てそれなりに色々と腹括って汚れ仕事しているからなぁ……」
「秋さん知っているんですか!!!」
「あいつからも口止めされていたんだよ」
「一人前になるなら場運車を運転できる様にすればいいのに」
「これを運転するって言うのは“運送界の東大”と言われる程、難しいぜ」
馬運車とはその名の通り馬を運ぶ専用貨物自動車で車体の特徴から“馬バス”とも呼ばれる事もある。
馬は繊細な動物であり長距離移動はまさに厩務員の腕の見せ所の一つとも言えるが馬運車のドライバーは運送業界全体でも超が幾多が付くほどの安全運転とドラテクを求められ、その難しさから他のドライバー業界からも馬運車ドライバーは“運送界の東大”とも言われる所以、秋山 善次郎もその一人である。
「私がここにいる事は」
「俺は話してないぜ……投資家って言うのは情報源の多さがカギを握るからなぁ……」
同行していた厩務員も事情を知っているらしく競走馬の下ろす作業を始めていた。馬運車は厩務員数名が乗れるように設計されており以前は大型バスベースになっていたが今は大型トラックベースになりエアサス搭載が当たり前、最も牧場が所有する馬運車は中型か準中型トラックが主流である。
「……それに今回の馬主の話しは浅岡グループの当主様がお膳立てしてなぁ、以前から馬主にチャレンジしたい取引先が居てそれならって……」
「本当にこれで迷惑かけるのなら去勢するから、秋さん止めないでくださいね」
弟を聞き分けない若駒と同じ感じで言う紗英の言葉に他のメンバーも笑えなかった。
「阿部定事件の真似だけは勘弁してほしいなぁ」
彼が言う阿部定事件とは昭和11年5月18日、待合での性交中に阿部定が相手男性を縊死(一般的に“首吊り”)させた上に男性器を切断した戦前日本の猟奇殺人の一つで二日後に彼女が逮捕された際には号外も出た。後年になって上野動物園のクロヒョウ脱走事件に二.二六事件と並んで昭和11年の三大事件とも呼ばれ、戦後は映画やドラマの題材にもなる。
「紗英さん、お久しぶりですね」
秋山の背後から和装婦人が上品な声で申し訳ない表情で言うと紗英は慌てて頭を下げる。
「浅岡の奥様!あのその……」
「私から話を通した方が良かったかしらねぇ……あの人も気前よく引き受けるもんだから」
「奥様と旦那様は悪くは無いです。私は龍也を許した訳でもないですから」
彼女は一礼して競走馬をチェックを始めた。
「さてと……事情位は話した方がいいかな?」
碧らを見た秋山はため息交じりの表情になる。

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