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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 21

ゲートの中で立ち上がったり下を潜ろうとしたり落ち着かない。
まあデビューしてから毎回こんな感じだったので碧にもある意味での慣れも生まれていた。

幸い他馬のゲート入りもすんなり行って、最後が忍鞍上のジェネレートキング。

ゲートが開いてスタート。
ジェイアルトゥーベは隣のデンゲキエースと並んで絶好のスタート。
対してジェネレートキングの方が若干出遅れの様相だ。

ただ、いいスタート切れたからと言って上手く行った訳ではない。

「お願いっ!、一緒に走って!」

声に出した碧の願い。
先行争いでヒートアップして暴走と言うパターンが頭をよぎる。
1200mぐらいならそれでも押し切るだろうが、1400mでかつレベルの上がったレースだとまさかもありうる。
落ち着いて、落ち着いてと祈りながら手綱を握る碧。
持ち前のスピードでジェイアルトゥーベはハナを切るが、デンゲキエースが半馬身ぐらい合わせてきてるので、いつ暴走するか冷や冷やものである。

バックストレートから第3コーナーへ。
半馬身差でジェイアルトゥーベが逃げる。
ペースは早いが暴走ではない。
ここまでは・・・

並走するデンゲキエースは、付かず離れずを繰り返しジェイアルトゥーベを揺さぶってくるが、今の所ジェイアルトゥーベは真面目に走っていた。
だが、テンションは確実に上がり気味であった。

ここでデンゲキエースに並ばれたら確実に暴走スイッチが入る危険性が大きい。
今は碧が必死になだめながら走っているが、勝負所でどうなるかなんてわからない。
碧はもう祈るような思いだ。
ピタリと追うデンゲキエースの鞍上・石川誠は碧から焦りのようなものを感じながら仕掛けどころをうかがう。


3番手グループはそこから2馬身後方。
その先頭を進んでいたコクブファイターが一気に捲ろうと画策し追い出した瞬間、アクシデントが発生。
脚元に異変が生じ失速、後方数頭があおりを食ってしまう。

コクブファイターがズルズルと下がる余波に数頭巻き込まれて中団がごちゃつく。
そこでインをついてスルスルと上がってきたのは、ニシキブライアンの谷口だった。

「若い!、若いよ君達っ!」

この道30年以上の大ベテランは鞍上でニヤリと笑う。
谷口の言う若いは勿論先頭行く二人に向けられている。
必死に制御しようと慌てる碧と、その碧にちょっかいかける石川。
谷口には碧の騎乗がもっと馬を信頼してやる必要があると思ってたし、石川の戦術もジェイアルトゥーベを暴走させるのに無理をし過ぎて自分が勝つプランが甘いと感じていた。
こんなのは気配を消しつつ、ゴール手前で差し切ればよい。
それまで碧の死角に入る形で様子伺いでいい訳だ。

そんなジェイアルトゥーベの倒し方を理解して実践してるのは、谷口ともう1人・・・
忍だった。
その忍すら、谷口からすれば中団で気配を消しすぎて逆に目立って感じ取れる程だ。

「よし、相棒・・・おいらとお前さんで、嬢ちゃんから高い授業料をせしめてやろうぜ!」

こう言う戦いは谷口の真骨頂だ。
伊達に30年もやってないし、今だに彼はこの競馬場のトップジョッキーだ。
碧や石川の様子を伺いながら忍にまで神経を巡らした谷口が仕掛けの時を静かに待っていたのだ。

そして、最初に動いたのは石川だった。
4コーナー出口付近でジェイアルトゥーベに並んで首差交わして行く。
一瞬血の気の引いた碧だったが、逆にジェイアルトゥーベは反応すらしなかった。
それどころか、行き脚がつかない。
そんなジェイアルトゥーベに後続が迫ってくる。
残り200m。
先頭のデンゲキエースはジェイアルトゥーベの一馬身前に躍り出ていた。

どうして?!

エンジンが始動しないジェイアルトゥーベに碧は軽いパニックに陥っていた。
やる気を無くした・・・
そんな風にも見える。

碧は鞭を連続で入れ、馬を奮い立たせようとする。
それでようやく普段通りのスピードに近付く。
だが、デンゲキエースとの差は縮まらずにいた。

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