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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 3

「感傷に浸るのもいいけど、碧と美波は…明後日のメインレース、わかってるわよね」
「大一番ですね」
「勝ったら…楽しみですよね」

「勝ったら、じゃないわね。絶対勝つくらいで行かないと」
「「はい!」」


明後日のメインは2歳馬による地方重賞。
ここを勝つと中央の重賞レースの出走権が得られる重要な一戦だ。

紗英が送り込むのはジェイエクスプレスという牡馬。
美波の担当であり、主戦はもちろん碧だ。

ジェイエクスプレスの父親、センスオブワンダーは日本競馬界の盟主ともいうべき大牧場のグループが購入した種牡馬であり、現役時代はキングジョージなどG1レースを3勝している。

本来なら中央のリーディング上位の厩舎に預けられるような良血馬が紗英のもとにやってきたのだから、彼女たちはもちろん地方競馬全体でもかなりの驚きだった。

「経緯はわからないけど、やるからには頑張らないと」

ジェイエクスプレスはデビューから3戦碧が騎乗し、いずれも2着に大差をつけて勝ってきた。
明後日のレースでも当然圧倒的1番人気が予想される。

センスオブワンダーの血統背景はヨーロッパの重い系統で自身や近親の勝ち鞍は中〜長距離が主である。
輸入当初も日本の軽い芝に対応するスピードが不安材料と言われ、他のヨーロッパの重い系統の名馬と同じく失敗しかねないとも言われてきた。
だが日本でデビューした産駒は中〜長距離で爆発的な走りをする事でG1を勝つものが多く、スピードの不安を払拭したのだ。

しかしダートや短距離では実績が皆無で、ほぼダートのみの地方競馬には不向きと言える血統であった。
その父を持つジェイエクスプレスがダートで圧倒的な勝ち方をしてるのは、絶対能力の違いで本質は芝向きだと紗英は見ていた。

故に紗英は碧に3戦全てで道中抑えるように指示していた。
小回りで狭い地方競馬場では逃げ先行が圧倒的有利である。
ジェイエクスプレスの絶対能力なら逃げて押しきれるだろう。
だが、中央競馬まで意識すると、そこまで圧倒的かは疑問であるからこそ、中央を意識して抑えてレースを教える考えであった。

ジェイエクスプレスは1戦目こそ3番手からの4コーナー抜け出しての押しきりだったが、2戦目からは後方からの4コーナーまくりで圧勝していた。
次の4戦目も同様の戦術を取るつもりだが、地方競馬とは言えそう簡単ではない。
優先出走権のあるトライアルレース故に他の地方競馬からの遠征組も参加予定・・・
つまり見知らぬ強豪の参戦もありえる。
実際、何頭かは紗英が警戒してる馬もいる。

それだけでない、騎手達の意気込みもある。
中央競馬に比べてかなり給料の安い地方競馬において、1勝の意味は大きい。
故に生活の為に必死になるし、順位争いの泥臭さも華やかな中央には無いものだ。
かなり荒っぽい騎乗をする者も多い。
紗英や碧がアイドルと持ち上げられているだけにやっかみもある。
負けてしまうより厄介なのは人馬共に怪我させられる事だった。


スタッフ全員での食事を済ませ、碧はシャワーを浴びて着替えて夜風に当たりに外に出た。
黒崎厩舎の宿舎から少し離れたところも散歩がてら歩く。

「私にとってもチャンスなんだから…」
ジェイエクスプレスと共に大きなチャンスを掴むべく碧は意気込むのだった。


「よう」
「あっ…谷口さん…」
ジャージ姿で散歩していた男は谷口忠弘。
碧にとっては大先輩であり50歳を過ぎてもなお第一線で活躍する地方競馬の伝説的存在だ。

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