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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 18

しかもずるずると最後尾だ。
普通なら終わったと言われるかもしれないが、2400mは挽回するに十分な距離だ。
これをどうするかは諸澄の手腕次第だろう。

東京2400mはメモリアルスタンド前からスタートして、メインスタンド前を通過して1コーナーに向かう。
大歓声の中、マルゼンホワイトは最後尾。
その前には女傑ウインターローズとブランニューライン。
碧の注目馬は最後尾集団だった。

先行はアメリカから参戦のレッドハチェット、そして中央馬、西のカミカゼことサントビショップがハナを争う。
戦前の予想ではこれにマルゼンホワイトが絡んだ先行争いでハイペースになるものと思われたが、ややペースは落ち着きそうで後ろからの馬にとっては余り歓迎したくない展開だった。

今回の外国馬のエースは、アメリカ馬のハリケーンストリーム。
ブリーダーズカップターフの前年覇者でG1を6勝。
今年は春シーズンは米国内の芝レースで連勝、夏からは欧州にも遠征して、凱旋門賞3着からのジャパンカップ参戦であった。
マンノウォー直系の希少血統故に引退後は御台グループが購入に動くとの噂があった。

そのハリケーンストリームが先行争いを伺う4番手。
その後ろには欧州勢の大将格、モンセギュール。
3歳馬でジョッケクルブ賞とパリ大賞典などG1を3勝。
凱旋門賞は不利を受け惜しくも5着であったが、潜在能力はハリケーンストリームに全く劣らないと言われていた。

そして先頭はレッドハチェットとサントビショップが互いに譲らず1コーナーへ。
快速馬同士の意地の張り合いになってきた。

「早いペースだけど、マルゼンホワイトのラップタイムよりはゆっくりよね」
「そっかぁ、碧はマルゼンホワイトが挽回可能と思う?」
「どうかな?、私ならああなったら開き直るのみだけど、諸澄騎手は違うかもしれないしね」

亜沙美と碧は他愛の無い会話をしながらの観戦。
二人がやっぱり気にしてるのはマルゼンホワイトだったが、口にはまだ出さないものの碧にはこの出遅れすら諸澄の作戦に思えて仕方無かった。

マルゼンホワイトは最後尾、まだ諸澄の手は動かない。
その前方にいるウィンターローズとブランニューラインが徐々にピッチを上げようとしている。

大欅の奥の3コーナーへ差し掛かる。
先頭を行くレッドハチェットとサンドビショップ、2頭の鞍上の手綱は激しく動く。
さすがに両者譲らないままで共倒れの可能性が近づく。
2頭の後ろに忍び寄るのがイギリスから参戦のセンチュリーキングダム。
さらに京都大賞典を勝って勢いに乗るブレイヴマイスターが追ってくる。

マルゼンホワイトはここから徐々に動く…はずだった。
しかしそこにまたしても予想外の事態が訪れる。
内側にいたブランニューラインと、エリザベス女王杯から中1週で挑んだ4歳牝馬・リトルマーキュリーによって外側に弾かれてしまう。

「外に出してる!」

碧が思わず叫んだ。
弾かれたのではない・・・
外へ出したのだ、諸澄は。
あえて不利になる外に出すと言う事は、届くと言う確信あってだろうが、しかしマルゼンホワイトが強いとは言え周りも一流馬なのだ。
長い直線に入る様子を碧は固唾を飲んで見守る。
マルゼンホワイトは大外。
逃げた二頭は限界で早々に沈んでいく。

まずはセンチュリーキングダムが二頭を交わす。
続けてブレイブマイスターが加速してついていく。
その後ろ、ハリケーンストリームは内ラチ沿いの空いた所に上手く入ってくる。
モンセギュールはブレイブマイスターの外側だが、まだ目一杯追うと言う感じは無い。
後方集団を意識した感じであろう。

その後方からは、固まりとなった一団が先行集団目掛けて飛んでくる。
先行二頭の争いが早くなったせいで、後方は有利な展開に結局はなった。
ウインターローズにブランニューライン、リトルマーキュリーもその一団にいた。

それよりも凄まじい勢いの馬がいた。
マルゼンホワイトだ。
最後方から猛然と追い上げていた。
まるで逃げ馬だったのが嘘のような、生粋の追い込み馬のような超絶な脚だった。

抜け出し先頭に立つブレイヴマイスター。
馬場の真ん中を通って伸びるウィンターローズ、ブランニューライン。
内で必死に粘るセンチュリーキングダム。

ハリケーンストリームとモンセギュールは思いのほか伸びない。

8番人気の伏兵、ブレイヴマイスターの快勝かと思われたレース。
しかし、マルゼンホワイトはそうはさせまいとゴール前で力強く伸び、半馬身リードをつけ先頭で駆け抜けた。

『これが現役最強馬の走りです!出遅れもなんのその、豪快に差し切りましたマルゼンホワイト!』

強烈な勝ちっぷりにも諸澄は涼しい顔。
ブレイヴマイスターの鞍上、澤木学も悔しさを通り越して笑うしかなかった。

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