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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 20

カイザースプリングスは欧州でもそう多くないトウルビヨンから派生したクラリオン系の種牡馬である。
同じくトウルビヨンからマイバブーを通した血統は、かつて日本で大流行して三冠馬を初め多くの重賞馬を出したが、今は滅亡寸前である。
そんな日本で希少価値のある血統故にレッドゴッドファームに輸入され、スピードのある短距離馬を出している。
それなら芝の短距離馬になりそうなものだが、母馬がアルマームード牝系とアメリカ血統なので、その血が強く出たようだ。
まぁ、この馬も何故岡山が手放したかよく分からない素質馬だが、当然ろくでもない理由だろう。

ただ、どう言う経緯であれ、黒崎厩舎期待の2歳馬と言う事に代わりはない。
そして、ジェイエクスプレスが中央に参戦、ジェイカーマインが全日本2歳優駿に挑戦。
そう言う事になったので、ジェイアルトゥーベがこの競馬場の2歳チャンピオンを決める潮風ジュニアカップに出る事になっていたのだ。

ジェイアルトゥーベは碧も期待する素質馬だ。
しかし、この馬の気性は荒いを通り越して狂ってると言われるぐらいなのだ。
兎に角言う事を聞かない。
素質のみで勝ってるが、碧も体験したことが無いぐらいのクレイジーホースだった。
唯一言う事を聞くのが担当厩務員の十和田里穂だけなのだが、彼女ですらよく噛まれてるぐらいである。
里穂のおっぱいを噛んだジェイアルトゥーベに碧も恐怖した事がある。
里穂の他にも紗英や美波、真奈美もおっぱいや尻を噛まれていて、碧は噛まれていないものの言う事を聞いてくれず・・・
とうとう付いたアダ名がセクハラ君とかキレ造とかありがたくないものであった。

しかし何度も言うが素質は一級品なのだ。
それ故に碧も四苦八苦しながらレースに向かうのだが、恐らく短距離でこの競馬場のレベルならそれなりの勝負はできていくだろう。
ただやはり気性が落ち着かないと遠征は無理かもしれない。

そしてその日のパドック。
碧が騎乗するが、何時も通り集中力の欠片もなくうるさい。
引き手の里穂に甘えようとしては歩様を乱すと言う、何時もの悪癖に碧も天を仰ぐしかない。

思い返すと1戦目のダート1000mはロケットスタートからの暴走逃げ切り勝ち。
そこではクレイジーぶりに疲れはてたが素質は感じれた。
次のレース、ダート1400mは大人しく先行できてやれやれと思ったら、3コーナーで他の馬に並ばれてヒートアップ。
そこから暴走して勝利。
そして前走ダート1200mでは出遅れ。
しかしそこから暴走して先頭に立つと押し切り勝ち。
いや何とも乗りにくいと言うか、馬との一体感が強みの碧が手を焼くクレイジーぶりだった。
それだけに、なんとかまともに走って欲しいと願わずにいられない。
まあそれすら高望みな気もするから、兎に角コミュニケーション取れるぐらいにはなりたいと思った。

そしてパドックから馬場へと移動するが何時も通りジェイアルトゥーベはうるさい。

「はあ、この子やんちゃすぎ」
「でも、付き合ってるとね、この子競馬が好きだからこのテンションなんだと思うわ」

馬上の碧の愚痴を里穂がそう返す。
今日も馬房から出す時に里穂は噛まれたらしい。
だけど、それもコミュニケーションだと笑っていた。

噛まれないと駄目なのかしら・・・

ため息混じりに碧が思う。


潮風ジュニアカップは出走12頭。
目立ったライバルとしてはジェイエクスプレスとも一戦交えたデンゲキエースとコクブファイター。
鞍上谷口のニシキブライアンは前走でジェイカーマインと接戦を演じる2着。

そして、コクブファイターとともに他地区から参戦するもう1頭。

「あっ、忍さんだ…」

ジェネレートキングの鞍上、澤木忍。
先日のジャパンカップで2着したブレイヴマイスターの鞍上、澤木学の姉である。

地元の地方競馬所属の忍は、地方競馬の女性ジョッキーの中で実績ナンバーワンと言って差し支えない。
勝利数もさることながら、本命馬の隙を突いての勝利してしまう本命キラーでもある事から『南国の牝豹』なんて異名を持っていた。
性格は気のいいお姉さん。
と言うか、南国育ちらしい豪快な気性で、弟の方が線が細く見えてしまう。

恐らく本命が強いほど燃える性格だけに今回は碧とジェイアルトゥーベを狙ってくる強敵だろう。
碧は忍に仲良くして貰っているが、その手強さも十分知っている。

ただ今回は幸いと言うか、ジェイアルトゥーベは碧ですら走らせてみないと分からない迷馬だ。
紗英からも『無理に抑えたりしなくていいから』とアドバイスと言うより綺麗に匙を投げられてる。
まぁ、一応競馬ができる程度には言う事は聞くと言うか、里穂の言葉によれば競馬が好きらしいから酷い事にはならないと思う。
いや、思いたい・・・

そしてゲートにジェイアルトゥーベが導かれるが、気性の荒さの割にはゲートは嫌がらない。
ただ入るとヒートアップして無駄な体力は使ってしまう。

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