PiPi's World 投稿小説

アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

の最初へ
 20
 22
の最後へ

アイドルジョッキーの歩む道は 22

デンゲキエースがさらに突き放しにかかる。
それについて行きたい碧とジェイアルトゥーベだが、本来のスピードが生きない。
それどころか後ろからニシキブライアンとジェネレートキングが迫ってくる。

「お願いだから…!!」
残り200m。
必死に追う碧。
ようやく先頭に並びかけるが、そのときには谷口と忍も追いついていて4頭の大接戦が出来上がっていた。

必死に追う碧にジェイアルトゥーベはなかなか応えなかったが、それでも自力でデンゲキエースは交わした。
しかし、残り100m・・・
そのジェイアルトゥーベの外側からジェネレートキングが差してきた。
一旦首ぐらいまで抜かれかけるが、ジェイアルトゥーベも粘りの二枚腰をみせる。
鞍上の忍の必死の追い、碧も必死で追い返す。
この二頭のマッチレースかと言うぐらいの激しい追い合いに、鞍上の二人は土飛沫も気にせず、綺麗な顔を歪めるぐらいで叩き合う。
それは新時代の到来、女の時代の始まりのようにさえ見えたが、レースと言うのはかくも無残であった。

ゴールわずか数10m手前で、ジェイアルトゥーベのインからニシキブライアンがスルスルと並び、ハナ差でゴール。
鮮やかな谷口の差し切り本命喰いだった。

駆け抜け1コーナーで呆然とする碧。
今回のジェイアルトゥーベの走りは全く碧に理解できない出来だった。
これなら暴走してくれた方がまだ分かりやすい。
そして隣にやってきたのは、3着ジェネレートキングの澤木忍。
彼女も憮然とした顔だ。

「タニさんにあんな形でやられるとは思わなかったわ」
「・・・本当に・・・凄い先輩です」

恐らく飄々とした何時もの感じでスタンドに手を振り、飄々とインタビューや表彰式に行くのだろう。
所属競馬場で20年以上リーディングジョッキーとなり、最多勝利記録に至っては全地方競馬騎手のベストテンに入る。
まさしくレジェンドなのだ、谷口忠弘は。
レジェンドがレジェンドのレースをして勝った。
今年は今の所、所属競馬場リーディング争いで碧がトップで谷口がそれを追う二位だが、まだこの先輩に追い付いた実感は碧には無かった。

検量に帰り馬から降りる。
紗英と里穂が出迎えるが、二人の表情は暗くない。

「おつかれ、碧・・・あの子、レースしようとしてたわね、収穫よ」
「すいません・・・勝たせてあげれませんでした」
「いいレースだったわよ碧ちゃん、利かん坊がちょっと大人になったし!」

とは言え碧の気は晴れないが、谷口を見かけ近付いて頭を下げる。

「谷口さん、おめでとうございます!」
「いやすまんね、勝ってしまって」

何時も通り飄々と谷口はしてた。
そしてちょっとだけ真顔で碧に耳打ちする。

「抑えちゃ駄目だぜ・・・あれはクレイジーなぐらいがいい」
「えっ・・・」

先輩としての純粋なアドバイスだろう。
他のジョッキーや調教師なんかは、碧に関わったりアドバイスくれたりする人間はかなり少ない。
周囲が敵の中、碧がやっていけるのは、こんな数少ない味方が優しいからだろう。

「あれはね、きっと凄い馬になるぜ・・・まさしくキチガイに刃物だ」
「それ、誉めてません・・・でもありがとうございます」

勝った騎手に慰められていれば世話は無い。
だが、気持ち的には楽になった。
検量を終え、観戦に来ていた樹里の元へと行く。

すいませんと言いかけたが、反ってきたのは樹里の抱擁だった。

「碧ちゃん、いいレースだったわ!」
「わわっ?!、すっ、すいませんっ!」

面食らう碧だが、樹里は構わず抱擁し続ける。
本人に自覚は無いが、関係者全員から信頼されてるからこそのこんな態度なのだ。

レースでは負けたのに、碧は若干理解できないまま樹里の抱擁を受け入れる。

「あの仔は気難しい仔だったから、今日のレースもどうなるかわからなくて」
「はい、かなり苦労しました」
「鼻差でも負けは負け、でも、碧ちゃんは上手に乗ってくれたわ」

碧を一番信頼しているオーナーは、間違いなく樹里である。

「ニシキブライアンは強い馬です。ジェイアルトゥーベでは勝てませんでしたけど、彼に勝ってるジェイカーマインでは、もっと頑張らないといけません」
「ええ、もちろん、期待してるわ」

SNSでこの小説を紹介

スポーツの他のリレー小説

こちらから小説を探す