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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 23

そのジェイカーマインは川崎競馬場へ遠征して全日本2歳優駿に挑戦する事になっている。
地方競馬の激戦区、南関東エリアへの遠征となるがジェイカーマインならいい勝負となるだろう。
もし勝てば、南関東クラシックを目指すのもいいと紗英も考えているらしい。

碧にとって、今年残された大レースは3つ。
この全日本2歳優駿とホープフルステークスの遠征レース2つ。
それと、所属競馬場の年末の大レース、なでしこウインターカップである。

この競馬場ではグランプリレースに当たるものは正月に行われる『潮騒ゴールドカップ』の為、年末に牝馬限定のレースが設けられた。
時期的なものから他の競馬場からの参戦も多く、牝馬のグランプリと呼ばれるようになって久しい。

それに今年のなでしこウインターカップは碧にとって特別だった。
騎乗予定のプチラズベリーは、碧の実家の生産馬で、このレースで引退して牧場に帰る予定なのだ。

戦績は64戦9勝の8歳馬。
碧はこの馬の鞍上でデビューした縁の深い存在だった。

特筆すべきは2着と3着の回数が25回。着外が7回と抜群の安定感。
3歳時に温泉オークス、4歳時には遠征してエンプレス杯を制覇。
4歳春から暫く勝てずにいたが、6歳のシーズンに碧が主戦騎手となり、秋には重賞制覇し久々の勝利。
なでしこウインターカップも2着に入った。
そこから重賞を1つ勝った以外にも善戦を繰り返していたが、今年に入り着外が4回と衰えが目立ってきた。
恐らく人気もかなり下げて、予想でも印がつけられないだろうが、碧にとってはいいレースをして送り出してやりたい一心だった。

それだけでなく、北川牧場の娘として考えれば・・・
ここ近年で一番活躍した馬だ。
それを繁殖に帰せると言うのは、何て言うか感動的な事だった。

碧は厩舎に戻ると、プチラズベリーの馬房に向かう。

「ああ、碧、お帰り。今日は残念だったね」
「まあ負けたからそうなんだけど…それよりも収穫の多いレースだったからね、これから楽しみだよ」
「そっか」
「それより、ラズベリーは元気?」
「順調だよ。今はちょっと太めだけど、ラストランに向けてこれから仕上げていく予定」

プチラズベリーの担当厩務員、水瀬茜。
碧の幼馴染で、彼女を追うようにこの世界に入ってきた。

茜はすぐ隣の牧場の娘。
ただし、彼女の実家は酪農・・・
つまり乳牛である。

同じ牧場でも大きな違いだが、幼かった彼女達には関係無く仲良くなり、そして中学までを同じ学校で学んだ。
その後、碧は地方の競馬学校に中学卒業後に入った。
しかし、茜もその頃には碧の影響で馬に携わる仕事がしたいと、農業高校へ進学。
農業高校の酪農科で牛や馬に関わりながら学び、時間がある時は北川牧場で馬の世話を習っていた。
そして高校卒業後に北川牧場からの推薦と言う形で再スタートした黒崎厩舎へと入ったのだ。

茜は元気で活動的に見える碧と違い、おっとりして大人しく見える。
だが、そう見えて甘えん坊の碧とは正反対に芯が強い。
しっかり者で、厩舎スタッフ全員から『嫁にしたい』と半ば本気、半ば冗談で言われたりしていた。
そんな茜だから、碧も信頼し頼っていたりする。

そして彼女が担当するプチラズベリーも厩舎のお母さんと呼ばれていたりする。
気性の悪い馬も、プチラズベリーと併せ馬をすると落ち着くと言われるぐらいだ。

ジェイアルトゥーベもあれでもプチラズベリーのお陰で大人しくなったぐらいなのだ。
今も隣同士の馬房で、うるさくするジェイアルトゥーベを宥めるようにプチラズベリーが顔を出すと、ジェイアルトゥーベが落ち着くと言った具合だ。
そしてジェイアルトゥーベだけでなく、他の馬もプチのがいると落ち着いたりするのだ。

そんな馬が厩舎からいなくなるのは大変だし寂しいが、それも競馬の宿命である。
母となる為に牧場に返してやるのは義務だ。

「初年度の相手は誰になるのかなぁ」
「お婿さんが気になる?・・・多分、レッドゴッドファームの種牡馬じゃないかな」

茜の予想に碧はあの岡山の濃い顔を思い出してげんなりする。
だが、普通に考えたら隣に種牡馬がいてしかも安価なんだから使わない選択肢は無いし、北川牧場の大半の馬はレッドゴッドファームの種牡馬を使うのだ。
プチラズベリーは期待の繁殖牝馬だが、費用的に御台グループの種牡馬を使う事はあり得ないだろう。

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