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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 24

岡山も御台グループに負けまいと海外から種牡馬を購入したりしているが、それがあまり実を結んだことがない。
カイザースプリングスはまだ成功した方の部類で、大失敗したことだって何度もある。
もっとも彼はそうなっても「それが競馬だから」と割り切っているのだが。

「ゴールドシュミットとかどう?」
「確かに良い馬だけど…ジェイアルトゥーベ以上の暴れん坊だったじゃない…」

ゴールドシュミットはレッドゴッドファーム歴代最高の生産馬である。
天皇賞春等G1を4勝。
大種牡馬SSの孫世代に当たり、母系は日本の名牝系スターロッチの血を引く。
つまり岡山好みではない良血。
そして尾花栗毛の美しい馬体に四白流星・・・
それ故に貴公子と呼ばれた美しい馬だ。
但し性格はSS系の特徴とも言える荒い気性。
いや、荒いを通り越して狂気・・・
そのレースぶりはド派手で狂ったように逃げたと思えば、最後尾からの強襲。
23戦12勝のうち着外は11回・・・
つまり、勝利か着外と言う極端な馬だった。
それ故ついた異名は『狂乱の貴公子』である。

そして種牡馬としては不安定だが、まれに大物を出したりする。
しかし、一番の売りは絶倫と種付け料の安さ。
タフで種付けを回数こなせるのだが、やはり悪癖故に値段が下げられた事で種付け料は安くなっていたのだ。

北川牧場のような小規模牧場としては、何とも有難い種牡馬で数頭種付けしたみたいだが、結果は今の所収益にはなる程度と言った所だ。

まぁ、茜が言うようにプチラズベリーの血統的に相手として選ばれる公算は高いかもしれない。

「惚れ惚れするぐらい綺麗なのよねぇ・・・ジェイエクスプレスも匹敵するイケメンだけど」

うっとりとそう言う茜は、若干馬の容姿にうるさいと言うか綺麗な馬に目がない。
そして茜の言うジェイエクスプレスは、ゴールドシュミットのような黄金の尾花栗毛ではなく、燃えるような赤みがかった栗毛である。

「あの子が綺麗なのは私もそう思う・・・岡山のおじさんは変だけど、美しくて強い馬はたまに作るよね」
「たまなんて言ったら岡山のおじさま泣いちゃうよ」

そのゴールドシュミット級に期待してる癖によりにもよって地方競馬の馬主に売ってしまうのが岡山の悪癖と言うか訳の解らぬ所だ。
そんな話を碧と茜がしていると、表が騒がしくなった。


碧が表を見ると、ベンツAMG  GTSが爆音と共に止まった。

「なんだよ!、こんな所で爆音立てやがって!!・・・てか、ベンツゥー!!」
「あ、ああ、あれって凄い車っ?!・・・馬主さん?、もしかして馬主さん?!」

怒って出てきた美波が車を見て唖然とし、里穂も泡を喰う。

「・・・おいくらまんえんですかあれ」
「あー・・・二千万ぐらいかなぁ」

姉に聞いて指折り数える亜沙美と、値段を出しながらも呆然と見る真奈美。
競馬のオーナーとなれば金持ちは多いが、金持ちかつ悪趣味もいなくはない。
黒崎厩舎はそんな手合いと付き合いがないだけに、みんなこの来訪者を唖然と見ていたのだ。

すると、飛んで来た紗英が車を見て叫ぶ。

「龍也っ!!」

誰?
そうみんなが疑問に思う中、車からやせ形の男が降りてくる。
金髪の若い男で、まるでホストのようにちゃらい。
厩舎スタッフ女性陣の最初の印象は『ないわこれ』だった。

その紗英から龍也と呼ばれた男はニヤリと笑って言う。

「よう、久しぶり・・・姉ちゃん!」
「「「ねっ、姉ちゃん?!!」」」

この男の言葉で全員が同じ事を叫んでしまったのだ。


そして厩舎事務所。
頭を抱えたくなるような表情の紗英と、ニヤニヤ笑う龍也と言う男が応接セットで向き合う。

「オレ、黒崎龍也・・・姉ちゃんの実の弟だからよろしくなっ!」
「・・・アンタは『黒崎厩舎』には関係ないでしょ」

にこやかな龍也と怒りを押し殺す紗英。
黒崎龍也は彼の言う通り、紗英の実の弟だ。
だが、素行不良で高校は退学させられ、ホストの世界に飛び込むなど競馬とは関係無い世界へ・・・
そこでも犯罪まがいの事をした為に親にも勘当されていた。

「で・・・用が無いから帰ってくれる?」
「つれないなあ・・・姉ちゃんは」

怒り沸騰寸前の紗英なんて厩舎スタッフも見たことが無い。
それ故に全員ビビりながら様子を伺う。

「あれさ、オレも全うに働いて、今では投資家さまさ!・・・浅岡のねーちゃんから話聞いてるだろ?」
「だからって貴方を許した訳でないから!」

一応勘当されたとは言え、弟の尻拭いをして浅岡グループに預ける為にかなり頭を下げたし、顛末も聞いているが、それで許せた訳でない。
一時は厩舎を畳みかねないぐらい迷惑はこうむっていた。

「あ、オレさ・・・来年から馬主やるから馬買ったんだ・・・姉ちゃん預かってくれよ」
「他所当たりなさい」

にこやかな龍也に対し、拒絶する紗英。
だが次の龍也の言葉で紗英が固まった。

「でもさ、北川牧場って所の馬買い占めちゃったんだよねー・・・どうにかしてよー」

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